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その七

球集めで遊ぶことになり、森へ行くことに。

 商店街の西にある森に沿った道を北に進み、途中で森の中に入る道を少し進み、開けた草地にある瑞葉の家に着く。瑞葉が荷物を置いてすぐに出てくると、四人は森の小道を南下する。


 森を南下してから東に進んで森を出た所に皐月が見える。

「そうだ、皐月に誰かいるかもしれない。そしたら手伝ってくれるかも」

 瑞葉の提案で皐月に寄ってみることにした。森を南下して急勾配の手前から東に進むと皐月が見える。


「誰もいないかな?」

 瑞葉は窓から覗いてみると、店には誰も見当たらない。

「公園も誰もいないし、やっぱり一人ずつ隠しに行くことにしよう。二つ取って」

 承芽が箱を開けると、二列に並んだ球をそれぞれ取っていく。瑞葉は青、結菜は黄、承芽は赤、生実は緑の球に決まった。

「一つ一点ね」

 承芽が点数を説明する。

「自分の隠した色の球は取らないってことでいいよね?」

 生実が提案する。

「あれ? あの車は……」

 瑞葉は商店街から坂を登ってきた車に乗る見覚えのある顔ぶれに気づく。

 全員が瑞葉の目線の方向を見ると、白いオープンカーが草地に入って皐月に向かってくる。

「おう、瑞葉達」

勇人(いさと)さん。それに、芳文(よしふみ)さんと真守(まもる)さんと樹絃(たつる)さん、こんにちは」

 瑞葉は、祖父の勇人、結菜の祖父の奏立、承芽の祖父の真守、生実の祖父の樹創に挨拶する。

「やあ、みんな」

 運転する勇人の後ろに座る奏立も挨拶する。

「みんなも遊んでるかな?」

 樹創は様子を伺う。

「この球集めっていう物で遊ぶところなんだけど……」

「隠しに行ってやったら?」

 静葉は店から出てきて勇人達に言う。

「そうだな、じゃあ隠してくるよ」

「ありがとー、それじゃあ、晴沢の森の北側に隠してきてください」

「よし分かった、ちょっと待ってて」

 勇人がそう言うと、祖父達は車を下りる。

「車でもいじって待ってな」

 そう勇人が言い残し、祖父達は山を下りていった。


「じゃあ、ちょっと乗ってみるか」

 瑞葉はそう言って運転席に乗り込み、承芽は助手席、結菜は運転席の後ろ、生実は助手席の後ろに座る。

「この生実の会社が作ったハシタマ―1は、誰でも運転免許なしで運転できる自動操縦の車で、小学生でも運転していい最初の車なんだよ。二十年前に発売した車だけど、今でも人気のある車なんだよねぇ」

