その三
オオソラタマで新原へ。
飛び立ったオオソラタマは南に向かって飛び立つ。
「あとは勝手に飛んでいってくれるよ」
生実は後ろに向き直して言う。
「海に出るよ!」
すぐに晴沢の森の上空を通りすぎると、窓際に座ってずっと眺めている瑞葉が言う。
「そんなに遠くはないけど、ちょっと暇かな」
結菜は退屈そうに外を眺める。
「さっそくだけど、ちょっと外に出てみよっか」
部屋の真ん中に座っている承芽が言う。
「うん、上に行ってみよう」
瑞葉は立ち上がって扉に向かう。四人も瑞葉に付いていく。
「見て、天原から離れていくよ」
瑞葉が言うと、四人は見えなくなるまで天原を見つめ続けた。
機体から見える景色が海だけになり、四人は居間に戻る。
「ねぇ、どのくらいで着くの?」
承芽は生実に尋ねる。
「南西千五百キロの距離を時速千キロで行くから二時間だね」
「自家用飛行機でこの速さは驚きだよね」
承芽は機体の性能に驚く。
「なんでそんなに速く飛べるの?」
結菜が尋ねる。
「光石を包む特殊ガラスの全方位信号装置から光石に信号を送ることで、必要な力を引き出すんだけど……」
生実は説明を止める。
「そこからは説明しても難しそうだね」
瑞葉が察する。
「どうせ私達には分かんないけどね」
承芽は仕組みを理解することを諦める。
「全方位信号装置のお陰ですぐに反応してくれて、あらゆる方向に素早く動いてくれるんだよね」
瑞葉は知っている知識を言う。
「そう、だから車は光石の前後にだけ装置が十分なわけ」
「樹脂のような有機物の液体を光石の周りに流し込んで固めるんだよね」
結菜も知っている知識を言う。
「うん、詳しいことは解明されてないけど、上手いこと反応してくれるわけ」
「ちなみに、手を光石にかざして念じて、水を沸かせたり、持ってるだけで浮くことができる人はいるのかな?」
瑞葉は現実ではない方法を尋ねてみる。
「できたら、その人は念力使いかなにかといことになるね」
「やっぱりできないかぁ」
瑞葉は少し残念がる。
「でも、光石の謎は全てが解明された訳ではないから、できないとは言い切れないけどね」
「そうだよ、例えば言葉で浮いたりできるかもしれないよ」
「言葉?」
承芽は瑞葉に返聞き返されて続ける。
「石に音声を読み取る機能があって、決まった言葉の並びを発することで特別な力を生み出すの。音声だけじゃなくて、特定の脳波にだけ反応するとか」
「溶かした石の中に埋め込むのならあるけど、そういうのとも違うかな?」
生実は既にある技術を例に挙げる。
「もっとこう、魔法みたいな」
承芽は非科学的な力に期待する。
「うーん……」
生実は答えられず、沈黙が流れる。
機体は青原を目指して飛んでいった。
二時間ほどが経ち、瑞葉は画面に表情された時計を確認すると、機体の先端に立って海の先を見つめる。
「あれかな?」
瑞葉は水平線の変化に気付く。
「見えてきた?」
生実が瑞葉の声に反応すると、三人も機体の先端に行く。
「とても快適な雑魚寝だったよ」
承芽は居心地の良さを述べる。
「二時間の閉鎖空間、とても有意義だったわね」
結菜も満足気に外を眺める。
機体は上空で止まると、新原の先端に面する広大な駐車場に降りていった。
次は新原到着。




