その三
「ほら、、あそこから朝宮市だよ」承芽
先に見える立て札に朝宮市と書いてある。
建物が増えていき、川に沿って十キロ以上走っていくと、大通りの突き当たりに遊覧船乗り場が見える。四人は広場で止まる。
「遊覧船より先に着いたー!」
「ついに目的地に着いたね」瑞葉
承芽が両手を上げて喜ぶと、両手を下げて真面目な顔になって言う。
「そして、とてつもなく電車のありがたみを実感している!」承芽
「乗車時間が短く感じられるね」結菜
「よく乗る電車の路線を敢えて自転車で行ってみるってのはありだね。うちらは三つ先の羽橋駅までならよく行くけど」生実
遠くに遊覧船が見える。遊覧船は四人が遊覧船乗り場に着いてから五分後に到着した。
「下りは軽く漕いでもどんどんすすんでいくけど、上りは本気で漕がないと進まないかな」承芽
「帰りはちょっと心配だな……」生実
「待って、帰りは遊覧船でいいんじゃない?」結菜
「うん、遊覧船に乗ってみたい」瑞葉
大通りから朝宮駅に向かう。
「まだまだ漕ぐし、朝宮名物の湿煎餅食べようよ」承芽
イートインが設けてある店で醤油味の湿煎餅をお茶と一緒に食べる。
「やばい、いくらでも食べられるな。もう一袋買ってくる」
承芽は十五枚入りの湿煎餅を食べ終えると、また買いにいく。
「私も」
まだ二枚残ってる瑞葉も買いにいく。
「わさび味にしてみた。みんなもどうぞ」承芽
「私は梅味。食べてみて」承芽
四人で他の味も食べてみることにした。
「朝宮といえば、猫鳴の丘にある灯台が有名だね」結菜
「そうなんだ、行ってみよう」承芽
海岸沿いに走っていくと、海岸の先に丘が見える。
「灯台はあの丘だよ」生実
「うーん、よく見えない」瑞葉
「あそこの灯台は三メートルだからね」生実
灯台がある広場に着くと、辺りには屋台が並び、多くの観光客で賑わっている。木製の灯台に間近まで近づいて見上げると、大きな光石が備え付けられている。
「これはレンズを回して照らすんじゃなくて、単に光るだけの古風な灯台だね」
浮カメラで記念に写真を取ると、屋台で名物のおいしい棒を買う。三十本載せた深い紙皿を四人で食べていく。
「チーズとコーンもいいけど、醤油も香ばしくて美味しい」瑞葉
「ところで、なんで猫鳴きの丘って言う名前なの?」瑞葉
「その昔、夜な夜な集まった沢山の猫が海に向かってずっと鳴いたという伝説があるみた」結菜
「なぜ」承芽
「猫神様に祈りを捧げる儀式だったのでは、と伝えられてるわね」結菜
「近くに丸見えの丘があるけど、行ってみる?」生実
西に向かうと、遠くに三角形の山のような丘が見える。頂上には人の姿もある。近くに自転車を停めて頂上を目指す。
「確かに、地球が丸見えというか、丸く見えるね」承芽
「あれは長重の丘だよ」生実
南西には、遠くまで続く切り立った崖が見える。
自転車を置いてある所に戻る。
「ちなみに、朝宮には有名な発明家が住んでるんだけど、ちょっと寄ってみる?」生実
「この際だから行ってみようよ」承芽
「どんな人だろう、もしかしたら会えるかも」瑞葉




