89話≫〔修正版〕【白髪のギルド長】
よろしくお願いします。
小都市ウォルテッドに戻り、
直ぐに冒険者ギルドに直行する。
今はまだ昼で冒険者ギルドはそれなりに賑わっていたが、俺はその人ごみを乗り切り、
依頼達成を伝える為にエイラのいる受付まで行った。
「ようこそ、あ、カナデさん!もう依頼達成したんですか?で、でしたら討伐部位の毛皮を5枚で依頼達成となります!」
「あ、あぁ。じゃあこれで3件達成って事で良いのかな?」
俺はポーチからプレーンラビットの毛皮を15枚取り出してエイラに渡す。
「わわわっ。す、凄いですね!少々お待ちくだしゃい!……ふぇぇ………
…しょ、…少々お待ちくださぃ…いち、にい、さん、………
……はい!15枚ピッタリですね!Eランクの依頼3件達成になります!ギルドカードの情報を更新しますのでカードを預かっても良いですか?」
噛むのはもう癖なのだろうか、
なんて厄介な癖なんだろうか…ちょっと同情する。
ギルドカードを渡し少し待つと、
エイラが戻ってきてギルドカードを返された。
ギルドカードのEのマークの横には☆が3つ刻まれている。
3つ達成したから☆が3つなのだろうが?
偽造とかされないのかな…
試しにギルドカードの表面を触ってみるが☆のマークは凹凸など無く、
液晶に映る映像の様な変な感覚だった。
こう言う所だけオーバーテクノロジーってのは違和感が残るが…
これぞファンタジーというものなのか。
報酬で銀貨6枚=6000エルを受け取りポーチにしまい、
残りのカース・カーローとプレーンラビットの肉の素材を売る為に右端の素材買取の受付の前まで行く。
「ようこそ、冒険者ギルドウォルテッド支部へ。こちらは素材の買取カウンターとなっております。何か素材をお持ちでしたらこちらの台に置いてください。」
受付の女性の言葉通りに今日剥ぎ取った魔物の素材を台に乗せる。
「…えっ…し、少々お待ちください」
プレーンラビットの肉を置いた時は普通の反応だったのに カース・カーローの毛皮と肉と角を置いた途端に驚いた表情をした受付嬢の女性は素材を抱えて奥に走って行った。
尻尾が無かったし多分人族の女性だろう。
自分で言っておいてなんだが、尻尾を基準にするのはどうかと思う。
数分すると手ぶらの受付嬢の女性が少し慌てた様子で戻ってきた。
「ギルドマスターがお呼びです。3階の会議室までご同行お願い出来ますか?」
(…おおい、きな臭くなってきたぞ)
十中八九カース・カーローの背中にあった
【終わりの呪狂石】の事だろうと思い、
素直に頷いて受付嬢の後を歩き階段に向かう。
途中エイラが不安そうな顔をしていたけれどもまぁ大丈夫だろう。
3階の会議室と思われる部屋に着いて、
ソファーに座り待たされる事数分。
ちなみに案内してくれた受付嬢はここでしばしお待ちください。と言い残し部屋を出て行った。
コンコン…
控えめにドアが叩かれ、受付嬢の女性の声が聞こえた。
「ギルドマスターがいらっしやいました。」
受付嬢がドアがゆっくりと開き、ドアが開き切ったと同時に会議室に入ってきたのは白髪の男性。
歳は50くらいだろうか、
スーツを着ているが分厚い胸筋を隠し切る事が出来ず相当鍛えている事が伺える。
髭も綺麗に整えられていて清潔感があり、
表情は柔らかくとても好印象を抱かせる。
身長は1.8mはあるだろうか、
体格のせいもあるだろうが隣の受付嬢が子供に見える。
「よく来てくれた。ワシは冒険者ギルドウォルテッド支部のギルドマスターを務めるダインだ。君はカナデくんで良かったかな」
ギルドマスター、ダインさんは片手を俺に差し出してきた。
俺はそれに応えつつ無難な返事を返した。
「はい、Eランクの冒険者、カナデです。よろしくお願いします」
ダインさんの手を握り握手を交わす。
その直後。
身震いする様な危機を感じ取り全身を鳥肌が覆い尽くした。
ダインさんの体内の魔力が増大し俺に敵意をもって向けられたのだ。
俺は即座に戦闘体制に入り、
スキル【下克上】を発動。
握手を交わした状態のまま迎撃体制を整えた。
何処か1ミリでも動いたらギルドごと吹き飛ばす事ができる様に構え、本当に吹き飛ばす事ができる程の魔力の片鱗を辺りに放射する。
瞬間、会議室を俺の魔力と存在感が支配した。
【下克上】が発動したと言う事はギルドマスターのダインは俺に敵対行動を取るつもりがあり、尚且つ俺よりもレベルが高い。
