8話≫〔統合版〕
修正版
修正版→全体の表現や描写を詳しく書き、肉付けしました。
よろしくお願いします。
22〜24話の統合
俺がこの世界で目を覚ましてから11日目、
昨日の疲れも取れた所で、
今日はこの森で新しく遭遇した[斧角兎]以外のもう1体の魔物について説明しようと思う。
ゴブリンと芋虫が棲息する地域以外で遭遇した魔物は[斧角兎]ともう1種類、
現在目の前にいる、[斧角兎]に非常に酷似した身体的特徴を持つ個体。
[剣角熊]の派生種、[剣角熊]希少種である。
体長は今までで遭遇してきた魔物の中でも最大の目測2.5m。
俺が見上げる大きさの魔物は初めて遭遇したので、遭遇した時は本能がめちゃくちゃに警鐘を鳴らしつづけていた。
思わず生きるのを諦め、死にたくなりかけた程だ。
額からそびえている剣はアックスホーンラビットの斧と同じように磨かれたように輝きをはなっていて、
やはりと言うべきか、重力を完全に無視たバランスだった。
だがこうして現在面と向かって対峙しているのはなぜかなのか、それは先日のアックスホーンラビット同様、俺を完全にロックオンしているからだ。
どうやらこの魔物達は俺の魔力の探知範囲よりも広範囲に渡る、何かしらの探知手段を持っていると思われる。この場合考えられるのは嗅覚だが、そこまで解析で分かるわけではない。
今の状況は、背を向けたら最後、その額にそびえる立派なブレードでいろんな所をスライスされてしまう、そんな状況。
ステータスを見た結果、ブレイドホーンベアーのレベルは25と表示されていて、しかも名前の横には初めて見る希少種という表示までついている。
これは明らかにやばい個体だ、
しかも前回のアックスホーンラビットよりも格上であり、レベルを基準に見てもレベル8の俺とは格が違いすぎる。
連日で激戦を演じなければいけないのは精神衛生上、すこぶるよろしくない。
敵とのレベル差は17もあり、絶対に前回よりも苦戦する筈だ…
できれば希少種でないブレイドホーンベアーと先に戦い、戦闘のパターンを把握してから望みたかった。
そしてブレイドホーンベアーの放つ雰囲気を感じ取り、こいつは絶対ボス級の魔物であると、そう確信した。
そして、ブレイドホーンベアーの額の角以外の大きな特徴、それははち切れんばかりに隆起した4本の腕であり、体毛は赤く全身を赤い毛皮が覆っている。
そしてバランスを無視して額から生えた剣角は1.5m程と規格外で、
なんでそれでバランス取れるんですか?と話が通じるならば猛烈に聞きたい。
これもファンタジーなのだろうか。
生き残れる気がしない。
どうするか…
やはり【迷いの大森林】という魔境には近づくべきではなかったのだろうか。
いまさらだがそんな思考が脳裏をよぎる。
ここで生き残れたらおとなしくゴブリンを探しながらゆっくりと慎重に戦闘経験を積もうか…
だがそれをするにも、まずはこいつを倒して生き残らなければならない…
限られたスキル、限られた戦舞技、
限られた戦術。
特にブレイドホーンベアーにダメージが通る可能性のあるものは、戦舞技だ。
通じると思える戦舞技は今の所、蒼と付く2つだけ。
これが通じなければもう他の戦舞技は使えない。
そうなったらもう詰みだ…
俺は加護さえくれない神に祈り、
ブレイドホーンベアーと対峙した。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
正面に対峙したブレイドホーンベアーが咆哮をあげカナデはその咆哮に乗る見た事の無い魔力を感知した。
カナデの見た事が無いその咆哮はスキルは【強者の咆哮】。
効果は高確率で自分より低レベルの敵を怯ませる事である。
(…なっ…まずい!?)
声に乗って拡散する魔力に気がつき、咄嗟に反応し耳を塞ごうとするが、耳を塞ぐだけでこの咆哮系統スキルは防ぐ事は出来ないのである。
それは声に載せて飛ばした魔力を自分の周囲にいる相手の体内にあるマナ、つまり魔力に干渉させ、動きを鈍らせたり、身体を動かせなくさせたりするハッキングである。
「GUGEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!」
木々が震え、地面に咆哮が浸透していく、
木々で羽を休めていた鳥が一斉に飛び立ち辺りを騒がす。
周囲の魔物や小動物も一目散に逃げ出し、俺の筋肉は震えあがり動きが一瞬であるが止まってしまった。
(…まずっ!?…クッ!!)
