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02 君を追って、何処までも歩こう

【魔獣】

獣型の魔力を持った動物たち。


【魔物】

人型で、魔力を持ち、人種を食らうもの達。

ゴブリン、オーク、サハギン等。


一括でも良かったかもしれない(ノ∀☓)


 「「「ガルルルルル!」」」


 森の中で、狼達の威嚇の鳴き声が響き渡る。


 「これで28匹目。素材はあるだけいいのだが、歩みを止められるのは流石に解せないな」


 現在、アルスの周りを、3匹のナイトウルフという黒い狼型の魔獣が取り囲んでいた。

 闇夜に溶け込むような漆黒の毛並みをしており、影からの奇襲攻撃に優れた、厄介な魔獣であった。

 【魔獣】とは、通常の動物たちと違い、体に高濃度の魔力を持った存在である。

 極めて凶暴な性格をしており、普通の動物達とは違い、体内の魔力を使い、高い身体能力を発揮できる、ある意味、動物の進化形とも言える存在であった。

 体内には、その魔力を扱う為に魔石という物が存在しており、魔石が大きければ大きい程、それに合わせ強い個体になっていく。

 魔石は色々な道具に加工出来る為、高値で取引されており、魔獣の素材もそれなりに高く売れる。

 しかし、アルスには値段の事などはどうでもよかった。売る以外の使い道を、自分自身で持っていたからだ。


 「集まって来るのは雑魚ばかり。死の森も質が落ちたな」

 『全くですな! 前はもっと手強い相手が多かったというのに! 今では見る影もない!』

 『それは主様が……いえ、何でもないわ……』

 『ぐ~! バオッ! ぐ~!』


 頭の中で配下の者達と喋りながら、アルスはナイトウルフを一瞥する。


 「「「ガルルルルルル! ガウ!」」」


 アルスの視線を受け、3匹のナイトウルフが、一斉にアルスに襲い掛かった。

 常人では捕らえられない様な速度で、3匹のナイトウルフは、完璧なコンビネーションでアルスの前、横、後ろを同時に襲撃し、アルスを食い破ろうと、鋭い犬歯をギラつかせがら突っ込んでくる。

 そして、あと少しで、アルスにその牙が届くかという瞬間。


 ――ヒュパン!


 と、一陣の風が鳴り、3匹のグレイウルフの首が、同時に胴から離れ落ちる。

 地面には転がるのは、口を開け閉めしながら、自分に何が起こったのか分からないまま、目から生気が無くなっていくナイトウルフの頭と、綺麗に着地を成功させ、そのままヨロヨロとバランスを崩し、バタリと倒れる胴体があるだけだった。


 「学習しない奴らだ。この程度も看破できずに突っ込んでくるとは……逆に驚きだな」

 『まぁ、低級ですし。この程度でしょう。私の【糸】が見えないのも仕方ありません』

 『いい事を思いつきましたぞ。こいつらを捉え、進化させて見てはどうでしょう? 強く従順な個体になりましょう』

 「それだと時間がかかる。コスト的にも最悪だ。だが、一応その考え自体はありだな……」


 顎に手を当て、その考えを真剣に検証しながら、切断したナイトウルフの死体を【収納魔法】で異空間に収納する。

 この【収納魔法】は、自らの魔力で作り上げた異空間に、物を入れる事が出来るという魔法である。入れられる量は、その者の魔力量に比例するという魔法だった。


 「さて、先を急ぐか」


 その後、幾度の戦闘とも呼べぬ虐殺を繰り返しながら、アルスは森の中を歩いて行く。

 そして、月も落ち、空が明るくなり始めた早朝。

 ようやく、アルスの目的地が見え始めた。


 「見えて来たな」


 アルスは森の高所から、その場所を見下ろす形で眺めていた。

 見下ろす先には、森から少し離れる形で建てられた、10m程の巨大な壁が存在していた。

 壁の中には、赤い煉瓦造りの家々が立ち並んでおり、中々裕福な暮らしをしている事が窺えた。


 街の名は、【メメント】。

 【死の森】の手前、【魔の森】からもたらされる様々な恵みで大きくなった、発展途上の街であった。

 街には、腕利きの【ハンター】と呼ばれる者達が集まっており、その者達は、魔の森に棲む魔物を討伐し、魔石や素材を街に流し、それらを加工して特産品を生み出す職人。その特産品を外の街に売りつける商人などで、中々の賑わいを見せる場所であった。


