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その二

自転車で川沿いを走る。

「どこまでも坂が無い所に住むって、どういうい感覚なんだろう」瑞葉

「普段はどこから入っても坂を登る必要がある町に住んでるからね」承芽

「駅から自転車で帰るとき、西に回り込めば商店街まで坂を登らずに行けるから、どっちから帰るか少し迷うんだよね」生実

「坂のある環境が体に染み込んでるから」瑞葉

「自転車を押しながら坂を登るのは結構きついし、どっちの道を使うかと言うと、半々かな」承芽

「結局、回り込んだ方が楽なんだよね」結菜


 自然と言葉数が減って漕ぐことに集中していき、川沿いを三十キロ進んだ所で承芽が町並みを見て気づく。

「あれ? ここ、鳥原じゃない?」承芽

 四人は自転車を止めて見渡すと、目の前に古い建物が広がっている。

「あの人で有名な街ね」生実

「あの人?」瑞葉

「あの人だよ」結菜

「あの人?」瑞葉

 鳥原市は、国中を歩いて地図を作った石江長盛で有名な市で、古い町並みも残る観光地。

 石江長盛の博物館に行ってみると、様々な地形の地図が展示されており、一番広い空間には、天原全土の地図が置かれて展示されている。

「この地図を歩いて作ったことに比べたら、アシスト自転車で移動してる私達なんか、全然辛くもなんともないよね」

 生実が地図を眺めて言う。

「なんか勇気が沸いてきた」瑞葉


 博物館を出て川に戻ると、遊覧船が通りすぎていく。

「遊覧船で行けるのかぁ。なんか急に疲労感が……」瑞葉

「遊覧船からの眺めも良さそう」結菜

「自転車でしか味わえない達成感のために、行くとするか」承芽

 自転車と歩行者専用の道に入って速度を上げるが、少し進んだ所で道の駅を見つける。

「遊覧船が停泊してる」瑞葉

「追いついたか」承芽

「まだ十時だけど、そろそろ何か食べておこうよ」

 先頭を走る承芽が速度を下げて言う。

「途中でお腹が空いたら大変だからね」生実

「遊覧船より先に朝宮市に着きたいから、手短にね」承芽

 道の駅に入ると、遊覧船の乗客で賑わっている。他にも、地元住民らしき客が、地元で生産された野菜などをカゴに入れている。

「おにぎりが色々あるね」瑞葉

「パンも色々あるよ」承芽

 四人はおにぎりとパンを買ってフードコートに向かうと、無料の緑茶と一緒に食べる。

「この緑茶、かなり濃くて美味しいね」瑞葉

「苦いだけじゃなくて、緑茶の旨味もある」生実

「やっぱり、パンには牛乳やカフェオレじゃないと」

 三人は承芽にカフェオレを頼む。

「おみやげに色々買いたいけど、カゴが無いしなぁ。だから町乗り自転車がいいんだよ」

「またいつかね」生実

「せめて、何か一つぐらい特産品を……」承芽

「確か、鳥原市は芋が名産だったはずだけど」結菜

「ほら、イモアイスだって」

 瑞葉が店頭で目立つように宣伝しているイモアイスに気づく。

「おお、みんなでイモアイス食べよう」承芽

 食べ終わると、四人はイモアイスを注文し、外のベンチで川を眺めながら食べる。

 食べ終わると、併設された鳥原市の歴史を学べる展示室を見学してから駐輪場に向かう。

「早く出発して、遊覧船より先に朝宮市に着こう」

「さっき遊覧船の時刻表を見たら、遊覧船が朝宮市に着くのは十一時五十五分だから、残り三十五キロを平均時速二十五以上キロで走らないとね」

「一時間も停泊してるのか」承芽

「遊覧船の到着直後に、乗客用に石江長盛記念館へ向かうバスがあるみたいで、一時間後に戻るみたいだから、そのためにも一時間停まってるみたいだよ」生実


 四人は速度を上げ、自転車に取り付けたボトルの水を飲みつつ、黙々と漕ぎ続ける。

「ベンチだ、ちょっと休憩にしよう」承芽

 休憩。

「ここは屋根もあるね」瑞葉

「日陰は風が涼しいなぁ」生実

 目の前に広がるか草地の中で、近所の子供らしき四人がボールを蹴って遊んでいる。

「水分補給も重要だけど、無理に漕ぐと膝を痛めるからね。そろそろアシストを使った方がいいかな」生実

「最終的には、手首やお尻も痛む可能性があるから、距離によってはのんびり走るのも良くないよ。特に町乗り用での中距離以は膝とか気をつけた方がいいね。クロスは体重を乗せられるからましだけど」承芽

「承芽だけでしょ、町乗りで中距離とか走る女の子は」生実

「町乗りは地元住民気取りができるのもいいぞ」承芽

「お勧めの飲み物は」瑞葉

「やっぱりスポーツ飲料水だね。糖分、塩分など色々と補給できるし。特にお勧めなのは、スポーツ飲料水と炭酸を足した命水だね」

「それ、私も好き。疲れた時って、栄養も補給したいけど、炭酸も飲みたいんだよね」瑞葉


 五分で休憩を終えると走り出す。

 辺りは相変わらず、田植えを終えたばかりの田んぼの景色が広がっていく。

「私達もここのお米を食べてるかも」瑞葉

「同じ品種でも、生産地は違ったりするからね」生実

「近所のスーパーでも売ってるお米には、ここのお米もあったよ。みんなも確認してみて」結菜

「売ってるんだ。そりゃそうか、県内なんだし」

 再び黙々と走りつづけた。

謎旅物語の連載を始めました。

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