その一
買い物に。
五月六日日曜日、猫の日。
瑞葉は起きると朝食の準備を始める。
食パンにバナナを置いて、絞り袋からホイップクリームを絞り出して折り曲げ、牛乳と一緒に食べる。一つ食べ終わるともう一つ作り、次は豆乳と一緒に食べる。
「サバ缶とピーマンかぁ、いいかも」
食べ終わって料理本を捲っていると、自分でも簡単に作れそうな料理を見つけた。
九時に集まる約束をしていた瑞葉は、時間になると公園に向かう。ベンチには既に結菜、承芽、生実の姿が見える。
「みんな、おはよー」
三人は瑞葉の声に気づいて返事をする。
「さて、行くか」
承芽が言うと、四人は町の南にある晴沢駅に向かう。
地下の線路の上にある南北へ伸びる公園の西側の道を通り、坂を降りると、地上の駅に向かって上がってくる線路の先に晴沢駅がある。四人は西口の駐輪場を回り込んで行くか、線路を越えて東口から行くか歩きながら考えると、線路の上を通る道を進み、東口の階段を降りて改札口に向かうことにした。
公共の乗り物は無料で利用できるが、乗降者数などを集計するため、指を端末に触れてから入場する。構内に入り、左右にある階段を左に進み、途中で右に曲がって登っていく。
少し経つと、白い車両の上と下に青い線が入った六両の電車が到着する。四人が五両目の後ろ左側に座ると電車が動きだし、田畑を抜けて三つ目の駅に向かっていくと、電車は左に曲がっていき、大きな建物に挟まれた、葉瀬鉄道羽橋線の終点となる羽橋駅に着く。
改札口を出ると承芽が言う。
「どこ行く?」
「瀬空のゲーム売り場は?」
瑞葉が提案する。
「あそこか」
承芽はすぐに気づく。
羽橋駅の南口にある百貨店の瀬空に行くことになり、南口から西に見える瀬空に向かう。
「ここの瀬空は立絃さんが設計したんだよね」
瑞葉が生実に言う。
「そうだよ」
生実は建物を見て答える。
「一階と二階の外周にあるコンコースが特徴だよね」
結菜も建物に興味を示す。
「南側は全面が階段なのは、もはや芸術」
結菜は独特な設計を指摘する。
「なるほど、確かにそう見えるね」
生実はあまり意識しなかった見方に気付く。
四人は三階にあるゲーム売り場に向かっていった。
「やってるやってる」
承芽は、子供達に人気の試遊台が四台並んでいる一角を見て言う。
「全部アマネシホシだ!」
瑞葉は後ろから覗き込む。
「ちょっとやってみるか」
承芽が言うと、四人もそれぞれ列に並ぶ。
四人に順番が回ると、瑞葉はあやめ、結菜はかがみ、承芽はわとこ、生実はオルソを選ぶ。子供達との対戦が始まると、適当に力を抜いて二戦とも負け、後ろでしばらく眺め続ける。
「みんな上手いなぁ。私の同じ年くらいの頃より上達が早いよね」
瑞葉が子供達の上手さに感心する。
「あそこの無制限台にいる人はずっと勝ち続けてるよね」
しばらく後ろから見てると、勝ち続ける限り交代せずに対戦できる右端の台で、ずっと替わらずに対戦している女の子に生実が気づく。
「私達も対戦してみよう」
瑞葉が誘い、瑞葉、結菜、生実の順にさっきと同じキャラを選んで対戦したが、三人共、二本連続で取られてしまい、最後に承芽へ番が回ってくる。
「なかなかやるわね、中一?」
「そうだよ」
四人は同じキャラを選んで対戦すると、瑞葉、結菜、生実は一本も取れず、承芽に番が回ってくる。
「ネルスか」
女の子は怪の民ネルスで勝ち続けている。
画面左に承芽のわとこ、右にネルスが対峙して対戦が始まると、ネルスは一つしかない大技、怪の襲で巧みに攻めてくる。
怪の襲は近距離の頭突き、中距離の殴り、長距離の蹴りがあり、地上と空中から全ての方向に突進技を繰り出せる。近距離の頭突きから上手く当てていけば、三回連続で繋げられる。
わとこは上手く防御をしてから攻めに転じると、ネルスも上手く守りを固める。
ネルスは怒涛の突進を繰り返し、わとこは反撃を試みようとするが、ネルスは間髪入れずに攻め続け、わとこは守り崩し状態になり、ネルスの連続攻撃で体力を大きく減らす。その後もわとこは果敢に攻めていくが、ネルスの巧みな突進技で体力に差がついて一本取られる。
「やるじゃん、名前は?」
承芽は画面越しに話しかける。
「上宮射依そっちもね」
女の子は軽く笑って応える。
二本目が始まり、わとこはネルスの突進技により注意深く対応して防御を固め、素早い動きと瞬間移動を駆使してネルスの体力を奪っていく。最後は火の噴き飲みで炎を前方に放って一本取る。
わとこが一本取って追い付いて三本目が始まる。お互い引けを取らずにに体力を奪い合っていき、体力が残り僅かになると、わとこは火の竜巻で身の回りに炎を巻き上げる。ネルスは防御が間に合うが、至近距離のために体力がある程度削られる。しかし、残り体力を一パーセント残すと、ネルスはもう一つのゲージを全て使って防御後の硬直を短縮し、奥の手、怪の巴を発動すると、九回転してわとこの体力を大きく奪い、ネルスが二本目を取った。
「二本取られたのは久しぶりだわ」
「私も一本取られたのは久しぶりね」
「粟野承芽、そっちも中一?」
「そうだよ、神宮射寄。次は大会でやろう」
「そうね。大会で会おう」
二人は再戦を約束すると、四人は試遊台から離れていった。
羽橋駅周辺を散策中。