 「ようやく街が見えて来たな。飛んだ方が良かったか? 大した魔物も居なかったしな」

 『しかし、アルス様。低級とはいえ素材は集まったではないですか。ここは良しとするべきでは?』

 「まぁ、そうだがな」

 『主よ。それよりも、これからどうされるのですか? 街の住民は寝てしまっている様だが……』


 現在、ようやく空が白み始めた早朝であり、起きている者は少なかった。

 アルスは、このメメントの街に、探し物をしに来ている状態であり、その探し物をするには、街の者達が、家の外に出ているのが好ましかった。


 「ふむ、叩き起こすか? 時間が勿体ない」

 『アルス様、それは流石にどうかと思うわよ?』

 『主も今日はお疲れであろう? 何処か宿を取り、休まれてはどうだろうか?』

 『ガウガウ! ぐ~! ぐ~!』

 「ふむ、それもそうだな……」


 アルスよりも常識がある配下に説得され、アルスは渋々街に入り、宿を探す事にした。

 それから二時間程かけて森を抜け、街の壁、その入り口である巨大な門の前までたどり着いた。


 「お、誰か来たぜ」

 「どうせハンターだろ? ……ったく、こんな朝早くから、面倒くせぇ」


 門の前では、あくびをする二人の門番が居り、アルスが来るのを確認すると、長い槍をだらしなく肩に担ぎ、アルスの前へとノロノロと歩いてくる。


 「メメントの街へようこそ。身分証を拝見しま~す」

 「市民、商人は滞在日を記入の上、それに伴う滞在費を払って貰いま~す。ハンターは法令として、C以上なら滞在費が必要ないぞ~」

 「ふむ、身分証か」


 まるでやる気の感じられない門番の対応に、アルスは特に目くじらを立てる事無く、懐から銀色のカードを取り出し、門番の一人に渡す。


 「はいはい、確認させてもらいますね~。あ~、やっぱりハンターだわ」

 「おっ! やっぱそうか。で、ランクは?」

 「Bだな。中々の腕利きらしい」

 「ハンターの職種クラスはどうだ? どうせビーストハンターだろ?」


 門番は、自分の予想が当たった事をもう一人の同僚に言いながら、カードの裏表を確認し、アルスの身分を把握していく。

 門番の言うビーストハンターとは、魔獣や魔物を狩る事で生計を立てる者達であり、一般的に、ハンターと言えば、このビーストハンターが当てはまる。

 しかし、ハンターと言っても様々なクラスがあり、その中でも、アルスが見せたハンターの職種は、ビーストハンターに続いて有名な職種だった。


 「こいつ、 賞金稼ぎ バウンティハンターだ……」

 「 賞金稼ぎ バウンティハンターだったか……」


 門番はそれを確認すると、まるで憐れみと悲しみの籠った目でアルスを見た。

  賞金稼ぎ バウンティハンターとは、賞金の懸けられた犯罪者【賞金首】などを捕まえ、あるいは殺し、然るべき所に届ける事で報奨金を貰う者達の事であった。

 以前この街では、ある噂によって、一獲千金を狙った多くの賞金稼ぎが出入りをしていた。しかし、その噂によって、多くの悲劇を生みだした過去があるのだ。


 アルスは、その噂と街の悲劇を知らない為、何故自分がこのような目を向けられているのかが分からず、首を捻ってしまう。


 「何だ? なぜそのような目で俺を見る?」

 『何でありましょうな、こ奴ら。別に主を馬鹿にしている様子もなく……まるで真に心配しているようでもありますな』

 『何か事情があるのかしら? でも、確か初対面よね?』


 門番たちは、アルスのその質問と仕草に、「あぁ、コイツはあの事を知らないんだな」と、一層深みの増した目を向けた後、そっと優しくアルスの肩に手を置いた。


 「いいか? 馬鹿な真似するんじゃないぞ? あんな噂に惑わされちゃいけねぇ」

 「そうだぜ? 命は大事にするもんだ。死の森なんて、オーガも近寄らない危険地帯だ。そんな所に、人が住んでるはずかねぇ。ましてや例え居たとしても、もう骨すら残ってないだろう。行くだけ無駄だ」


