その七
緑原から帰る四人。
四人は晴山に着くまでアマネシホシで対戦をすることにした。瑞葉が選んだ機の民デルルと、承芽の選んだ空の民レシルとの対戦が始まり、レシルが勝ち上がる。次に、結菜の選んだ霊の民しのねと、生実の選んだ宙の民ノクアとの対戦が始まり、ノクアが勝ち上がる。シノネが三位に決まり、決勝はレシルの勝利に終わった。
生実の家に着き、四人は解散した。
瑞葉は家に帰ると星物語を進めることにした。
「やられた! 星物語の体力は最大でも百だから、序盤は油断するとすぐやられるんだよねぇ。魔の民のままにして魔法を強化させてみたいけど、まずは光エンディングを目標に進めたいから、さっさと神社に戻ろっと」
星物語は、人の民に宿る光の命と魔の民に宿る闇の命がぶつかり合うことで生まれる聖の命を星に吹き込ませる物語。戦いは星に命を送る祭りとして日々行われている。
人の民に宿る光の命が魔の民によって失われると、代わりに闇の命が与えられる。魔の民が人の民によって闇の命を失えば、代わりに光の命が与えられる。失った命は神社に行ってお祓いをすることで取り戻せるが、中には戻さないでいる者もいる。戦いによって体力は失われるが、痛みや傷がつくことはなく、命そのものを失うこともない。
人の民は自然物を加工して新たな物体を作る『製法』を得意とし、魔の民は自然物を使わずに物質を生み出す『魔法』を得意としている。ある時から製法の技術を魔の民に与え、魔法の技術を光の民に与えたことで、新たな時代を迎えることになった。
瑞葉は魔法の誘惑を振り払うと、四人は草原を走って街に戻り、神社でお祓いをして光の命を呼び戻す。
「ついでに光の草薬を買っておこう」
瑞葉は回復薬を売る店に入って薬を手に取ると台に置き、透明の石に触れて会計を済ませる。
光と闇の闘いに身を投じる者は、失わせた命の分を金銭として使うことができる。人の民は光の石、魔の民は闇の石に触れることで支払われる。様々な力があり、職人によって装備品などに利用されたりする。
四人はまた街を離れていく。乗り物を使わずに移動すると、目的地に着くまでに数時間掛かる時もあるが、瑞葉はゆっくり景色を眺めながら歩いていく。
草原を歩いていると、装飾が施された車が後ろから近づいてくる。四人の近くで止まると、女の子が窓を明けて話しかけてくる。
「あれ? みんなは歩き」
高そうなローブを着た、知り合いの女が話しかけてくる。
「まあな」
「ふーん。それじゃあ、お先に」
女の子は別れを告げると車が動きだす。
「お金持ちはちがうわね。あのローブはかなりの防御性能だったはず」
仲間の女が言う。
星物語は、歩いたり戦いをこなして命の数を一定数得るごとにレベルが上がり、能力を自由に伸ばせるが、装備で能力を大幅に上げる方法もあり、装備によって様々な技も使えるようになる。
「ちょっとオンラインに切り替えてみよう」
オフラインで進めていた瑞葉は、試しにオンラインの動向を覗いてみることにした。
「人の民が七五パーセントか。やっぱり、人の民から始める人が多いみたい」
瑞葉は草原の高台に登り、崖の下を見渡す。
「発売したばかりなのに、もう人の民が魔の神々を呼び寄せてる!」
崖の下では、魔の神々に認められた者だけが唱えられる魔法を唱えている。倒しては移動し、また魔の神々を呼び寄せては竜が口から炎を吐いてなぎ倒していく。
瑞葉は草原から離れ、少し高い所に広がる森の中に入っていく。
「おっ、これは……」
瑞葉は地面に小さく光る物体に気づく。
「力の実だ。あそこにも!」
時々見つかる実を広いながら森を歩いていると、家の呼び鈴が鳴る。
「誰か来たみたい」
瑞葉は階段を降りて玄関を開ける。
「静葉さん」
「これ作ったから食べてね」
静葉はバスケットを瑞葉に渡す。中を覗き込むとタッパーが何箱も積まれている。
「惣菜だ、助かるー。あっ、そうだ、対戦しようよ」
「やろっか」
瑞葉と静葉はに二階に上がっていく。
「今日は星物語の発売日だから、ちょっと進めてたの。静葉さんも買ってね。あと、アマネシホシも今日発売だから絶対に買ってね」
「そう。もちろん買うね」
アマネシホシに切り替えるとパッドを構え、瑞葉はあやめを選び、静葉はかがみを選ぶ。
「やっぱりパッドがいいんだよねぇ。静葉さんはパッド派? スティック派?」
「どちらでも構わないけど」
瑞葉はパッドを二つ用意して静葉に渡す。
対戦が始まると、あやめは積極的に攻めていく。かがみは防御をするが、絶え間ない責めに対応しきれず、攻撃を受ける。かがみも攻めていくが、体力差が開いていき、瑞葉が一本取る。
