その七
瑞葉達が帰ったあと。
結菜は湯船でいつの間にか眠ってしまった。すると、いきなり体が光りだし、結菜は目を覚ます。
「えっ? 体が消えていく! まさか!」
結菜はあわてて浴室から出てバスタオルを体に巻いてしゃがみこむと、体は完全に消えていった。
「ここは……校庭?」
結菜は辺りを見回すと、すぐに晴山中学校の校庭と気づく。
「あ、結菜、お風呂入ってたの?」
「瑞葉! それに、承芽と生実も!」
結菜は三人を見つけてほっとする。
「入浴中とは災難だったわね」
承芽は結菜の格好を見て同情する。
「そうなんだけど、いったい……」
「どうやら、私達が光の星使いに選ばれたみたい」
瑞葉が状況を説明する。
「とりあえず、変身しよう」
生実が三人に言う。
四人はそれぞれ両手を合わせて目を閉じて星に願う。すると体が光り、星の衣を身にまとう。
「で、相手は?」
「あそこ」
承芽が指差す先に五メートルはある大きな黒い物体が見える。
「多分、シジミね」
承芽が言うと、大きなシジミが殻を開いて喋る。
「いつもいつも、よくも残してくれるな、もう怒った、お前らを一人残らず食べてやる!
シジミは殻を大きく開いて襲いかかる。
「避けて!」
承芽が言うと、四人は四方に別れて避ける。
「みんな、次は攻撃!」
承芽が攻撃を促すと、四人はシジミに拳を当てる。
「硬い……」
四人の攻撃にびくともしないシジミは、殻を素早く閉じると同時に、後ろにいる瑞葉に突進する。
「うあっ!」
「瑞葉!」
シジミは間髪入れずに他の三人にも高速で突進する。
「きゃぁ!」
結菜が悲鳴を上げる。
「みんな、一旦集まって!」
結菜は攻撃を受けながらも三人を呼ぶ。
「回復するわよ」
「そうか、乙女座の魔法ね」
瑞葉は結菜の力に気づくと結菜の下に行き、承芽と生実も来る。
「光の癒し」
生実は乙女座の魔法で全員の傷を直す。
「ありがとー結菜」
瑞葉は傷が治って元気になる。
「来るよ!」
承芽がシジミに気づく。
「私に任せて。光の壁!」
結菜は四人の周りに丸い光の壁を作り、シジミの攻撃を食い止める。
「でも、ここままではどうしよう出来ないよ!」
光の壁に守られながら生実が言う。
「次は私に任せて。光の固まり!」
「体が硬くなった」
四人の体が硬くなり、瑞葉は体の変化に驚く。
「硬くなった体でシジミの殻を砕くのよ!」
四人は光の壁から抜け出し、一斉に拳で当てにいく。
「なに!」
シジミは大きく飛び上がり、渾身の突きが空を切って承芽は驚いていると、シジミは大きな体を落下させる。
「光の壁!」
結菜が光の壁でシジミの落下を抑えると、シジミはもっと高く飛び上がる。
「さすがに次は耐えきれないかも」
結菜は魔法に限界を感じる。
「よし、落ちてきたら四方に別れるよ」
シジミはが落下し始めると、四人は一斉に分散する。
「甘いな!」
シジミはそう言うと四つになり、四人の真上に落下してくる。
「そんなー、ずるい!」
瑞葉は更なる予想外の行動に驚愕する。
「なにがずるいだ、これであいこだろがー!」
「光の重さ!」
生実は天秤座の魔法で、シジミが落下してくる速さを遅くする。
「生実、ありがとー」
瑞葉はぶつかるギリギリのところで避ける。
「みんな、一旦集まって!」
生実は全員を呼んで作戦を立て直そうとする。
「どうしよー」
瑞葉は対処法が思い当たらず困惑する。
「落下する直前に一発突いてみたけど、ひび一つ入らなかったわよ」
承芽からの情報を聞いて三人は言葉にならない。
「殻と殻の繋ぎ目はどうかな」
結菜が提案する。
「なるほど、そこしかないかも」
生実は納得する。
「そういえば、瑞葉は魔法の魔法はなんだっけ」
承芽が尋ねる。
「えーと、そうか、あれでいこう、光の忍び!」
「なに? 消えた!」
シジミは四人の姿が見えなくなり困惑する。
「これでこっそり後ろに近寄るの」
「よし、いくよ」
承芽の掛け声で四人は散らばる。
「ちっ、どこいった!」
シジミは四人の姿を見失い、次の行動に移せない。
「えいっ!」
瑞葉はシジミの後ろに回り込み、おもいっきり拳を突く。
「そこかぁー!」
「効いてない!」
瑞葉がシジミの頑丈さに驚いていると、シジミは殻を大きく開き、瑞葉に襲いかかる。
「なっ!」
シジミが殻を開いたところで、結菜が殻の繋ぎ目を突き、殻が二つに分かれる。
「結菜、ありがとー」
「なるほど、生実!」
「わかったわ」
承芽と生実は理解すると、生実はシジミの後ろに回り込み、指で軽く突っつく。
「こっちこっち」
シジミが振り返って殻を大きく開くと、承芽が繋ぎ目めがけて拳を突く。
「避けた!」
「二度も通じるか!」
シジミは空中に軽く跳ね、承芽を飲み込む。
「承芽!」
三人の声が響く。
「なんだと!」
シジミが承芽を飲み込んだはずが、殻の先端で両腕と両足で抑えてゆっくり開いていく。
「今よ!」
承芽が殻を抑えながら叫ぶ。
「よかった、よし!」
後ろにいる三人で一斉に拳を貫く。その途端に、残りのシジミが間髪入れずにまとめて四人を飲み込もうとするが、四人で殻の端で抑える。
「もう、その手は効かないよ、結菜!」
「光の壁」
「結菜は光の球体を作りだし、殻に挟んで四人は殼から抜け出す」
シジミが丸い塊を吐き出した瞬間、後ろから衝撃が伝わる。瑞葉と結菜と生実の拳が殼の繋ぎ目を貫いた。
「こうなったら、ひたすら叩きのめす!」
シジミは飲み込むことを止めて突進してくるが、四人はうまく避ける。
「ちょこまかと!」
シジミは四人を相手に素早い動きで突進を繰り返す。
「みんな、あれでいくよ」
「うんっ」
四人は集まると、右拳が体の左側から見えるほどに体を捻り、拳が光り輝く。
「光の吹き飛ばし!」
「だから効かねーって!」
四人は殼の下に潜り込み、拳を突き上げる。
「シャイニング・スマーーーーーーッシュ!!」
シジミは遥か遠くの空に飛ばされて光り輝いた。
「シジミさん、あなたの想いはきっと人々に伝わったわ」
瑞葉は夜空を見つめて言った。
「あれ? いつの間にか寝ちゃったみたい」
結菜は湯船の中で目を覚ました。
「夢か、それにしても最後は綺麗に決まったな」
生実は湯船の中で目を覚ました。
「私は残さず食べてるからね」
承芽も湯船の中で目を覚ました。
「なんだ夢か」
瑞葉は湯船の中で目を覚ました。
選ばれる星使いは、状況に応じて何人かが選ばれる。
最後は全員で拳を突き上げ、大技のシャイニング・スマッシュで、空の彼方に吹き飛ばす。