 門番たちは、まるで自殺しようとする人間を諭すように、アルスに優しく語り掛ける。

 先程まで、門の前でだらけていた人物とは到底思えなかった。

 アルスは、門番たちの言っている意味がよく分からず、肩に置かれた手をゆっくり払う。


 「なんだ急に? もう死の森に用は無いぞ?」

 「ん? なんだ、違うのか? てっきり俺達は、三年前から噂される、死の森に住む賞金首を追ってる者だと……なぁ?」

 「あぁ、俺もそう思ったぜ。この街に 賞金稼ぎ バウンティハンターなんて来るのは珍しいからな」

 「三年前? ……あぁ、成る程。それでか……」

 『ふむ、そういう事か』

 『成る程ねぇ~』

 『ぐ~、ぐ~、ワン!』


 アルス達は、門番の言った賞金首という言葉に、事の真相を理解した。

 門番達も、自分達が伝えたい事を話し終え、アルスが納得した事を確認し、アルスに道をあける。


 「まぁ、死の森に近づかないならそれでいい」

 「そういう事だ。命大事に。これはハンターの基本だからな。ほら、カードを返すぜ」

 「あぁ、ご苦労様」


 アルスは、門番から渡された銀色のハンターカードを懐に仕舞いながら、同時に二枚の金貨を取り出し、門番に投げ渡す。


 「説教の礼だ」


 門番は、金貨を空中で受け取ると、ニヤリと笑ってアルスに手を振った。


 「名前は確か、【ウォーカー】だったか? 死ぬんじゃねーぞ?」

 「じゃあなウォーカー。 賞金稼ぎ バウンティハンターなんて大変だろうが、頑張れよ!」


 何故か別人の名前で呼ばれたアルスは、軽く手を振りながら門を抜け、街の中へと入っていった。


 「さて、宿を探すか」


 アルスは、浅く霧立つ街の中を、宿の看板を探して歩き回る。

 道程には、朝の早い者達が少なからず歩いており、偶に商人と思われる馬車も通って行った。


 「こんな時間でも人は居るものだな」


 横を通り過ぎていく男を横目に、アルスは誰かに宿屋の場所を聞こうか迷っていると、ふと、遠くに宿屋らしき看板が目に入った。


 「丁度いい。あそこにするか」


 アルスは、願掛けにも丁度いいと、迷わず宿をそこに決めた。

 宿の名は、【ブルーバード】と書かれており、木造建築で、見た者を落ち着かせる様な雰囲気を放っていた。

 看板には、幸福を呼ぶ青い鳥が描かれており、アルスはそれを眺めながら、ゆっくりと宿の扉を開く。


 宿の扉を開くと同時に、扉に吊るされていた鈴の音が、朝の空気に静かに響いた。

 するとしばらくして、店の奥、カウンターの後ろから、ここの女将であろうおばさんが現れた。


 「いらっしゃい。こんな朝早くにお客さんとはね。あんた旅人かい?」

 「そんな感じだ。部屋を一室借りたい」

 「はいよ。1日銀貨3枚。朝と夜に食事を出すけど、今食べてくかい?」

 「いや、食べるのは夜でいい。もう寝る事にする」

 「そうかい。生活リズムは戻しておいた方がいいよ。昼夜逆転なんて病気の元だからね。ほら、部屋のカギ。二階の3号室だよ」


 アルスは女将に銀貨を渡し、部屋の鍵を受け取ると、軋む木製の階段を上り、部屋に入る。

 部屋は、丁度人一人が住めそうな狭さであり、ベットと机が設置され、中々の趣があった。

 アルスは、辺りを見回し、怪しい物が無いかを確認した後、ボロボロのマントを床に脱ぎ捨て、ベットに横になった。


 「ベットで寝るのは久しぶりだな」


 アルスは、寝る時の多くを本や研究用紙の束の上で仰向けになって寝ていたため、ベットの上で寝る事は少なかった。


 『主よ、今日はお休みください。今日はアレを創るのに、かなりの魔力を消費したのですから』

 『ひとまず魔力を回復しなくちゃね。お休みなさい。アルス様』

 『ガウ! ぐ~、ぐ~』

 「そうだな……聞き込みは……夜から…………するか……」


 どうにも疲れが溜まっていたらしいアルスは、そのまま深い眠りに就いた。



 ◇――――◇◇――――◇◇――――◇◇――――◇



 「お~い、交代の時間だぞ」


 早朝8時。

 メメントの街、門の前では、門番の交代が行われていた。


 「お! もうそんな時間か。やっと上がれるぜ!」

 「朝酒でも飲みに行くか? 丁度あぶく銭も手に入ったしよ」


 槍を担ぎ、だらしなくあくびをしながら、夜勤明けの門番二人が、早朝勤務の門番と交代をしていた。


 「なんだ? あぶく銭って? 賄賂でも貰ったか?」

 「嫌な言い方するなよな。これは俺達が命の尊さを唱え、それを聞いて感動したハンターから貰った、言わば謝礼金だ!」

 「謝礼金?」


 首を傾げる早朝勤務の門番に、夜勤明けの門番は、ドヤ顔でその時あった出来事を、大げさに話しだす。