「静葉さん、本気でやってる?」
「もちろん」
二本目は静葉も攻勢に出て、一本目よりあやめの体力を減らすが、あやめの猛攻に耐えきれず、二本もあやめが取った。
「承芽の時はめちゃくちゃ強かったのに、私とやるといつもこれだもんなぁ。どうして?」
「なんでかなぁ」
「じゃあ、もう一回ね」
瑞葉は天の民ヒミトを選び、静葉は魔の民ルノアを選ぶ。
対戦が始まり、ヒミトが光の風を放って前方に竜巻を飛ばすルノアは跳んでよる。ルノアも闇の風を放って前方に黒い竜巻を飛ばすとヒミトは跳んで避ける。ヒミトは近づいてから光の風上げを放つと竜巻が斜め上に飛んでいき、ルノアはしゃがんで避ける。ヒミトは更に近づいて光の大風を放ち、大きな竜巻を目の前に展開させると、ルノアは後ろに跳んで避ける。ルノアは着地して少し近づくと、闇の突き蹴りで闇の風をまといながら前方に蹴り飛ぶと、光は前方に跳んで避ける。ルノアはもう一度闇の突き蹴りで突進し、ヒミトは前方に避ける。
「ヒミトの風は、光を集束させた風なんだよ、ルノアは闇を集束させた風ね」
瑞葉は技の説明をすると対戦に集中する。
ヒミトは近づくと、白いマントで攻撃する技、光の羽衣を放つとルノアは防御する。ルノアも黒いマントで攻撃する技、闇の羽衣を使うとヒミトは防御する。ヒミトが掴み技、光の羽交い締めを発動すると、マントで縛り上げてから風を吹かせて攻撃する。ルノアも闇の羽交い締めから闇の風を吹かせて攻撃する。
「技を出し合ってるだけだね……」
改めて始めると、ルノアは闇の最後は天の竜巻を発動し、自身を浮かばせて周りに大きな竜巻を吹かせ、ヒミトが一本を取る。
「うーん、静葉さんはまだ慣れてないかな。もっと攻め込んでみて」
二戦目が始まり、ルノアは闇の突き蹴りや、上空に蹴り上げる闇の蹴り上げ、上空から急降下してける闇の蹴り落としを駆使して攻めていくとヒミトの体力が一方的に減っていき、最後は闇の風蹴りで突進してルノアが一本取る。
三本目も体力を削りあっていくと、ヒミトの体力が五十パーセントを割ってマントが外れ、ヒミトは素手を使って攻めていく。ルノアの体力も五十パーセントを割ってマントが外れて素手のみになったことで、羽衣より距離が短いが攻撃力は高い素手での戦いになり、攻防が激しくなっていく。
ヒミトの体力が残り僅かになり、ルノアが闇の風蹴りで突進してくる。ヒミトは避けずに強化ゲージを消費して防御し、体力の削りを防ぐ。ルノアの攻めが終わったところでヒミトは光の竜巻を発動し、無防備のルノアに直撃させてヒミトが三本目を取った。
「静葉さんは、かなりの気分屋さんだよね」
「そう? でも、最後の防抜けは見事じゃない?」
「静葉さんが本気でやったら、全て防抜けしちゃうもんね」
大技は防御で受ける瞬間に前方に入力することで、防御による体力の僅かな減少を防ぐことができる。奥の手も強化ゲージを全て消費すれば体力の減少を防げる。
「でも、できる時とできない時があるから」
「そうかなぁ……」
静葉の強さの秘密をいまいち掴めずに考え込む。
「そうだ、作ってくれた惣菜食べよっと。静葉さんも一緒に食べようよ」
「いいのいいの、瑞葉のために作ったんだから」
二人は食事室に移動すると、瑞葉は炊いてある御飯を盛って、座布団に座り、タッパーからナスを摘まんで食べる。
「野菜ジュースや豆乳ばかりだから、御飯に合うおかずがなくて困ってたんだよねぇ」
食べていると、静葉は緑茶を淹れる一式を盆に乗せて食事室に入り、向かいに座る。
「ところで、静葉さんは謎の陸地はあると思う?」
「あるんじゃないかな。私も子供の頃に消えた陸地に行ったんだよ」
「えー、そうなんだぁ」
静葉が帰り、瑞葉は星物語を進める。
「そうかぁ、静葉さんも行ったことあるんだぁ」
星物語を進めて、瑞葉は眠ることにした。
ヒミト
天の民
白いマントを着ている。
空に浮かぶ、かつて最も広い海にあった大陸の王。
大技
光の風/前方に竜巻を飛ばす/大技1
光の風上げ/斜め上に竜巻を飛ばす/大技2
光の大風/目の前に大きな竜巻を発生させる/大技3
掴み技
光の羽交い締め/マントで締め上げ風で切りつける。
奥の手
光の竜巻/身の回りに竜巻を発生させる。
ルノア
闇の民の王。
黒いマントを着ている。
地底から通じる異世界の王。
大技
闇の風/前方に竜巻を飛ばす。
闇の突き蹴り/前方に蹴りで突進する。
闇の蹴り上げ/上空に蹴り上げる。
闇の蹴り落とし/上空から急降下して蹴る。
掴み技
闇の羽交い締め/マントで締め上げ風で切りつける。
奥の手
闇の風蹴り/黒風をまとって蹴りで突進。




