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やって来たディアールは凄く大きいお店で、それなのに行列が出来ていた。大人気店らしい。

でも待ち時間が一時間、そんなに待つの?


「良い時間ですからね。前来た時は時間がずれていたのもあって、そこまで並ぶ必要はありませんでしたが、どうしますか?」

「俺等勇者なんだから、先に食べさせて貰うとか出来ねえの?」

「それは余り良くありません。評判を落とす事にもなりますし、どうしてもと仰るなら交渉してみますが」

「ああ、いい、いい、ごめんね彼方ちゃん。出来れば此処の料理を食べさせたかったんだけど」

「いえいえ、気にしないで下さい」


そうして他の店に向かおうと、離れようとした所で、


「カナタ様!」


私を呼ぶ声に足を止める。

呼ばれた方に目を向けると、そこに居たのは御馴染みの商人さん。

えーと、名前はデーブさんだったかな。すっごく痩せてるんだけどね。

あっ、思い出した、ディアールってデーブさんの店だ。町にお越しの際はお立ち寄り下さいとか前に言われた事あったよ、すっかり忘れてた。


「デーブさんお久し振りです」

「はい、お久し振りです。カナタ様お食事はお済ですか?」

「いえ、これからですよ」

「それならどうぞ当店で、歓迎しますよ」

「えっと、でも一時間待ちなんですよね?一緒の方と相談して他に行こうかと……」

「いえいえ!カナタ様なら直ぐに席を御用意致します!VIP席が空いていますので、どうぞ!お連れの方もどうぞご一緒に」

「って言ってますけどどうします?」

「……カナタ様、ディアールの店長とお知り合いなんですか?それもカナタ様が上の立場みたいですけど……」

「いいじゃんいいじゃん、直ぐに食わせてくれるってんだから。VIP席とかすげえ楽しみなんだけど」


勇者の言葉や、そろそろ周りの目が気になって来た事もあり、デーブさんの招待を受ける事になった。

VIP席は広く、それでいて豪華な個室で、そこに所狭しと料理が並べられていく。

その料理はオムライス、ハンバーグ、ピザ、唐揚げ、カレー、プリン、アイスと前の世界の料理ばかりで、高級店っぽく無いファミレスにありそうな料理ばかりだった。

まあ、わかると思うが、全部私が教えたメニューだ。色々持ってくる品物に便宜を図って貰う替わりに、料理のレシピやマヨネーズやケチャップ等の作り方、デザートのレシピ等を教えてあげた。

おかげで繁盛していますとかお礼を言われた事もあるけど、こんなのがあれ程人気になるとは思ってもみなかった。


「私の店が潰れず、ここまで大きくなれたのはカナタ様のおかげです。今日は存分にお召し上がり下さい」


いや、太っちゃいそうだから、そんなに要らないかな。


「なんだ、この店彼方ちゃんが料理教えてたんだ?日本の料理出してくれるからびっくりさせようと思ってたのに」


いや気付けよ、一品とかならまだしも、ここまで一緒だったら日本から来た奴が教えたって直ぐわかるだろ。あそこまで人気なんだったら、この世界では珍しいんだろうし。


料理は美味しかったけど、元々私がデーブさんに便宜を図ってもらっていたのは食材や調味料で、自分で作った物と殆ど同じ味だったので、殆ど感動は無かった。

デザートの方はちょっと種類が増えていたので、中々楽しめたけど。

他の四人は凄く喜んでいた。特に勇者以外の三人は。

是非、王都にあるお店にも教えて下さい!とお願いされる程だ。

デーブさんに教えても良いかどうか聞いたら、知り合いの商人が王都に店を持っているので、出来ればその商人に教えて欲しいとお願いされた。

私としてはどうでも良いので、了承しといた。


そして、その日は高級宿に泊まり、また王都に向けて出発する。

それから高速馬車で五日、私達は王都に到着する。


ハルニア王国、王都フォルト。

三つある人間の国の中で最大の国で、魔族の領域への最前線でもあるハルニア王国の中心の街。

ここがもし落とされていれば、人間は滅びに向かっていたであろうと言われる。

一年前になんとか魔族の侵攻を撃退し、今はある程度復興してきている。


「ちょこちょこ崩れてたりしてるね」

「そうですね、外周部は被害も大きかったですし、まだまだ手が足りてない部分があります」


まあ、でも思ったより活気あるね。


「それでは、先ずは王宮に参りましょう。連絡はしてありますので」

「王宮かぁ、もしかして王様に謁見とかあるの?」

「はい、勿論です」


ええー、やだなぁ。来たのちょっと後悔してきたかも。

魔族や魔物と戦うより、嫌なんだけど。


なんて言ってる内にあれよあれよと歩みも話も進んでいき、やってきました王の間。

一応女騎士用の正装に着替えさせられて(ドレスとかじゃなくて良かった)、お呼びが掛かる。

入ると、ずらっと偉そうなおっさん達が横に並び、前にはこれぞ騎士という感じの騎士を従えた王様。

王様は三十代位の偉丈夫だった。椅子に座る事なく立って私を迎えてくれる。


「聖弓の勇者よ、こちらの都合で呼び出して置きながら、失敗し苦労を掛けた事真にすまない」


最初に謝ってくれた。なんか周りのおっさん達がガヤガヤしてるけど、王が頭を下げるなど問題です!という感じだろうか?