 「そうそう。珍しく 賞金稼ぎ バウンティハンターがこの街に来たからな。俺達が死の森に近づかないよう、説得したんだ」

 「するとその 賞金稼ぎ バウンティハンターが、俺達の説得を聞き入れてな、涙ながらに礼だと言って、金貨二枚を俺達に渡したって訳よ!」

 「どうよこの美談! 感動するだろ? だからその余韻が覚める前に、俺達はこの金で居酒屋のお姉さんに……へへへ」


 何やら話が美談にすり変わり、それを夜勤明けの脳で真実だと誤認してしまった門番の二人は、これから行く居酒屋で、お姉さんとの楽しい一時を想像しながら、いやらしい笑みを浮かべていた。


 「はぁ~、変わった奴も居るもんだな。お前達みたいな奴に金貨渡すなんてよ」

 「馬鹿にしてんのか?」

 「いや、まぁ……んで? そいつの名前は?」


 早朝勤務の門番は、技とらしく話の流れを変え、その人物の名を聞く方向に誘導した。


 「あぁ~。なんだったっけか? ウォーターだったか?」

 「それじゃあ水だろ? 確かウォーカーだ」

 「そうそう、それだ。ウォーカーだ」

 「ウォーカーか。ランクは?」

 「Bだった。これは確実に覚えてる」

 「Bね……」


 早朝勤務の門番は、それらを一応メモすると、それを夜勤明けの門番達に渡した。


 「これ、一応帰る時に事務所にいる班長に渡しとけ。あと、そいつの身なりと顔の特徴も伝えとけよ」

 「何でそんなめんどくさい事しなくちゃいけないんだよ」

 「一応だよ」

 「はぁ~分ったよ」 

 「面倒だが、ちゃっちゃと終わらせてのみに行こうぜ! 俺達には、お姉さんたちが待ってるんだからよ!」

 「へへへ、そうだな!」


 スキップしながらルンルン気分で去っていく夜勤明けの門番とは対照的に、早朝勤務の門番は、何とも言えない嫌な予感がしていた。

 まるで、街に得体の知れない怪物を入れてしまった様な、そんな不気味な感覚だった。


 「何事も無ければいいんだがな……」


 早朝勤務の門番は、そう一人呟くと、槍を担ぎ、門の前へと向かって行った。

 しかしその悪い予感は、想定よりもずっと達の悪い物だった。


 ――コンコン!


 「班長~、居ますかぁ?」


 渋々、夜勤明けの門番は、事務所にいる班長に顔を出す事にした。


 「入れ」

 「「失礼しま~す」」


 班長は、眠たげな眼をこすりながら、夜勤明けの門番を出迎える。


 「それで、用事は?」

 「いえ、それがですね。朝番の奴が、俺達が早朝通したハンターに、何か感じる所があったらしくてですね、一応、班長に報告しとけって言われまして……」

 「これ、そのハンターのランクと職種クラス、名前が書かれたメモです」

 「どれどれ……」


 班長はそれを受け取ると、それをじっくりと読んでいく。

 そして、気になる点を門番二人に質問していった。


 「身なりは?」

 「裕福には見えなかったですけどね。ボロいマント被ってましたし」

 「髪と目の色、年齢、身長、言葉遣い」

 「髪は黒、目の色は赤でしたね。血みたいな色でしたよ。今思うと気味が悪いですね。年齢は、20代位だと思います

 「確か、身長は180センチ位はあったと思いますよ。俺と同じくらいでしたし。一人称は俺でしたね」

 「ふむ……」


 班長は、門番達の言った特徴を用紙に書き込んでいき、最後に、門番二人の目を覗き込む。

 すると門番二人は、その眼光を受け、額に冷や汗を一筋浮かべ、目を背けた。


 「ほかに何か言い忘れた事は無いか?」

 「いやぁ~、特にないですねぇ」

 「ですです」


 班長は、それで何かを確信したのか、椅子から立ち上がると、門番二人の前へと歩いて行く。

 班長は、立てば190センチを超え、筋肉質な体格をしている。

 その為、門番の間では、ベア班長と呼ばれており、睨まれれば生きて帰れないと、冗談交じりに言われていた。

 そしてその冗談が真実だったたと、熊班長の眼光を受け、夜勤明けの門番達は痛感している所だった。


 「何か貰っただろ。出せ」

 「いえ、何も貰って……」

 「出せ」

 「は、はい!」

 「あ、お前!」

 「仕方ないだろ! 班長マジ怖ぇし!」


 熊班長から発せられる威圧に耐え切れず、一人の門番が音を上げ、懐から一枚の金貨を取り出し、熊班長にそれを渡した。


 「やっぱり賄賂貰ってんじゃねぇか!」

 「賄賂じゃないですって!」

 「じゃあ、この金貨はなんだ!」

 「そ、それはですね――」


 それから身の潔白を証明するのに、一時間の時間を費やした門番達は、班長室から出る時には、金貨も没収され、もう酒場のお姉さんに会う気力も失せており、早朝勤務の門番に、深い怨嗟の感情を持ちながら、自分の家へと帰宅するのだった。


