第1集 献身慈悲のナインペイン 第5章 修理 ー6ー
部屋に戻ってフィーヴィーの左足の修理を行なっていると、ライフィールド氏とリバス嬢、そしてニーメンが訪ねてきた。
「フィーヴィー凄いじゃない、この街に来ていた悪い人をやっつけたんだって!」
「よお、ウィル。街じゃあ可憐で清楚なお嬢さんが賞金首をぶっ倒したって騒ぎになっているぜ。」
「えへへ、ご主人様…私、褒められちゃいました。」
さっき倒した賞金首の話…もうそんなに広まっているのか。
「やあ、ウィル君。ニーメン君から話は聞いたよ。何でも、そこのフレイムヴィレッジを使って賞金稼ぎの真似事をやったとか。」
「本当は歩行訓練だけのつもりだったんですけどねえ。まさか、あんな事になるなんて。でも、手に入った賞金のおかげでフィーヴィーの修理を続けられそうでよかったです。」
「相手は各地で戦闘用の自動人形を破壊してきたそこそこ腕の立つ悪党だったんだが、そいつを倒してしまうリビングドールってのは凄いな、おい。」
「それは多分、フィーヴィーが戦闘用に作られた特別な個体だからだと思います。リビングドールと言っても他の個体だとああはいかないかと。」
「へえー。じゃあ同じリビングドールでも、うちのナインペインはフィーヴィーみたいに強かったりはしないんだ。」
リバス嬢やニーメンは、フィーヴィーの強さにはしゃいでいるように見えた。
だけど、そんな中ライフィールド氏だけは意外にも冷めている…
と言うか若干真剣な顔つきで私に話しかけてきた。
「ウィル君……街の平和を守ってくれた事には感謝するが、そんなに危ない真似をせんでも金なら私が工面したものを。ナインペインのメンテナンス料金もまだ払っていないし、何より君にもしもの事があったら心配じゃて。」
「すみません…もっと周りに相談すべきでした…」
「そうじゃな。君もまだ若いんだから、もっと周りの大人に頼ってもいいんじゃよ。」
「はい…覚えておきます。」
思わぬところで説教されてしまった。
今回の件は、色んな意味で大事になってしまったなあ…
「まあ、私も気が回らなかったところもあるから君ばかりを責められんか…君がこの街で使っている店は何処だったかな?今後は私のツケで買える様に手配しよう。君がリビングドールに興味を持ってくれるのは私としても嬉しい事じゃし、年寄りの道楽だと思って気にせんでくれ。」
「あ、ありがとうございます!」
いきなり予算の問題が解決してしまう。
これでフィーヴィーを完全な状態まで修理できる…か…
「それにしても、リビングドールを使って賞金首を倒すなんてよく思いついたなあ。元はモールスが完全漆黒を倒すために使ったものとは言え、対人で戦わせるなんて大胆じゃなあ。」
「いえ、私のアイデアではなく…」
「なんと!?そうすると偶然街で暴れていた賞金首に出くわして、仕方なく迎撃したと…?」
「そうでもなくて……賞金首を倒して賞金を稼ごうっていうのはフィーヴィーのアイデアなんです。」
「はい、私という戦力とご主人様の人形技師としてのサポートがあればやれる…そう思って提案しました。」
「……!……そうか。少し意外だったから驚いたよ。」
意外…かあ。
私も最初にフィーヴィーがこんな事を言い出した時は驚いたし、ライフィード氏がそう思うのも当然の事か。