 助手席の承芽が説明する。

「光石で動くからガス欠もないんだよね」

 瑞葉も知っている知識を言う。

「うん、光石から発生する光力が動力源だから排気もないし、冷却する必要もなし」

 瑞葉はアクセルをゆっくり踏んで玄関の方向に前進させると右に曲がる。

「音もないし、いいなぁ」

 瑞葉は三周して止める。

「じゃあ、次は私」

 瑞葉と承芽は降りて交代する。

「このままどこかに行くのもいいわね。ちなみに、うちはハシタマの赤」

 承芽は三周して止める。

「私も運転してみる」

 結菜と承芽が交代する。

「色で迷うよね。うちはハシタマの黄色」

 結菜は三周して止める。

「私も運転してみようかな」

 生実は結菜と交代する。

「うちはハシタマなら緑をよく乗るかな。うん、新車同然ね、さすがはわが社」

 生実は三周して止める。

「もう一回運転させて」

 瑞葉はそう言って生実と交代して前進する。

「五万円だから買えるんじゃない?」

 生実が価格を言って購入を勧める。

「いくらなんでもまだ早いって、勇人さんに借りればいいし」

「車は一人一台になってきてるし、小中学生が運転するのは珍しくないよ」

 承芽は最近の車事情を言う。

「確かに、小学生だけ四人で走ってるのを見たことあるなぁ……」

 瑞葉は少し険しい表情になる。

「いつでも新車を用意してるから、気が向いたら試しに試乗してみるのもいいんじゃない?」

「まぁ、そのうちにでも……」

 瑞葉は生実の勧めに遠慮ぎみに答える。


「勇人さん達まだかなぁ。あっ、そういえば、ラジオに投稿してたんだった。つけてみよっと」

 瑞葉がラジオをつけると女性の声が聴こえてくる。

「今日は遊びの日ということで、今週のお題は、『どんな遊びをしていますか?』です。それでは、中学一年生女の子の猫田さんからのお便りです」

「あっ、これ私!」

 瑞葉は大きな声を出す。

『続いて、羽橋市の猫山さんからのお便り」

「にゃー」

「私はよくゲームをします。今度、人気シリーズの新作が発売するので、一日中ゲームをする日が続きそうです。それと、絵も描いたりします。今描いてる絵は今月に開催される天原芸術祭りに出品する予定です。外では猫を探しに近所を歩き回ったり、駄菓子屋に行ってゲームをしてます』」

「ぐ~」

「なるほど、色んな趣味があるみたいですね。確かに天原は猫が多いよね。天原芸術祭りに出展するみたいにだけど、ぜひ、賞などの結果も伝えてください。続いて、こちらも羽橋市の中学一年生女の子、豆山さんからのお便りです」

「にゃ~」

「『私はゲームをしたり小説を読みます。コーヒーやお茶を飲みながら読むのが好きす』。いいよねぇ、私も喫茶店で本を読んだりします。続いて、おっと、こちらも晴山町の中学一年生女の子の空山さんからのお便りです。『私は家でゲームをしたり、様々な発明を作ったりします」

「わんっ」

「天原手作市でも販売するために開発中です』。天原手作市はいつも大勢の方が来る催しだよね。私も行くので楽しみにしてます」

「あお~ん」

「続いて。なんと、こちらも羽橋市の中学一年生女の子の日山さんからのお便りです。『私は家でゲームをしたり、ゲームセンターに行きます。あと、アマネシホシという格闘ゲームを作ったので五月三日に発売する予定です」

「ぐぅ~」

「ちなみに、友達の猫山、豆山、空山という中学一年生女の子からのメールは送られてますか?』えーっ、みんな友達だったの? そっかー、じゃあ、みんなでゲームをしたりもするのかな? みんな色んな趣味を満喫してるみたいですねー。私もみんなと同じでゲームが大好きなんだけど、ゲームを作っちゃうなんて凄いねー、私も買ってみるね。それと、私は野外音楽フェスもよく行くんだけど、みんなは行ったことはあるかな? 野外フェスがあちこちで行われる季節になっていくから是非行ってみてね。読まれなかったお便りも含めて、全てのお便りはホームページに掲載するから、ぜひ読んでみてください。それでは一曲……」

「みんな読まれたね」

 瑞葉が振り替えって笑顔を見せる。

「にゃっぱも鳴いてくれたね」

 結菜はラジオのマスコットである猫のにゃっぱがちょくちょく鳴き声を挟んでくれた事が嬉しそう。

「格闘という言葉にワンパは唸ってたね」

 承芽はラジオ番組のマスコットである犬のワンパも反応した事に喜ぶ。

「アマネシホシの宣伝もできたし」

 承芽は満足気に言う。


「隠してきたぞー」

 ラジオを聴いていると勇人の声が聞こえる。祖父達が坂を登って戻ってくると四人は車から降りる。

「ありがとー」

 四人瑞葉が返事をすると、祖父達は皐月の中に入っていった。

「じゃあ、晴長森に行こう」

 承芽がそう言うと、四人は丘を下りていった。


 丘を下りると、目の前にまた丘があり、丘の階段を登っていく。草地を進むと晴沢の森が見えてくる。階段を下りて晴沢の森に入り、真ん中の広場に着く。

「確認しておくけど、瑞葉は青、結菜は黄、生実は緑、私は赤が自分の色で、自分の色を見つけたら二点、他は1点、制限時間は一時間ね。それじゃあ、始め!」

 承芽の合図で四人は坂を降りていく。東西に七百メートル、南北に三百メートルある晴沢の森に入ると、承芽は西に向かい、生実は東に向かう。瑞葉と結菜は湖の近くまで行くと、瑞葉は東に向かい、結菜は西に向かっていった。

