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その一

自作ゲームと人気シリーズのゲームソフトを買いに承芽の店へ。

 五月三日木曜日、遊びの日。

 朝八時五十五分になり、瑞葉が家から出てくる。森を東に抜けて森沿いの道を南東に進み、坂を下りた所の商店街に入り、承芽の両親が経営する三階建ての爽山に着く。商店街の北側には晴山公園がある。

「まだ誰もいないみたい」

 瑞葉は店の西側の草地に並ぶ。

「あと一時間か」

 瑞葉は背中を壁に寄りかける。

「瑞葉だけみたいだね」

 五分が過ぎて結菜が来る。

「結菜、ちょっと早すぎたかなぁ」

 結菜は瑞葉の後ろに並ぶ。

「そんなことないよ、この待ち遠しさが楽しみの一つでもあるんだし、多少苦労すれば手に入れた喜びも増すしね」

「やっぱりそうだよね、並ぶとお祭りに参加した気がしないもんね」

 少し経つと生実が来た。

「結局、瑞葉と結菜だけか……」

「そうみたい」瑞葉

「まだ開店まで一時間あるから、これから増えるかもしれないよ」結菜

「でもやっぱり、購入者は特典付きの店舗に集中するだろうし」生実

「私は限定アイテムのために全ての店で予約したけど、承芽の店で買ったのを使うよ」

「でも、少し経つとダウンロードで買えるし、そんなに急がなくていいんじゃないかな」瑞葉

「でも、それだとなんか納得できないな」結菜


 九時三十分が過ぎ、青空の下三人が並んでいると、店の扉が開く音が聞こえてくる。

「おっ、みんな来てるね。十時までもう少しだから、まぁ、のんびり待ってて」

 角から承芽が顔を覗かせる。

「承芽、買いに来たよー」

 瑞葉は明るく返事をする。

 九時五十分になり、三人がしゃがんで壁に寄りかかっていると、公園の中から声をかけられる。

「やっぱりみんなも来てるね」

 公園の中から光々、愛々、最々、弓々が来た。

「みんなも来たか」

 後ろにいる生実が反応する。

「みんなも星物語を買いに来たんでしょ?」愛々

「そうだよ。あと、結菜と承芽が作ったアマネシホシも。みんなも買う?」

「もちろん買うよ。ていうか、アマネシホシの方が気になってるんだよねぇ」

 最々が答え、光々が生実の後ろに並び、愛々、最々、弓々と続く。

「それにしても、星物語と同じ発売日で大丈夫かなぁ」

 弓々はアマネシホシが星物語と同日発売の事を気にかける。

「承芽はかなり自信があるみたいだし、大丈夫なんじゃない?」結菜

「稼働したばかりで全く宣伝してないアーケード版が好評だし、長く売れていくかもね」生実


 十時になり、承芽が店から出てくる。

「開いたよ、入ってー」

 七人は店内に入り、右脇の階段を登って三階のゲーム売り場に向かう。

「爽芽さんおはようございまーす」

「瑞葉ちゃん達いらっしゃい」

 瑞葉達は、様々な雑貨を揃える一階で棚の整理をしている承芽の母親のさわめ(爽芽)と言葉を交わして二階に上がる。

真守(まもる)さんおはようございまーす」

「来たね、瑞葉ちゃん達」

 瑞葉達は、玩具を揃える二階で棚の整理をしている承芽の父親の真守と言葉を交わして三階に上がる。

「アマネシホシと、星物語くださーい」

「それじぁ、アマネシホシが千円で星物語が五千円、合わせて四千円ね」

 瑞葉が奥の会計で二つ注文すると、承芽は事前に紙包みにしておいた二本を紙袋に入れて手渡す。

「はい瑞葉、ありがとー」

「もちろん私も二つね。後ろのみんなも同じよ」

 生実の番になる。

「というわけで二つね」

 次に光々の番になる。

「光々達も来てくれたんだー」

「そりゃ、もちろん」

 全員が買い終えて、瑞葉は紙袋からソフトを取り出す。

「お、判子が押されてるね、『アマネシホシを手に入れた』と『五月三日』の日付、『星物語を手に入れた』も!」

「それじゃあ、遊ばせて貰うねー」

 光々達はそう言いながら階段に向かう。

「後で感想を聞かせてね」

「うん、じゃあねー」

 光々達が階段を降りていく。

「承芽はずっと店番なの?」

 瑞葉は承芽に尋ねる。

「ここで働いてる訳ではないけど、今日は特別に率先してやってるだけ、アマネシホシをちょっとやって、あとは星物語をやりながらね」

「そういえばさ、私達以外は誰も来ないけど、百万本も大丈夫かなぁ」

 瑞葉は少し心配そうに尋ねる。

「分からないけど、他の店ではそれなりに売れてるんじゃない?」

 承芽は特に気にしてない表情で答える。

「それじゃあ、早速帰ってやるとするか」

 生実が帰ろうとする。

「まずはアマネシホシだね」

 結菜が言う。

「そうだね、星物語もやりたいけど、まずはアマネシホシでしょ」

 瑞葉も同じ意見。

 三人は承芽と別れ、階段を降りていく。店を出て商店街を歩いていると瑞葉が言う。

「アマネシホシ、どのくらい売れるかな」

「星物語と同じ発売日だから、合わせて買う人もいるかもね。でも、一番の強みは、なんといってもアマネシホシの価格が千円なところね」

 生実は低価格が購買意欲に繋がると主張する。

「星物語と一緒にアマネシホシも盛り上がりそうだよね」

 瑞葉は売れ行きに期待を抱く。

 三人は別れて帰っていった。

承芽の店、爽山の各売り場。

地上三階/ゲーム

地上二階/玩具

地上一階/雑貨

地下一階/雑貨

地下二階/音楽、映像

地下三階/空間

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