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その六

 四人は電車の二両目に乗り込み、一両目側の三人席に四人で座る。瑞葉は味煮が何個も入った袋を大きな布製の袋に入れて、たすき掛けのまま座る。

「ずっと歩いてたから疲れちゃった……」

 右端の承芽と結菜に挟まれて座る瑞葉は浅く座って呟く。

「時間を忘れて歩いたよね……」

 結菜も疲労感を感じて浅く座る。

「夕日が眩しい……」

 承芽は窓の外に見える太陽の眩しさで目を閉じる。

「なんか眠くなってきた」

 生実は眠気を感じる。結局、四人共眠ってしまった。


 生実は自分の部屋で部品をいじっていると、父親の躬絃(みつる)が入ってくる。

「どうかした?」

 深刻そうな生実は部品をいじりながら言う。

「今、立絃(たつる)さんから聞いたんだけど、瀬空が閉店するみたいなんだが……」

「えっ!?」

 生実は部屋をすぐに部屋を出て、立絃の設計室に向かう。

「閉店するって本当?」

「そうみたいだよ」

 立絃は部品をいじりながら言う。

「いつ」

「五月八日だってさ」

「そんな急に、なぜ……」

 生実は三人を晴山公園に集まってもらうことにした。


 生実が公園に向かうと、結菜と承芽がベンチに向かい合って座って話してる姿が見える。

「どうかした?」

 承芽は生実に気づく。

「ちょっと伝えておきたい事があって。とりあえず、瑞葉が来たら話すね」

 ベンチで瑞葉を待っているとすぐに現れる。

「生実、話ってなに?」

 瑞葉は結菜の隣に座る。

「それじゃあ言うけど、瀬空が閉店することになったみたい……」

「えっ!?」

 瑞葉と承芽は声を上げて驚く。結菜は黙ったまま目線をテーブルに向ける。

「立絃さんが言ってた……」

「でも、なんで……」

 瑞葉が訳を聞く。

「分からない、でもそうみたい」

「いつ?」

 結菜が尋ねる。

「五月八日……」

「来週じゃん!」

 瑞葉は急すぎる事態に驚いて戸惑う。

「来週……しかも月曜日、なんで平日なの……」

 承芽は曜日に疑問を抱く。

「小さい頃からよく行ってたのに……」

 瑞葉はうつむいて呟く。

「ゲームも沢山かったのになぁ」

 承芽は昔を思い出す。

「四人で並んだよねぇ」

 生実は四人でゲームを買いに行った日を思い出す。

「これも定めと受け入れなければならないのね」

 結菜は小さく言う。

「確かに最近は、もっと都会の百貨店への意識が高まってるかもしれないけど、どの階もお客はそれなりにいるし、決して赤字ではないはず……」

 生実は百貨店の判断を理解できない。

「テレビで視たけど、隣の県の老舗百貨店なんか、化粧品売り場も凄い客だよね。なんというか、男女比が違うような」

 瑞葉はテレビで視た映像を思い出す。

「観光地みたいに何人かで来る客が集まるから付き添いも多いしね」

 生実が答える。

「ショッピングモールが増えてる影響かな……」

 承芽は時代の流れを感じる。

「でも、羽橋市にだってショッピングモールはあるけど、それでも瀬空の売り上げは伸びてたし、最近だって好調なのに」

 生実は承芽の憶測を否定する。

「それでも、私達にとってはかけがえのない存在なのに……」

 瑞葉は慣れ親しんだ店が無くなる景色が考えられずに戸惑う。

「物産展もいつも大盛況じゃん」

 承芽はよく行く物産展の賑わいを思い出す。

「二階の広場は結構有名な歌手やバンドが来てたよね」

 瑞葉はよく行く店に有名人が来て驚いた感情が甦る。

「うん、あまり知られていないアイドルとかがあの広場に来ると、有名になるっていう都市伝説の噂があるよね」

 承芽はネットなどでささやかれている噂を言う。

「確かに最近よく見かけるなぁ。ちょっと前に広場で即売会をやった時に集まった客は十五人程だったけど、アニメの主題歌を担当したら百五十人に増えてたし。あと、首を振り回して叫んでるグループとか」

 生実は最近テレビでよく見かけるグループが来てたことを思い出す。

「音楽フェスとかもやってたなぁ」

 承芽は何組も出演するイベントを思い出す。

「二階だから気軽に寄れるよね」

 瑞葉は利便性を指摘する。

「西館の上にあるゲームセンターもよく行ったなぁ」

 承芽は道を挟んだ西館での思い出が甦る。

「大人になったら、ちょっと近寄りがたい時計売り場で腕時計を買うのが夢だっのに、どう歳を取っていけばいいのか……」

 結菜は歳の取り方を見失いそうになる。

「ひつじさん……」

 瑞葉は屋上に設置されたひつじの人形が心配になる。

 黙り込んでいると、生実は目を見開いて顔を上げる。

「ちょっと待って、そう言えば、全ての商品はお金を払う必要が無くなるんだったよね。だから、売り上げとかどうでも良くなるんだから閉店する必要なんかないじゃん!」

 承芽は新しく始まる社会の仕組みを思い出す。

「じゃあ、なんで」

 瑞葉は疑問に思う。

「もう一度、立絃さんに聞いてみよう」

 四人は公園の奥にある階段を登り、広い草地の中にある生実の家に向かう。


 立絃の居る部屋に四人が入っていく。

「やあ、みんな」

 立絃は振り向いて挨拶する。

「新しい商品ですか?」

 瑞葉が尋ねる。

「まぁ、そんなところかな」

「立絃さん、瀬空の人と仲がいいんでしょ? 詳しく聞いてくれる?」

「わかった、聞いてみるよ」

 立絃は床から立ち上がり、携帯電話を探し始める。

「えーと、どこだっけ」

 立絃が携帯電話をどこに置いたのか忘れて探していると、承芽はちゃぶ台に置いてあるノートパソコンに目が留まる。

「ちょっと借りるね」

 承芽はノートパソコンをいじると、瀬空のホームページを開く。

「確かに閉店と書いてある……」

 承芽は呟く。四人が画面を覗き込むと、画面を埋め尽くす赤の中に白字で大きく閉店と書いてあり、瑞葉が閉店の上に小さく書かれた文字を呟く。

「五月八日は閉店です……」

「閉店……というか、休業じゃん」

 承芽は閉店の意味を理解する。

「なんだ、休業か……」

「大型連休明け、なるほど」

 結菜は休業の理由を考える。

「よかったぁ」

 瑞葉は笑顔になる。

「確かにあるよね、営業時間の閉店を店じまいの閉店と一瞬だけ思っちゃうとき」

 承芽は思い出す。

「それにしても、ただの休業なのに大げさじゃない?」

 承芽は画面を見て違和感を感じる。

「ちょっと紛らわしよね」

 瑞葉も文字の大きさを可笑しく感じる。

「まぁ、話題作りとしては良い作戦ね」

 生実は少し感心する。

「確かに、瀬空の有り難みをこれほどまでに実感したことはないわね」

 承芽はあまり意識していなかった瀬空に対する強い想いに気づく。

「腕時計……待ってて」

 結菜は腕時計に思いを馳せる。

「ひつじさん……よかった……」

 瑞葉は屋上のひつじにまた会えることにほっとした。

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