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その一

 五月七日月曜日、祝日。

 朝の七時に集まる約束をしていた瑞葉は、自転車での長距離に備える。自転車と合わせて買ったボトルに蛇口から水を入れてボトルホルダーに収め、サドルの真ん中に取り付けた自転車用の収納バッグに小物を入れ、内側に弾力のある手袋をはめて晴山公園に向かった。

「おまたせー」瑞葉

 晴山公園に着くと、三人がベンチに座っている。

「おはよう瑞葉。忘れ物はない?」結菜

「うん、大丈夫」

「ところで、目的地はどこなの?」生実

「猫鳴きの丘にしよっかなって」承芽

「猫鳴きの丘って、朝宮市の?」瑞葉

「あそこまでだと百キロあるね」生実

「ええっ! 百キロ!?」瑞葉

「猫鳴きの丘、すごく楽しみね。一層やる気が沸いてきた」結菜

「まぁ、なんとかなるでしょ、アシストがあるし。それじゃあ、行ってみよう」承芽

「承芽はよく自転車で遠い所に行ってるから慣れてるみたいだからいいけど……」

 瑞葉は不安そうに言う。

 承芽は自転車に乗り込もうとするが、ピタリと止まる。

「そういえば、どの道を行けばいいんだっけ。天川のサイクリングロードから行きたいんだけど……」

 承芽は振り返って尋ねる。

「晴沢十字路から、北東へ道なりに行けば天川に着くよ」生実

「あそこね」

 承芽を先頭に出発すると、生実、結菜、瑞葉と続く。


 一時間ちょっとで天川に着く。

「おお、天川だ」

 瑞葉は川に沿って伸びる公園の木々の向こうに見える大きな川に驚く。

 公園にある自販機で瑞葉はレモンソーダ、結菜はレモンティー、承芽は麦茶、生実は緑茶を買って、川を見下ろしながら休憩を取る。

「意外と速かったような、そんなに疲れてもいないし」

 瑞葉は川を眺めていると、時間の経過を不思議に感じる。

「天川までの距離感に慣れてないからね、ここまで二十キロあるけど、私達が思ってるより近いってことだよ」生実

「慣れはかなり重要だよ。慣れてないと精神的な疲労感が肉体的に影響を与えるからね。一回目は長いと感じても、距離感を掴んでる二回目は一回目より距離感が短く感じるよ。でも、二回目はまだ距離感に疑いが残ってるから、二回目で距離感を確実にして、三回目からが本番かな」承芽

「町内を回るだけでも時間はあっという間だからね。小二の時に自転車で羽橋駅まで行った時は三十分だったじゃん」承芽

「晴沢駅までのんびり歩いて約十五分、電車が発車したばかりだと待ち時間十分、羽橋駅まで七分だから、自転車の方が早いね」結菜

「空腹と水分だけは気をつけてないとね。この季節はあまり暑くないからそれほどでもないけど」

 普段から自転車で色んな所に行っている承芽が、体感的に得た知識を教える。

「一体承芽はどこに行ってるの?」生実

「ぐるぐる回ってるだけだから、直線だとせいぜい十キロ程だよ。冬はほとんど水分補給は要らないかな」

「一時間で二十キロだから、四時間半で着くかな」瑞葉

「疲労が溜まるとから、そんな単純な計算通りには着かないって」承芽

「休憩なしだと厳しいでしょ」結菜

「やっぱり、アシストなしだと無理ね」生実

「速く漕ぎすぎると膝を痛めて歩けなくなるから、ほどほどの速さで漕がないともたないよ」承芽

「じゃあ、そろそろアシストに頼るとしよう」瑞葉

 四人はサイクリングロードに戻って漕ぎ始めると、アシスト機能を解禁して走り出した。

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