その六
温泉街へ。
西に広がる森の中を、木々をさけるようにできた道を歩いて抜けると神社が見える。
「あそこに神社があるよ」
瑞葉が少し離れた所に鳥居を見つけると、四人は神社に寄ることにした。
「光原神社だって」
四人は光原神社を参拝するとお守りも買う。瑞葉は水色、結菜は黄、承芽は赤、生実は緑と、それぞれいつもの色を選んだ。
「光原の街は、主に西と東に分かれていて、今いる西側が温泉街ね」
森を抜けた所に戻り、古風な街を歩いていると生実が説明する。
「ここも観光客でいっぱいねぇ」
承芽は大勢の観光客を見て言う。
「温泉饅頭だよ、寄ってみようよ」
瑞葉が温泉饅頭を扱う店を見つけると、四人は店の中に入っていく。席に着くと、各自でお品書きを広げる。
「色々あるたいだね」
瑞葉ははお品書きをざっと見る。
「とりあえず、基本の温泉饅頭は全員抑えとくとして、もう一つ自由に選ぶとしよう」
「私はミルク饅頭」
承芽の提案に、瑞葉はすぐ答える。
「キャラメル饅頭にするわ」
結菜もすぐに決まる。
「それじゃあ、ナッツ饅頭」
生実も決まる。
「私はチョコ饅頭にするわ」
それぞれ決まると、承芽が代表して注文する。しばらくすると、お茶と一緒に運ばれてくる。
「甘味からの渋いお茶がたまらないよねぇ」
瑞葉は一口食べてからお茶を飲んで言う。
店をあとにし、四人は温泉街を練り歩く。
「やっぱり、キャラメル羊羮も食べておくべきだったかったなぁ」
結菜は残り惜しくなる。
「私もミルク羊羮がちょっと気になったんだよねぇ」
瑞葉も結菜と同じ思いでいる。
「まぁ、それはまた別の機会として、そろそろ温泉に行こっか」
生実が慰めるように言うと、四人は温泉施設を探すことにした。
「さすがに、いっぱいあるね」
承芽は立てられている地図を見て言う。地図には温泉施設を示す印がいくつも点在確認できる。
「温泉印と宿を型どった印を合わせた印が温泉宿で、温泉印だけなら温泉だけ。とりあえず、温泉だけでいいよね、どこがいい?」
瑞葉と結菜と生実は、現在地から最も近い温泉施設を差し、承芽は街外れの温泉施設を指す。
「そこはちょっと遠いんじゃない」
生実は否定的に言う。
「遠い所は人も少なそうだから、遠慮なく泳げそうじゃない」
承芽は客の少なさを主張する。
「私はいいけど、瑞葉と結菜は?」
「いいよ」
結菜は承芽の提案を受け入れる。
「うん、じゃあ、この湯浮温泉に行こう」
瑞葉も同意する。
四人は、承芽が選んだ温泉施設に行くことにした。
「これまた歴史を感じる建物だね」
生実は古風な建築に興味を引かれる。
「湯浮温泉かぁ、じゃあ、ここでいいよね」
瑞葉の言葉に三人が頷くと、四人は中に入っていく。
「いらっしゃいませ、大浴場の他に個室風呂もありますよ」
「えっと、大浴場でいいかな?」
対応する四人と同じ歳くらいの少女の言葉に、瑞葉は三人の顔を伺う。
「いいよ」
承芽の言葉に結菜と生実も頷く。
「じゃあ、大浴場にします」
瑞葉が言うと料金を払い、四人は少女に大浴場へ案内される。
「ところで、同じ歳くらいみたいたとけど、同じ一年生?」
瑞葉が尋ねる。
「はい、中学一年生です」
「ここで働いてるの?」
承芽が尋ねる。
「まぁ、家の手伝いみたいみたいなものですけど」
「ということは、名字は湯浮かな」
生実が店名から名前を当てようとする。
「はい、湯浮薫です」
「将来はここを受け継ぐのかな?」
結菜が尋ねる。
「はい、そのつもりです」
薫は笑顔で答える。
「凄いなぁ、もう将来の職場で働いてるのかぁ」
瑞葉は感心する。
「こちらになります」
薫は大浴場の入口の前で立ち止まる。
「ありがとう」
瑞葉が言うと、三人も挨拶をして大浴場の中に入っていった。
四人は服を脱ぐと、脱衣室から大浴場に向かう。
「まずは、体を洗ってから入ろう」
生実が言うと、湯船とは隔たれた所で体を洗うことにした。洗い終えると通路に戻り、仕切りで左右に別れている入口を通って大浴場に入る。
「わぁ、かなり広いよ」
承芽は大浴場を見渡すと、大きな屋根の先に湯船が広がっている。
「誰もいないみたいだね」
瑞葉は大浴場を見渡して気づく。
「まだ三時だからかな?」
結菜は、時間帯から客のいない訳を察する。
「とりあえず、今日は外を回ることに夢中の日みたいだね」
生実は適当に結論づける
四人は桐の湯船まで来ると、ゆっくりと浸かる。
「ふぅ、なんだかんだで歩いたよねぇ」
承芽は、大小いくつかの種類が植えられている植物を眺めながら言う。
「朝も早かったしね」
瑞葉は一日を振り替える。
「温泉にも入ったし、予想以上に面白かったよね」
結菜は、一日で訪れた各地の景色を思い返す。
「日帰りで色んな所を回ったからね。今となっては青原を一周した事が遠い日のように感じるよね」
生実は、青原に訪れたことを思い返す。
「ここも一周できるみたいだよ」
承芽が右側を指差すと、四人は腕を湯船の底に伸ばして上体を支え、足を軽くばたつかせながら湯船を一周する。
「やけに幅があると思ったわけだ」
生実は一周して落ち着くと、湯船の造りに納得する。
「真ん中に空間を設ければ、りょっかかれる人数を増やせるからね」
承芽はそういって、反対側に移る。
「そりゃそうね」
生実も反対側に移る。
四人はしばらく浸かることにした。
「もう三十分くらい経ったかな」
瑞葉は、いつの間にか時間が過ぎていることに気づく。
「それじゃあ、そろそろ出ようか」
承芽が言うと、四人は脱衣室に戻り、服を着て廊下を歩いていく。
「ありがとうございました。一日の疲れがすっかり取れました」
瑞葉は快適な時間を提供してくれた薫に感謝の言葉にを述べる。
「それは良かったです」
「ちょっと泳いじゃった。」
承芽は軽く泳げたことに満足する。
「いえ、別に構いませんよ」
「とても良いお湯でした。ちなみに、源泉はどこからですか」
結菜は源泉を尋ねる。
「ここは通常の源泉と、元々あった光石か湧き出るお湯を使用しているのですが、今日は光石からの源泉ですよ」
「そうなんですか」
「それじゃあ、また来るね」
瑞葉が挨拶をすると三人も挨拶をして、四人は湯浮温泉をあとにした。