もちろん俺の致命的な硬直を逃さず突進してきたブレイドホーンベアーは2本の右腕を薙ぎ払う事で俺を切り裂こうとしてくる。
「…ぐぁっ!…うッ!…ガハッ……」
ギリギリのタイミングで剣を抜き腹でガードする事に成功する、
だが、衝撃をを殺す事など今の俺に出来る筈がなく、もろに衝撃を受けることとなり横に5m以上も薙ぎ払われ、弾き飛ばされた先にあった木が大きく陥没した。
俺はその木に受け身も取れずにめり込み、
ガッ!!!バキバキッ、!!
嫌な音を残してズルズルと地面に落ちた。
骨折が増えていき身体の動きが阻害されていき、次第に痛みで自由がきかなくなってくる。
この身体で目が覚めてから自然治癒の速度は上がっているものの骨折が一瞬で治るような身体では無い。
よって、
(……やば……しぬ……)
と、なるわけだ。
ブレイドホーンベアーは既に勝負はついたと言わんばかりに余裕綽綽と俺に接近している。
自分との実力の差を本能で感じているかのようだが、その油断が今はありがたいが、意識が薄れていき自分に広がる世界は暗くなってきた…
俺は薄れゆく意識の中、手をポーチに伸ばし回復薬を探す。
そして意識が切れる前に回復薬を取り出す事が出来た。
それを一気に飲み干せば、
身体が軽くなり痛みがすっと引いていくのと並行して沈みかけていた意識が無理やり浮上した。
流石に全ての傷や骨折を治す効果までは持っていないタイプの回復薬か、この世界の回復薬がこの程度の回復量なのかは分からないが、身体が随分と楽になり動けるようになっただけマシと言う事にしておこう。
少しづつ近づいてくるブレイドホーンベアーに、
俺はスキル【弱点解析】を使用する。
ブレードホーンベアーの身体の中で赤く点滅する部位は…
ほう…どうやらこのタイプの魔物は剣角の付け根が弱点なのかもしれない。
そう、その光った場所とはアックスホーンラビットと同じく額から生える剣角の付け根の部分が赤く光っていたのだ。
だが相手の体長は2mをゆうに越えていて立ち上がり2足歩行をしているブレイドホーンベアーの剣角の付け根を確実に捉えて斬るのは難しい。
同じ高さに居ないといけないのだから難しいに決まっている。
だがブレードホーンベアーが6足歩行?になるのを待つ事は出来ない、魔物に対し持久戦をするのは馬鹿げているからだ、短期決戦に限る。
そこでふと思う。
同じ高さに居ないなら行けばいいじゃないか。
そう、周りにはブレードホーンベアーと同じ高さの木が沢山あるじゃないか…
前の世界では出来なかったが、この世界での身体能力だったら可能では無いのか?
試してみる価値はあるかもしれない、俺は直ぐにブレードホーンベアーの懐に入って足を斬りつけた後にバックステップで距離をとる。
もちろんそれと並行してブレードホーンベアーを地に伏せさせると言うのも考えたが、
その時に4本の腕がどう動くか分からなかった為に直ぐに頭から除外する。
だったら賭けるしかない…
俺だって異世界物の主人公には憧れていた、
命を掛けて逆境から勝利をもぎ取る主人公を。
空中で無防備の状態を攻撃されるのを避けるために、ブレードホーンベアーの死角から近くの木に飛び移る。
そして空中から背後から剣角の付け根を狙い怯んだ所でトドメを刺す。
無謀かもしれないがこれで行くとする。
俺はこの世界で目が覚めてから木登りが得意になった。
なんせこの世界で目が覚めてから毎日木の上で寝ているのだから…
そうと決まれば動き出すのには数秒とかからなかった。
念の為にもう1本の回復薬を飲み干し、
空の小瓶をブレイドホーンベアーに向かって投げつける。
悠々綽綽と歩くブレイドホーンベアーは腕を使って迫る小瓶を砕くが、その瞬間に俺は立ち上がり戦舞技を発動する。
「…【蒼斜一閃】」
俺は一歩踏み込む。
同時に抜き身の剣が青い閃光を放ち自身の身体が不可視の力に押し出されて、
ブレイドホーンベアーの腹を切り裂く。
ブレイドホーンベアーの背後に回り終えた俺はその勢いを殺さずに、すぐ跳躍し、近くの木の幹に足をかける。
そして木の幹を思い切り踏み切り、
空中にその身を踊り出した。
それと同時に最初に飲んだ回復薬の空の小瓶を地面に投げつける。
ガッ…ゴロッ……
腹を片手で抑え怒りに唸るブレイドホーンベアーは咄嗟に小さな音を広い、
音のした方に顔を向けた。
「グギグァァァァァァア!!!!」
