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初めて他の町に行く私、村を出る時はちょっとシリアス気味になっていたけど、実は少し楽しみだったりもする。

移動は馬車だ。でも魔法で補助をしているらしく自動車並みの速度で走る。その上魔法で振動も緩和している。魔法が万能過ぎる。

御者はニキがしている。

私は、リーリエと前の世界での私の事を話したり、この世界の事を聞いたり、の間に勇者が話に入ってきて前の世界の勇者の事やこの世界での活躍を話してくる。

女同士の会話に入ってくるなんて凄いなぁ……勇者が御者やれば良いのに。

聖弓の勇者として王都に行く事を約束した時から、セラフィーの態度も緩和されそこそこ仲良くなった。

まあ、あんまり好きなタイプじゃないのでそこそこでしかないけど。

それでも勇者よりは断然マシである。呼び名が一人だけ勇者のままだと言う事でもわかるだろう。自分も勇者なのにね。


「反応がありました。こちらに向かって来ます。小鬼ゴブリンの様ですね」


次の街まで半分程進んだ所で、リーリエが声を上げる。索敵の結界を馬車の周囲に張り巡らしていて、それに反応があったらしい。

本当リーリエは何でも出来るな。


「彼方様、村では狩りをされていた様ですし、一度腕前を見せて頂けませんか?」


要するに、小鬼を私一人で倒せと言う事らしい。

まあ、竜の時は終始観戦してたし、道中も全く戦わなかったから仕方無いかもしれない。

了解の返事をして止まった馬車から降りる。

聖弓を手に持ち、向かって来る小鬼を見据える。

小鬼は全部で三体、粗末な服と棍棒の様な物を持っている。


私はある程度小鬼が近付いてきた所で、聖弓を構える。

そして、小鬼が範囲に入った所で、接近し聖弓を振り被り振り下ろす。


「「「「え?」」」」


聖弓を喰らった小鬼の頭が陥没し即死する。残り二匹は私の動きが見えなかった様で混乱し、一匹目が倒れた所で私に気付くが既に遅く、私が振るう聖弓によってどちらも直ぐに倒された。

小鬼には使える素材等も無く、持っていた物も金になりそうに無いので放っといて馬車に帰る。

そこにはポカンと口を開けた四人が突っ立っていた。そういえばさっき初めてニキの声を聞いたかもしれない。


「こんな感じかな」

「……あの彼方様、それは聖弓ですよね?」

「だってこれ弦が無いし」


そうこの聖弓は弦が無い。当然私にとってこれは弓じゃない、ただの白い曲がった棒だ。

村に着くまでは木の棒よりマシだろうと思って武器にして、村に着いたら捨てようかと思ったけど、物凄く頑丈でしなりも良いので今は薙刀みたいに使っている。


「……聖弓は魔力によって、弦と矢が作れるんです」

「へえ、そうなんだ。……あっ、本当だ、出来た」


言われた様に矢を持ちつつ弓を引くように想像しながら魔力を込めると白く輝く弦と矢が生まれた。指を放すと勢い良く魔力の矢が飛んでいく。

うわぁ、これは便利だ。消費する魔力もそれ程でも無いみたいだし、結構連続で射れそう。


「聖弓って凄いんだね、頑丈で攻撃力もあるのに、遠距離も攻撃出来るなんて」

「……聖弓で殴って戦った方は、貴女が初めてだと思います」

「えっ、でも魔力込めると更に強くなるし、そんじょそこらの棍棒メイス戦鎚ハンマーには負けないよ?」

「棍棒や戦鎚と比較しないで下さい」


ええー、と言う私の不満を無視して馬車に戻る皆。全員呆れた顔をしてた。

でも他二つが剣と槍だとしたら、斬撃、貫通、打撃とバランス良いと思うんだけど、射撃だと貫通属性になっちゃうし槍と被っちゃう。

なんて、ゲームに影響されすぎかな?

まあ、私でも弓で殴るのは非常識だと判ってるよ。

二日前までこれが弓だって事を知らなかっただけで。

でも、どうしようかな?今から弓使いに転向するのもなぁ。

能力的には問題無いのかも知れないけど、肝心の弓の腕がなぁ。

村でも狩りをすると決めた時、弓とか貸してくれたけど、結局聖弓での棒術、薙刀術の方が私には向いてたしなぁ。


取り敢えず、結論を出すのは置いといて馬車に戻り再出発した。

暫くはちょっと微妙な空気が流れていたけど、直ぐに元に戻り色々話しながら馬車は進む。

そして本来二日掛かる道程を、数時間に縮めてこの世界でロル村以外初めての町に着いた。


ニードの町、王都等と比べれば当然小さいが、辺境では最も大きな町らしい。

この町からロル村にやって来る商人とかも居たので、話に聞いた事はある。

そういえば、よく来てくれる商人に欲しい物を持ってきてもらう代わりに色々話をして上げたけど、彼は元気にしてるだろうか?