「どこにあるかなー」

 瑞葉は森と泉の間を歩きながら森の中を見回す。

「ないなー。もっと森の中を探してみよう」

 瑞葉は森の中に入って行く。

「ん? 何か見えたような……」

 瑞葉は15メートルほど先にある木の陰に何かが見えた気がして近寄ってみる。

「あれ、気のせいかな」

 木のそばから顔を覗かせる。

「あっ、あの時の猫!」

 瑞葉は一日に見つけたキジトラの猫が前足で何かを触っていることに気付く。

「あっ、球! しかも青球!」

 瑞葉は球を取る。

「ありがとー、猫さん。それじゃあ、まだ探すから……」

 瑞葉は猫の頭を優しく撫でると、西に向かって歩き始める。森の真ん中の道を渡って森の西側を見回す。

「球ー、どこー」

 瑞葉は森の中を歩いていると、後ろから聞こえる音に気付いて振り返る。

「さっきの猫さん、ついて来てたのか……」

 瑞葉はしゃがんで優しく撫でると、立ち上がって歩き出す。

「端まで来ちゃった」

 瑞葉は森に振り返ると、猫の姿が見当たらない。

「あれ? 猫さんがいない」

 瑞葉は北東に歩き始めると、猫の姿を意識しつつ球を探す。

「うーん、いやいや、今は球を探してるんだって……」

 瑞葉は森の北側を東に進むと、また木の陰に何かが見えた気がして近づいてみると細長い影が動いたように見えた。

「ええっ? 蛇?」

 瑞葉はゆっくりと顔を覗かせる。

「さっきの猫さん……なんだ尻尾か」

 瑞葉は猫の足元に目を向ける。

「あっ、球! しかも、また青球!」

 瑞葉は球を取る。

「ありがとー猫さん、合わせて4点だよ」

 猫の頭を優しく撫でてから、瑞葉は東に向かって歩き始めると、後ろから猫がついて来る。

「うーん、それじゃあ“ミー”と呼ぼう。君の名前は瑞葉の“み”を取って“ミー”ね」

 球を探す事を忘れて森の中を歩いていると、二つの球が光りだした。

「おっ、どういうこと?」

 なぜ光りだしたのか分からない瑞葉は、とりあえず戻ることにした。

「あれ? みんな集まってる」

 森の真ん中にある広場に結菜と承芽と生実の姿が見えた。

「みんなは見つけた?」

 瑞葉の声に三人が気付くと、承芽が返事をす。

「見つけたよ、瑞葉は?」

「ほら、青球二つ」

 瑞葉は両手に持った球を出す。

「やっぱりね」

「え?」

 承芽は知っていたかのように反応すると続ける。

「始める前に全員で球を持ったでしょ? その時、球探知機に手から個人の情報を記録させたの。そして、記録してある手で全ての球を手にすると光る仕組みになってるのよ」

「なるほど、これは光石でできていたのか」

 瑞葉は球を見つめて言う。

「そういえば、みんなはどの色の球を見つけたんだっけ?」

「三人とも自分の色の球を見つけたから引き分けね」

 そう言って、結菜は黄球を両手に持って見せると、承芽と生実も自分の色の球を両手に持って見せる。

「そういえば、この前の猫がついて来てるみたいだけど」

 承芽は瑞葉の後ろにいる猫気付く。

「ミー、ついてきてたのか。森の東側を探してたら猫が木の陰で球をいじってたから一つ目を見つけるできて、それから西側の端まで行って振り替えったらまた猫がいたから、近づいてみたら木の陰に球があったんだよね。それでね、瑞葉の“み”を取ってミーと名付けたの」を撫でる

 そう言って、瑞葉はしゃがんでミーを撫でる。

「あれ? 他の猫も来たよ」

 承芽は湖側から近づいてくる三匹の猫に気付く。

「それじゃあ、君は“ユー”ね」

 結菜は瑞葉に習って茶トラ白の猫を名付けると、しゃがんで頭を撫でる。

「じゃあ、ツーね」

 承芽も二人に習って三毛猫を名付けると頭を撫でる。

「ということは、君はナーね」

 生実も三人に習ってキジトラ白の猫を名付けると頭を撫でる。


「とりあえず今日は解散でいいわね」

 一段落したところで承芽が言う。

「そういえば、大型の飛行機が完成したから、試乗も兼ねて明日にでも青原に行ってみようと思うんだけど」

 生実は海に浮かぶ街の青原に行くか尋ねる。

「もちろん、二人はどうする? もしかしたら、瑞葉の両親がいるかもしれないよ」

 承芽は瑞葉と結菜に尋ねる。

「もちろん行くよ。結菜もでしょ?」

「うん」

 結菜も瑞葉に賛同する。

「よし、それじゃあ明日の朝七時に私の家に来てね」

 話が決まると、四人は晴山町に帰っていった。

三話が終わりました。

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