怒りに身を任せたブレードホーンベアーの視界は既に怒りに染まり、視野は極限まで狭くなっている。
計算され作り出されたブレードホーンベアーの圧倒的な隙を俺は逃さない。
地面に頭を向けた俺はその状態で無理やり剣を構える。
そしていく度も死線を共に潜り抜けた戦舞技を放った。
「…【蒼斜一閃】!!!」
身体のバランスの悪さも剣のブレも、戦舞技の不可視の力が補正し剣がぶれる事は無い。
そしてスキル【戦舞技補正:強】の補正も発動しているのだろう、剣に威力と速度も乗った。
地上に足をつけているほどではないが、
空中にしてはあり得ないほどに青い閃光がきらめき剣が動き出す。
不可視の力がいつもと変わらない軌道をトレースして、未だ横を向き小瓶の落ちた方を見るブレイドホーンベアーの剣角の付け根に青い閃光が吸い込まれていった。
1.5m程もある立派な剣角が空に舞い上がり、
俺の足が地面に触れると同時にその剣角は地に深く突き刺さった。
俺は腕に残る確かな感触に剣を握る力を強めた。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
戦舞技ー【蒼斜一閃】を放ち、
青い軌跡を描きながら無理やり身体の向きを反転させ地に足を着ける。
ここまでが戦舞技の軌道で成された人外の動きに無理やり身体の動きを追加して動いた結果であった。
だがまだ終わっていない。
「ギャァァァァァァァァ!!!!!」
後ろで悲鳴をあげるブレイドホーンベアーの
先の咆哮とは明らかに色の違うその悲鳴は、
今までで高みに居た強者故の痛みを知らぬ悲痛の叫びであった。
だが怒りを爆発させたブレイドホーンベアーは俺の叩き出した予測の域を超える事は無かった。
4本の腕を狂った様に振り回し、殺意に満ちた目で俺を捉えながら正に鬼の様な形相で突進してくる。
それは魔物の使う戦舞技を発動する訳でもなく、知恵を働かせる訳でもなく、ただ殺意だけをぶつけてくる怒りに身を任せただけの猛獣であった。
俺は少し落胆した。
知能はある様に見えたし、それを十全に発揮すれば俺は今のように順調に戦いを進める事など出来なかったであろうと。
俺をいたぶろうとしていた事からも知能がある事は伺えた、なのに今は無軌道にただ腕を振り回すだけの只の猛獣に成り果てている。
だが、実際はこれこそが本来の姿であり、
たとえお互いに知能があろうと、そこには理性がある者と無い者で隔絶とした差が生まれるのである。
俺は剣を両手で持ち正面に構える。
不意に頭に浮かぶ文字…
(戦舞技ー【一刃両断】)
あまりに予想外の事に驚くが、
この状況で新たな戦舞技が頭に浮かぶというあまりの都合の良さに意図せず口角が緩み口の端が釣り上がる。
戦舞技の概要は頭に既に流れ込んできた。
軌道を確認する、
身体の位置を調整する、
息をゆっくりと吐き、
ゆっくりと吸う。
そしてブレードホーンベアーの死をゆっくりと宣告をするかの様に、声を上げた。
「…お前を糧に強くなる……【一刃両断】ッ!!」
真上から振り下ろされる剣は剣角を失った哀れな魔物の頭部に寸分たがわず吸い込まれ、
一瞬の間に強靭な生命力を持つ魔物という存在の命を絶った。
ブレイドホーンベアーから吸収出来た経験値は凄い量なのだろう。
前にも味わった身体から何度か溢れそうになる感覚がした事からレベルアップしたのかもしれない。
だがいつまでもここに留まると血の匂いを嗅ぎつけた他の魔物が寄ってくるかもしれないと考え、俺はこの場を後にした。
【SideOut】
『半人族[lv:10]』 :【剣士】/【戦舞技師】
雪埜 奏
必要経験値/規定経験値:631/1100
能力:【戦舞技補正:強】【鈍感:中】
new!【剣術補正:強】【魔力探知:中】
new!【体力補正:強】【解析の眼】
【弱点解析】new!【縛りの咆哮】
new!【下克上】
残存Point:[9]
加護:なし
称号:【魂を鎮める者】
経験値2000を手に入れました
[!]強敵打倒により経験値ボーナスが入ります。
300GET!
ボス級魔物討伐によりPointボーナス
3Point追加
※規定経験値を超えました。
2Levelupします。
必要経験値がresetされます。
【剣術補正:中】→【剣術補正:強】
【体力補正:中】→【体力補正:強】
new!【戦舞技師】
ジョブを取得しました。