「先ずは冒険者ギルドに行きます」

「冒険者ギルド?」

「はい、私達聖剣の勇者パーティーも登録しているのですが、ちょっと報告する事がありますので」

「ふーん、私も登録とか出来る?」

「出来ますよ。ただ、王都に行けば聖弓の勇者のパーティーメンバーを紹介されると思います。パーティーを組んだ後でも遅くは無いかと」

「へえ、リーリエ達もそういう感じで聖剣の勇者パーティーになったの?」

「はい、そうです」


そっかぁ、どおりで勇者を大事にしつつも義務感ありまくりなんだなぁ。最初はハーレムパーティーだと思ったのに一人も勇者の事が男として好きじゃないみたいだし。


「そういえば、彼方様は御自分のスキル等を把握されてますか?」

「スキル?ううん」

「そうですか、それなら冒険者ギルドには能力鑑定の魔道具がありますので、一度やっておくといいですよ」

「うん、わかった」


流石、剣と魔法のファンタジーな異世界、能力鑑定とかスキルとかあるらしい。村ではそんなの誰も気にしてなかったけど。

スキルってのは集中したり、視力が上がったりする奴だろう。さて、私に弓のスキルはあるんだろうか?


冒険者ギルドに着いた。勇者とセラフィーとニキが報告に行き、リーリエが私に付いて来てくれた。


「この方に能力鑑定をお願いします」

「はい、それでは千エルをお願いします」

「お金掛かるの?」

「はい、でも気にしなくて良いですよ、私が払いますから」


1E1円位だから一回千円かぁ、多分もう受けないだろうなぁ。


「はい、それでは此処に手を置いて下さい」


出されたのは、IHヒーターみたいなもの。手置いたら加熱とかしないよね?

そんな馬鹿な事を考えつつ魔道具に手を置く。


「はい、ではこれが結果です」


手を置いたら、その魔道具からカードが出て来る。

これで、手形とか取れてたら面白いんだけど。

手渡されたカードに書かれたのは、当然手形等では無かった。


舞弦 彼方

聖弓の勇者

生命力 5

魔力  7

腕力  4

体力  3

敏捷  5

器用  6

知力  7

精神  6


スキル 棒術 舞踊 生活魔法 魔力操作 察知 集中 鷹の眼 疾駆 料理 裁縫 細工

ギフト 化身の舞


ふむふむ……よくわからん。


「ねえ、この生命力とかの数字は何?」

「これはその項目の強さですね。1が弱く、数が上がる毎に強くなります。人の過去最高が10です」


ほう、ならこれは強い……のか?

やっぱりよくわからん。

棒術は聖弓で殴って戦ってたからでしょ、やっぱり弓術無かった。

舞踊は前の世界に居たときから踊るの好きだからね、舞踊って感じの踊りじゃないけどね、舞踊ダンスって読む感じ?

生活魔法と魔力操作はこっちで魔法の存在に気付いてから頑張って使えるようになった。生活魔法はまじで便利。

察知、集中、鷹の眼、疾駆は狩りやってたらなんとなく出来る様になった。聖弓の勇者ならではの才能かな?疾駆は微妙だけど。

料理はまあ一人暮らしだったしね。

裁縫、細工は元々マフラー位は編めてたけど、こっちに来てから物凄く頑張った。

郷に入っては郷に従えとは言うし、臨む所ではあるけれど、妥協出来ない事もあるのだ。ブラとか。


「スキルはなんとなくわかるから良いとして、ギフトって?」

「ギフトは神に与えられたと言われる、その人だけの特殊な技能です。千人に一人位の割合でギフト持ちは居ます。勇者様は全員ギフト持ちです」

「ほうほう、化身の舞ってのは?」

「すみません、ギフトに関してはその人だけと言うのもあり、情報が少ないのです。一応過去を遡れば同じギフトを持つ者も居るのですが、化身の舞は聞いた事がありません」


化身の舞ねぇ、踊るのは好きだけど、化身、化身……

というか私のギフトなんだったら、私には使い方とかわかるのが普通なんじゃないかな?

それに聖弓の勇者っぽくないギフトだよね、どんな舞かわからないけど舞いながら弓を射ろと?

もっと必中とかそんな判り易いのが良かった。

うーん、まあいいや。それ程困ってないし。


「リーリエの能力とか教えてくれない?」

「良いですけど、あまり気軽に聞こうとしたり、教えたりしない方が良いですよ。本来信頼出来るパーティーメンバーにのみ教えたりするものですから」


ああ、そうだよね。得意な事も弱点も全部わかっちゃうもんね。


「今回は私も見させて貰いましたから、私も教えますけど。はい、どうぞ」


リーリエ=エルライト

万魔の聖女

生命力 5

魔力  9

腕力  4

体力  5

敏捷  4

器用  6

知力  8

精神  8


スキル 杖術 属性魔法(火、水、風、土、雷、光) 付与魔法(強化、弱化、属性) 神聖魔法(治癒、浄化) 時空魔法(転移、収納、結界) 生活魔法 魔力操作 瞑想 祈祷

ギフト 万魔


……うわぁ、チートっぽいなぁ。多分万魔ってのは魔法が何でも使えるとかそんな感じなんだろう。闇とかが無いから全部じゃないかも知れないけど。魔なのに聖女とはこれいかに。


「凄いね」

「いえいえ、私より凄い方なんて沢山いますよ」


事実なのか謙遜なのか。

謙遜であって欲しいなぁ、じゃないと勇者とか役に立たない気がする。それとも他二人はもっと能力が高いのか、勇者の強さは聖なる武器を扱えるというだけなのか。


「さて、報告も済んだようですし、ご飯を食べて宿に向かいましょうか」


三人と合流し、冒険者ギルドを出る。


「メシならディアールにしようぜ。あそこマジで美味いんだ」

「いいですね」


ディアール?何か聞いた事あるな。


「彼方ちゃんも楽しみにしてな、びっくりするぜ?」


うーん、どっかで聞いた様な……


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