その一
生実の飛行機で海に浮かぶ新原へ行くことに。
五月四日金曜日、みどりの日。
瑞葉は朝五時に起きると、海に浮かぶ新原に行くための支度を始める。
「時間ないからパンにしよう」
瑞葉は食パンを焼いている間に目玉焼きを作る。焼き上がったパンに中まで黄身が固くなった目玉焼きを乗せ、牛乳を飲みながら食べる。
「今日は一日晴れか。よし、そろそろ行こう」
食事部屋のテレビで天気予報を確認すると、瑞葉は家を出ていった。
「ちゃんと栄養も考えた食事にしないとなぁ。なんか買っていこう」
瑞葉は生実の家に行く前に、商店街にあるコンビニのソライエに寄ることにした。坂を登った所に、全面の水色に、黄色でソライエと書いてある看板が特徴のソライエがある。瑞葉はセルフレジで会計を済ませて店から出ると、野菜ジュースの紙パックにストローを刺して飲む。
「いいなぁ、コンビニのバイトかぁ」
坂を下りて結菜の店の脇道に入ろうとしたところで、ちょうど家から出てきた結菜は瑞葉に気づく。
「瑞葉」
「あ、承芽おはよー」
承芽は店の裏から道に出ると、通りかかった瑞葉に声をかける。
「どこ行ってたの?」
「家に何もないからコンビニに野菜ジュースを買い行ったの」
「瑞葉は野菜ジュース好きだよね。楽なのはいいけど、飲み過ぎも良くないからね」
「そうそう、美味しいからもっと飲みたくなっちゃうだよねぇ」
二人は商店街の北側にある晴山公園に出て、隣の承芽の家の玄関に回り込む。
「二人共来たね、よし行こう」
家の角を曲がったところで承芽が出てきた。
三人は晴山公園を北に進み、木々の間の階段を上って草地に入ると、草地の真ん中に生実の家とその西側に研究所が見える。草地の東隣には広い畑があり、道を挟んで梨畑が広がる。
「生実、来たよー」
瑞葉が呼び鈴を押して話しかけると、家中に瑞葉の声が響く。
「このインターホン、誰が来たのかすぐに分かって便利だよね」
承芽がそう言って待っていると、インターホンから生実の声がする。
「とりあえず、上がって」
三人は二階に上がり、図面などが並ぶ本棚や工具が置かれた生実の部屋に入ると、生実はノートに向き合って考え込んでいる。
「おはよー生実。新しい商品を考えてるの?」
瑞葉は生実に尋ねると畳に座る。
「光石ができることは発電や、搭載した乗り物を浮かせたり、重力や磁力など、様々な物理的働きを起こす力があるといわれてるけど、私はその一つである引力にもっと秘められた力があると思うの」
生実はちゃぶ台に両手を乗せて説明する。
「万有引力とは違う何かね」
結菜が言う。
「それが今作ってる商品に関係してるの?」
承芽が尋ねる。
「いや、それは別だけど、やっぱり謎が多いんだよね。商品どころかなんの根拠ないけど」
「そもそも世の中には、結果が解明されても、過程が解明されてない事がいっぱいあるんだよねぇ」
承芽は光石以外にも秘められた力を指摘する。
「とりあえず、行こう」
瑞葉がそう言うと四人は外に出て、家の西側にある庭を挟んで建つ研究所に向かう。
瑞葉は野菜ジュースがとても好きです。