 「はぁ~全く、アイツらは……」


 深い溜め息と供に、班長は事の次第と、ウォーカーという人物の確認のため、ある場所へと連絡を行う事にした。

 班長の手元には、黒い受話機、【魔導念話機】と呼ばれる、【魔導具】が握られていた。


 【魔導具】とは、特殊な魔法陣を彫り込み、魔石を原動力として動く道具の総称であり、一般的に流通している物から、貴族や特殊な役職しか持てないような物まで、多種多様に存在していた。


 その中でも【魔導念話機】は、連絡事項などが多い役職の者が使うことが多く、一般的には流通していない魔導具であった。

 この魔導念話機は、他の箇所にある魔導念話機と魔法陣でリンクしており、ダイヤルを回し、魔石内の魔力を消費することで、相手と話しをする事が出来る、特殊な魔導具であった。

 この魔導具の特殊な所は、自分の思っている表層意識を、話す要領で相手に伝える事が出来るという点で、言葉に出さずとも連絡のやり取りが出来るという点である。故に、内密の話などをする際、辺りに人が居たとしても、思考でのやり取りの為、相手に念話の内容を掴ませない機能も含まれている。

 しかし、それにはコツが居る為、大体の人間は受話器越しに喋っている。


 班長は、魔導念話機の側面についたダイヤルを回し、何処かに連絡し始める。

 鈴音が鳴るようなコール音の後、直ぐに誰かが念話に応じた。


 『はい、こちらハンターギルド。マスターのグラムだ』

 「メメント街、北門番兵、班長のベアルだ」


 念話に出たのは、メメントの街にてハンター達を取り仕切っている支配人。

 マスターのグラムという者だった。


 「なんだ、ベアルか。暴力沙汰か? それとも魔獣騒ぎか?」

 「いや、今回はどちらも違う。少し調べて欲しい事があってな」

 『調べて欲しい事?』

 「夜勤勤務の者が、早朝5時頃、 賞金稼ぎ バウンティハンターを街に居れたんだが……」

 『 賞金稼ぎ バウンティハンター? 特に珍しい事も無いだろ。あの事件があったのも一年も前だ。確かにあの事件で、多くの 賞金稼ぎ バウンティハンターを失った事は事実だが、この街にも賞金首はいるしな。大方それを追って来たんだろう』

 「いや、そうかもしれんのだがな……」

 『何だ? 気になる事でもあるのか?』


 班長のベアルは、グラムのその言葉を聞き、少々自分の考えが誤りだったのかと歯切れが悪くなり出したが、一応これも職務と割り切り、今回の件を伝える事にした。


 「いやな、今回、門を通ったその 賞金稼ぎ バウンティハンターの話を聞いて、どうにも嫌な予感を覚えてな……」

 『勘か?』

 「まぁ、勘と言ってしまえば勘だがな。検問を終えた後とは言え、門番に賄賂紛いの物を渡したのも事実だ。それに、どうにも引っかかる事がある」

 『引っかかる事?』

 「あぁ、そいつは、夜が明けたと同時に現れたそうだ。北門は魔の森と近い。状況から考えて、そいつは夜通し魔の森を抜けて来た事になる。魔の森にも、多少整備された道はあるが、日が昇る時間帯でも、魔物や魔獣との遭遇率は高い。そんな道を闇深い夜の時間に、森の中から現れたのだ。それも武器らしい武器も身に着けずに。これで怪しまん奴が可笑しい」

 『それは怪しいな。何でそんな奴を通した?』

 「……夜勤勤務の者達だったからな」

 『あぁ……そういう事か』

 「面目ない」

 『まぁ、それは後々考えるとしてだ。そいつの情報を教えてくれ。夜の魔の森を抜けて来る様な奴だ。それなりに腕が立つんだろう。こっちでそのハンターを探っておく』

 「あぁ、頼む。では、そいつの身なりだが――」


 この班長の判断が、後にメメントの街、最大の悲劇を生むことになる事を、この時、まだ誰も知らなかった。

硬貨の値段。

金貨:一万円

銀貨:千円

銅貨:百円


こんな感じです(+ω+)ノ

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