第1集 献身慈悲のナインペイン 第5章 修理 ー1ー
暫くはライフィールド氏の屋敷に引きこもりがちで、時々部品を買いに行く程度の外出しかしない日々が続いた。
連日の作業に気を利かせてくれたのか、食事は三食ともナインペインが部屋まで運んでくれるようになった。おかげで作業に集中できて助かっている。
他人と接する機会が無いかと言うとそうでもなかった。
時々リバス嬢やライフィールド氏が様子を見に来てくれるからだ。
リバス嬢は無邪気なもので、少しずつ動かせる部位が増えてくるフィーヴィーを興味深そうに見ていたり、フィーヴィーと会話して私との進展を探って揶揄ってきたりしてきた。
修理を始めた最初の日なんかは、風呂から出てきた私と服を脱がせた状態でベッドに寝かせてあったフィーヴィーを見られてしまう。
その時は「昨日はお楽しみでしたね。」と冗談を言われて恥ずかしかった。
一方のライフィールド氏は修理の進捗を見に来て、私がリビングドール相手に馴染んでいく様子を見て満足しているようだった。
「こうして君がリビングドールに興味を持ってくれて嬉しいよ。これがきっかけになって修理だけじゃなくて新たに作る方にもつながって欲しいものじゃが。」
なんて言われる始末で、私がリビングドールを復興させる事に期待を膨らませているようだ。
そして、何と言っても修理の最中はフィーヴィーがずっと私の話し相手になっている。
「関節部分が繋がりました。これでご主人様一人でも運べるようになってよかったです。」
「胴体部分が治りました。これで運ばれる時にご主人様を肌で感じる事ができます。」
「手が動かせるようになりました。これでご主人様をなでなですることができます。」
「足が動かせるようになりました。これでいよいよ歩いて移動する事ができますけど、ご主人様に抱きかかえられなくなると思うとちょっと名残惜しいです…」
こんな風に体が直るに連れて感想を言ってもらえるのも励みになった。
……感想の内容がちょっと変な方向に向いている気もするけど気にしないでおこう。
結局、フィーヴィーの全身を最低限動かせるようにするのに七日間かかった。
核心が頭部に埋め込まれていた彼女は、先の戦いで頭こそ守ったものの首から下は壊れてしまい全く動かせないでいた。
だけど、今回私が修理した事で機能は不完全ではあるものの体を自由に動かせるようになった。 彼女は嬉しそうだ。
武装機能なんかの人形独自の機巧を全部直すには当分かかりそうであるけれど…
見た目相応のか弱い女の子としての生活を行うにはこれで十分だったりする。
明日はいよいよフィーヴィーを外に連れ出しての試運転…
もとい彼女自身の希望で、彼女が見たがっている場所を歩く事にした。
今の街並みや、私が部品を買いに行っている店とかだ。
「ご主人様とのデート…私楽しみで夜も眠れません!でも私は人形だから眠らないんでした、てへっ。」