始まり
外で子供たちの笑い声が聞こえる(今日で何日たったのだろう…)そんな事を思い、男は缶ビールを飲み干す。
時計を見ると時刻は既に朝の6時半、通学、通勤の時間だった、彼はあの事件の日以来こうして朝まで1人自分のアパートで飲み明かし、日が上れば眠る、といった日々を送っている。
この日も眠りにつこうかと思った矢先、突然静かな部屋に聞きなれない着信音がなった、彼は一瞬驚いたがすぐに理解し「自分のものではないスマホ」を手にした、鳴りつづけているスマホを横目に隣で横たわる女性の死体を見つめた、「この人…死んでもキレイだな…」死体の頬にキスし、スマホをマナーモードに切り替えた。
久しぶりに女のスマホを見てみるとメールやLINEなど通知が画面を埋め尽くすほどに溜まっており、その中には3週間も連絡がつかない我が子を心配した両親や、友人、おそらく彼氏であると思われる男からの連絡もあった。
男はこの状態になったスマホを見るのがとても好きだった、まるで自分自身を色んな人が心配してくれているようだったからだ、しかしその中に見慣れないメールがあった、件名には「警視庁捜査一課」と出ていた
「警視庁…?」あまり学がない彼でもその名前は知っていた。
「両親か友人か…おそらくこの女の身を心配していた誰かが通報したのか…」無理もない事だった、この女を殺して3週間もたっていたのだから…
男はスマホを閉じ、床についたがどうしても眠れなかった、「警察がここに来るのも時間の問題だな」そう自分に言い聞かせるようにして久しぶりに家の外に出た、家を出るときなぜか足取りが軽かったがあまり気にはしなかった…