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サッカー小僧

(yahooブログ掲載中)

皐月って言葉は、「サ」耕すという古語に、

稲穂を植える月のツキという言葉を組み合わせて

サツキになったんだそうだ。


サにあてられた漢字の皐は、

神様に捧げる稲穂を指す。


皐月。


常盤東高へ入学してから、2ヶ月が経った。

クラスメイトの数人とは、

たわい無い日和見話をする仲になって、

登下校を一緒につるむ仲間も出来た。


俺と同様、他の連中もクラス内で、

自分自身の存在価値をしたたかに定着させている様子だ。

揉め事も無く、平穏無事に学校生活が繰り返されている。


ように見えてはいるんだが・・・。


ボールを追う右足に雑草が絡まった。


くっそ!


右足に馬鹿力を集中させて駆け足のまま引きちぎる。



サッカーグラウンドの芝生とは別に新芽の雑草が伸び放題になってるのは何故だ?

ったくよ。サッカー部、グラウンド整備しろっての!!



「博史!決めろ!!」


「言うぜ!雅也!!」


ゴール前左サイドにいた、雅也が逆サイド後方の俺へ向けてボールを蹴った。


それを胸で受ける。


一度落としたボールは地面をバウンド、


雅也に集中していた2人のガードは、俺のガードに間に合う距離じゃない。


気づいた右サイドの穴にキーパーが全力で走っている。


行くぜ!!


「ピピーッ!ゴール!」


全身汗だくの体育教官がホイッスルを鳴らす。


「6-3で赤の勝ちだな。片付けあるから早めに終わるぞー!全員集合しろ!!」


「すっげー!今のありかよ。あの角度で蹴るか?普通?

ロングシュートって漫画の世界だけじゃねーのかよ」


「ねえわ。前半戦、伊藤の奴、サッカー部を連続3人抜きだぜ。」


「サッカー部っていたのか?」


外野!!空気嫁よ。お前らの声のボリュームには自重ってもんが無いのか!

俺の背中にサッカー部の視線が突き刺さリまくってる件どうしてくれる?



「ほら!無駄口たたいてないで、走れよ!!集合だぞ!!さっさとしろ!」


女子か?と聞き違う程に甲高い声。


体育教官の隣でだらだらと歩く俺達に吼えたのは、

チビで眼鏡の体育委員だ。整列の挨拶を体育委員が勤める。


「全員あつまったか?」


高圧的な物言い。可愛くない男だぜ。

それでもコイツの嫌味は流せる方だ。俺も、クラスメイト達も。


何せ奴は今時、ど近眼の眼鏡に黒髪の七三分け身長150センチ、見たまんま出遅れ漂う昭和だったから、

言葉にトゲがあろうがなかろうが俺達に敗北感を与えない特殊スペックが奴の毒を全て許せている。


で、今日俺は奴に一つ借りを作った。


「気をつけ!!礼!!」


整列した全員が対面の体育教師と体育委員に頭を下げる。


っていうか眼鏡!お前何でそっち側にいるんだよ!!


解散の言葉と同時に、ゼッケンを脱いで回収担当兼眼鏡に渡すと

各々が担当する持ち場へ散って行った。


汗だくで早く着替えたい体育教官は、ニ三言眼鏡に告げて教員室へ歩いていく。



「体育委員。俺のも頼むな。さっきは助かった。」


俺は赤いゼッケンを脱ぐとそれを手渡す瞬間に眼鏡の耳元で囁いた。


「何が?僕が君を助けたの?」


お前も空気嫁無い奴だな。声がでかいっ。


「ああ。いい。いいわ。別に。気にすんな。そうだ。

お前に昼ジュースおごってやるよ。お前、いつもコーヒー牛乳だろ?」


「え?どうして?貰えるものなら貰っておくけど。見返りは何?」


「んなもんねーよ!面倒くせーな、お前!」


驚くことか。何だその見開いた目は?


「僕が、コーヒー牛乳飲むのなんで知ってるの?」


「見たからに決まってんだろ。」


無言のままでいる眼鏡の両手に俺の後ろに並んでいたクラスメイトが、

次から次へと容赦なくゼッケンを載せていく。

うず高くなったゼッケンで、眼鏡の顔が見えなくなったところで眼鏡が言った。


「じゃ、貰っとく。」


何思考してたんだ?お前。


「ああ。昼な!」



どうせ見えていないのだろうが、眼鏡に手を振ると、

俺の担当、ボール回収をする隣の第一グラウンドへ走った。





あれ?


眼鏡って名前なんだっけ?



体育委員・・・委員名だよな・・・。


んー?思い出せない・・・。



眼鏡なんだけどな~。


まいっか!とりあえずは、眼鏡ってことで!!!

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