俺は交わした手を強く握り全身の魔力の解放を徐々に強めながら威圧した。
途端、ダインさんが笑いはじめた。
ちなみに受付嬢の女性は部屋の隅で顔を青くさせていた。
存在は忘れていたが結果的に無事だったのだ。
仕方あるまい。
「ワッハッハッハ!許せ、冗談だ。
カース・カーローを倒したと言う冒険者の実力を試させてもらっただけだ。
まぁ想像の遥か上を行かれてワシも驚いたがの……」
「…ならもっと穏便な方法もあったでしょう。」
俺は呆れ半分怒り半分で問いかけた。
流石に冒険者ギルドで暴れるつもりは無いが今の状況は危ない。
野性が長いせいか、警戒心が強くなっている為直ぐに攻撃してしまいそうになる…
「だが今の反応でカナデがカース・カーローを倒した事は分かった。話すより早かったであろう」
まぁ確かにカース・カーローはEランクの冒険者の手には余る魔物だった。
釈然としないが、説明も面倒だっただろう
「まぁ、分かりました。それで話とはそのカース・カーローの事で良いんでしょう?」
「察しが早くて助かるな。
こいつは本当に【ラエリの平原】に居たんだな?」
ダインさんは俺の目を見つめて問いかけてきた。
嘘は言うな、そんな感情が伝わってくる。
もちろん嘘を言うメリットも無い。
正直に話す事にしよう。
「はい、そうです。」
「そうか…おい、シナモン、上に報告した後に【ラエリの平原】を1時立入禁止にしろ。今すぐにだ」
「…は、はいっ!」
ダインさんは未だ部屋の隅で青くなって居た受付嬢に指示を出した。
シナモンって言う名前なのか、
俺の感覚からしたら美味しそうな名前だ。
この世界にもシナモンはあるのだろうか。
そんな事を考えていると、
ダインさんの纏う雰囲気が変わるのを感じ取った。
「カナデ。やつの背中に結晶はあったか?」
奴と言うのはカース・カーローの事だろう。
そして結晶とは俺が破壊した物だろう。
「はい、破壊しましたが不味かったでしょうか」
「は、破壊しただと…いや、良い、最高の結果だ。良くやってくれた」
破壊の所の反応がやけに引っかかる。
破壊は難しい物なのだろうか、
確かに相当の強度はあった様に思えたが、
俺は語気を強め疑問に思った事を聞いた。
「あれはなんなんだ。正直に教えてくれないか?」
「…アレは厄災を呼び込む呪いの石だ。
出所はワシにもわからんし、昔から呪われた魔物の身体の何処かに埋まっているのだ。」
その後、一言二言交わした後に素材の買取価格の上乗せの言質を取り付ける事が出来た。
「放っておいたら被害は増えていた筈だ。礼をいう。」
俺はダインさんに軽く会釈したあと会議室を後にした。
去り際にダインをスキルで解析して見たところ、ダインのレベルは…
50だった。
1階に下りると素材買取のカウンターに戻っていた受付嬢の女性に声をかけられた。
確か…シナモンさん。
「あ、あの…素材の買取の続きをよろしいでしょうか…?」
…なんか怖がられているのは多分あのダインさんとの駆け引きのせいだろう。
ショックだ。
「カース・カーローの皮と呪い肉が1つカース・カーローの捻れ角が2つ、合計で100000エルになります…」
「え…ちょっと高くないですか?」
いくら稀にしか見ない呪われた魔物とはいえ、元の種としてのランクは低い魔物だ。
その素材がそんなに高くない買い取られる訳はないだろう。
「ギルドマスターから買取の上乗せで30000エル程…」
おぉ…
取り敢えずありがたく貰っておく事にした。
そしてカース・カーローを倒した事でギルドランクが上がりDランクに昇格した。
Cランクからは依頼を5件達成した後に昇格試験があるらしい。
俺はギルドの扉をくぐり宿に向けての道に足を伸ばした。
【SideOut】
『半人族[lv:26]』 :【剣士】/【戦舞技師】/【全属性魔術師】
雪埜 奏
必要経験値/規定経験値:450/2700
能力:【戦舞技補正:強】【鈍感:大】
【剣術補正:強】【魔力探知:中】【体力補正:強】
【解析の眼】【弱点解析】【縛りの咆哮】
【野生の本能】【下克上】【全属性魔法】
【魔力量増大:中】【隠密】【暗視】【魅了】
【砂塵の爪甲】【魔法操作:強】【思考加速】
【瞬間移動】【予測の眼】【血分体】【下位従属】
【魔法威力補正:中】【魔法命中率:中】
【超回復】【粘糸精製】【識字】
【色素調整】【剥ぎ取り補正:弱】
残存Point:[1]
加護:なし
所持金:[112100エル]
称号:【魂を鎮める者】




