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人形技師ウィル・フォーメン  作者: 敦賀正史
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第1集 献身慈悲のナインペイン 終章 旅立ち

 ようやく、この街から離れられる日が来た。

 あの日の翌朝なんかは三人共疲れて昼過ぎまで寝てしまったし、 容疑が晴れた後も取り調べで足止めされたりでやっとの事だ。

「よお、ウィル。これから出発か?」

 突然、ニーメンが顔を出してきた。

 出発前に挨拶しに行こうとは思っていたから丁度よかったけれど…

 何やら大荷物の様子で、まるで今から旅にでも出るみたいだった。

 ……まさか、一緒に付いてくる気じゃあ?

「俺もあれから色々考えてな、黒化したリビングドールがあれだけヤバいんだ。そうなると、俺たちの祖父の世代からの宿敵である完全漆黒ってのがどれだけヤバいのか知れたもんじゃない。だから、俺も独自で探してみようと思うんだ。同じ目的を持つ者同士だ、旅の途中でまた出会う事もあるだろうと今日は挨拶に来た。」

「そうですか。私とフィーヴィーは、祖父の顧客リストを頼りに現存するリビングドールを探そうかと思うのですが、ニーメンさんは?」

「俺の方は適当に色んな街を回って情報を集めてみようと思う。互いに違う方法でなら、それだけ見つかる確率も上がるかもなあ。」

 ニーメンも完全漆黒を追うのか。

 彼なりに考えた結果での行動なんだろうなあ…

 黒化した人形を見る前と後では、まだ見ぬ完全漆黒に対する脅威も変わってくる。

 私の祖父やニーメンの祖父が危険を承知で倒そうとしたのも納得が行く。

 けれど、ニーメンがこの街を離れてしまったら、リバス嬢は独りになってしまう。

 ライフィールド氏が亡くなって、ナインペインも壊れてしまった今となっては……

「ウィルさん、これから出発ですか?ニーメンも準備できているみたいだし丁度よかった。これから暫くの間、屋敷を開けますので戸締りをしてしまおうかと思います。」

 見ると、リバス嬢も荷造りした荷物を持っていて、これから何処かへ出かける様子だった。

「屋敷を開けるって、リバスさんも何処かへ遠出でもするのですか?」

「ええ、これからニーメンと一緒に旅立ちますので。」

「ちょ、ちょっと待った。何で俺の旅に付いて来るんだよ?屋敷とか色々あるだろうし、第一リバスさんには関係の無い事だろ?」

「何言ってんの!?あんな事件があったんだから、私がこの街に居られるわけないでしょ!?それに、ニーメンの旅に私が付いて行くんじゃないの。私の旅にニーメンが付いて来るの。わかった?」

「そ、そんな勝手な!?」

「それから、その『リバスさん』ってのはやめて!昔の様にリバスって呼び捨てで呼んで!」

「な、何だよそれ…俺の方が歳下だし、それに…」

「言い訳しない!これから旅のパートナーになるんだから、お互いの距離が近くなるのは当然でしょ。」

「それはそうだけど……って、いいよ。好きにしてくれ。」

 やれやれ、この二人は……

 まあ、リバス嬢が独りにならず丸く収まったのだから、いいのかな。

「ご主人様。よかったですね、あの二人。」

「そうだねフィーヴィー。」

「心配事も無くなりましたし、安心して出発できます。」

 いよいよ出発か。

 最後に二人に挨拶しないと…

「リバスさん、ニーメンさん。短い間でしたがお世話になりました。私とフィーヴィーも、もう出発しようかと思います。」

「お二人のおかげで、私もご主人様に出会う事ができました。ありがとうございます。」

「おう、ウィルもフレイムヴィレッジも元気でな。」

「ああ待って、ウィルさん。貴方にこれを預けておきます。」

 リバス嬢から何やらケースを渡された。

 大きさは小さめの工具箱ぐらいだけれど、中身は…?

「ナインペインの核心です。何時の日か、黒化現象を直せる日が来た時に彼女を復活させてあげてください。」

「よろしいのですか?」

「はい。私には…今となっては辛い思い出が多過ぎます。ですから、ウィルさんが持っていてください。」

 今回の事件の事を…黒化現象を忘れぬ為の品として、ナインペインの核心が私に託される。

 私は祖父が成し得なかった黒化現象の解明を成し遂げる為…

 ニーメンは祖父が倒せなかった完全漆黒を倒す為…

 各々は今、旅立とうとしていた。




人形技師ウィル・フォーメン「献身慈悲のナインペイン」 完

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