第1集 献身慈悲のナインペイン 第4章 トップ・ドッグマウス ー2ー
あの話し合いの後、ニーメンと協力してフィーヴィーを部屋まで運んだ。
お互いに思うところはあったが気持ちの整理もつかず、必要最低限の会話しかせずに別れてしまった。
ライフィールド氏へのせめてもの罪滅ぼしと言うわけではないけれど…
流れとは言え修理をするとフィーヴィーと約束してしまったしなあ。
「ご主人様……元気がないみたいですけど、さっきの話で落ち込んでいるのですか?」
「うん、まあ…そんなところかな…」
「そうですか…でも、今は落ち込んでいいと思います。」
「えっ…?」
「ご主人様のお祖父様もドッグマウス様も己が信念を突き通した結果の対立ですが、それを気に病めるご主人様ならば二人が解決できなかった問題を解決できます。今は焦らずじっくり悩んで、ゆっくりでいいですから答えを見つけましょう。」
てっきり「元気を出してください」とか落ち込んでいるところを励まされるのかと思ったら意外だった。
今までリビングドールに純白清廉な心を与えるのは、単純に人間に対して従順で悪事を一切行わせないためかとばかり思ってたけど…
こういう時にその純真さから主人の何もかもを受け入れて、その心を癒すためなのかもしれない……そう思った。
「そうだねフィーヴィー。悩む事でいつまでも気を咎めていても仕方がない…か…。もっと前向きに…今できることから始めよう。」
「そうです、その意気ですご主人様。まずは私の体を修理から始めましょう。動ける体になった私と一緒に完全漆黒を追えば、ご主人様も何かつかめるかもしれません。それに、何か辛い事がある時には別の作業に没頭すると気が晴れると聞いた事があります。ですから……その……私に夢中になってください!!」
少しばかり顔を赤らめさせて言う彼女の姿に、不覚にも私はときめいてしまった。
こんなに可愛い彼女を動けないままにしておくなんて罪だと思ってしまうほどだ。
「よし、それじゃあ早速破損状況の確認を……(ぐぅぅぅっ♪)……」
何か吹っ切れたのか、はたまた安心でもしたのかお腹の音がなってしまった。
「(コンコンコン♪)……フォーメン様、お食事の用意ができました。」
そういえば、もうそんな時間か。どおりてお腹が空くはずだ。
「…ごめん。先に夕食を食べてもいいかな?」
「うふふっ、ご主人様お食事は大切です。まずは夕食をお食べになって…それから…二人の時間を楽しみましょう。」
なんだか揶揄われたような気がした。
とは言えフィーヴィーの言う通り夕食は大事だ。
まずはしっかり食べて、それから作業に取り掛かろう。
急ぐことはない。
どうせ明日にならないと修理に必要な部品は買いにいけないのだから。