王様は悪い人では無い様だ。……ちょろいな私とか言わないで。

別に謝ってくれた事だけじゃないよ?これでも人を見る目はあるつもりだ。つもりだけど。


「だが、そんな我々の為にそなたは戦ってくれると聞いている。真に嬉しく思う」


いや、正確には聖弓の勇者として王都に行く事は了承したけど、戦う事は了承してないけどね。

まあ、戦うけど。


「こちらでも出来るだけの事はする。我々をどうか助けて欲しい」


うん、私も出来るだけの事はするよ。


そんな感じで、謁見は思ったより早く済んだ。王様が話すのを、ずっと膝を着いて頭を下げて聞くだけで返答とかしなくて良かったので楽だった。


なのに、今まだ王様と一緒に居る不思議。

謁見が終わった後、王の間を出て次はパーティーメンバーを紹介しますとか言われて連れてこられた先は、執務室っぽい部屋だった。そしてそこには何故か王様が。えっ、パーティーメンバー王様?


「楽にしてくれ聖弓の勇者、いやカナタよ」

「……」

「そうだぞ気にすんなって、お前救世主の一人なんだからさ。ある意味こいつより偉いって」


私はどう対応するべきか悩みつつも、横に居る王様の前なのに態度が悪い、軽い男に目を向ける。

軽さ的に聖剣の勇者っぽいかも知れないけど実は違う。

なんとこの男この国の騎士団長らしい。歳は王様と同じ位、王様以上の立派な身体に見た目的には立派な騎士に見える。

……この国大丈夫だろうか?

と一瞬思うけど、よく見るとこの男さっきの謁見の時王様の隣に立ってた騎士だ。余りにも印象が違うから直ぐにわからなかった。

多分表ではちゃんとしてるんだろう。で、裏ではこんな感じ。

どうせ、王様と幼馴染とか親友とかそういう設定に違いない。


「先ほど謝ったが、もう一つ謝らなければならない事があり、そなたのパーティーメンバーを紹介する前に話をしようと此処に来てもらった」

「ごめんねー、ほんと」


まだあんの?

それ程恨んでないけど、何も思ってない訳じゃないよ?


「その事とはそなたのパーティーメンバーの事だ。聖剣の勇者のパーティーも聖槍の勇者のパーティーもこの国、いや人間の中で最強クラスのメンバーが揃えられているが、そなたのパーティーに関しては問題児ばかりになっている」

「まあ、結構面白い奴等だけどね」


問題児?何それ?


「そなたは死んだと思われていた。それで一度集められていたパーティーメンバー達は、この国の有力の者達に雇われたり、元の職場に戻ったりしていてな、今回生きている事がわかってもその者達は放そうとしない。そなたはまだ実績が無いとか、魔族の侵攻の時何もしていない等難癖をつけてきてな、そいつらが国の上層部に位置する事もあり無理矢理連れてくる訳にも行かなかった」

「マジあいつ等面倒なんだよねぇ」


うーん、自分の身が可愛くて強い奴を手放せないとか、職場の優秀な者をどんな奴かわからないのに渡したくないとか、そんな感じ?

というか、さっきから騎士団長の相槌が微妙にウザい。

ん?強い奴が駄目になったのはわかったけど、何でそれで問題児?


「本来のメンバーは騎士団、宮廷魔道士、冒険者から一名ずつだったのだが、それなら代わりの者を出せと言った所問題のある者を出してきてな」

「あっ、騎士団の一人に関しては前回の王都侵攻の時に死んじゃったんだよね」

「一応宮廷魔道士、冒険者の代わりの者はギフト持ちではある為に優秀な者達ではあるのだが。そしてそれをこの馬鹿が了承した」

「あいつらやりようによってはやれると思うんだよねぇ。中途半端に優秀な奴より、癖はあるけどマシだと思ってね。それに面白そうだし」


絶対最後のが本音だと思う。この野郎、苦労するの私だぞ。

でも、何か思ったより余裕あるなぁ。話に聞いたのだと人間滅亡の瀬戸際!?って感じだったのに。

人間同士で足引っ張ったり、面白そうを理由に選んだり、なんか想像してたのと違う。


「という訳で、そなたにはすまないと思うが、変更は出来ない。そなた個人でパーティーメンバーを集める事は問題無いので、無理だと思ったら遠慮無くやってくれ。それでは、人間の未来を頼む」

「頑張ってねぇ」


王様と騎士団長が出て行った。

私にも再び案内の人が来てまた別の場所に行く。


はあ、どんどん面倒臭くなってる気がする。

ロル村に帰りたいなぁ。



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