7話≫〔統合版〕
修正版。
修正版→全体の表現や描写を詳しく書き、肉付けしました。
よろしくお願いします。
19〜21話の統合。
俺はつい最近、
偶然にも発見した常に夜である、
物理法則に正面から殴り込みをしかけている場所に、
スキル【解析の眼】での解析を試みた。
万物に、との解説があった事からも、空間にも使えるんじゃないか?と試してみた所。
やはり空間にも使用する事は出来た。
だが、ステータスは空間の名称しか、
表示されなかった。
その空間につけられた名称は、
常夜地帯
明らかに怪しい空間は、やはりと言うべきか、名前の通りに常に夜であった。
やはりあそこに入るのはやめておいた方がいいのかもしれない。
危険な匂いがプンプンするし、入った瞬間に昇天しそうだ。
取り敢えず常夜地帯とやらには絶対に踏み込まない事にして、
今日はギリギリの所で出現する魔物の種類を見てみる事にした。
いつまでもあの場所に留まり続けるのは得策では無いと判断したし、
俺の生活していた範囲はもしかしたら特定の魔物の生活範囲、つまり縄張りだったのではないか、そう推測したのだ。
数十分ほど捜索していると、
やはりと言うべきか、
予想はあっていたようだ。
俺はそこで新たな魔物に遭遇した。
どうやらゴブリンや芋虫とは違う縄張りに棲息する魔物のようで、
今までの俺の生活範囲では遭遇しなかったようだ。
その魔物は解析の結果、
[斧角兎]と言う名称の魔物のらしく、
レベルの表記は今まででおそらく最高であろう驚異のlv:20だった。
体調は1.2m程とそこまで巨大では無いが、
真っ白くふわふわの体毛を持ち、ここまでの説明ならちょっと大きめの兎だと思う人も多いかもしれない。
確かにここまでは平和そうに見えるが、ここからなのだ。
額からは金属製の斧形に近い物体が生えていて、
それは磨かれたように鋭く、
重力とバランスを無視した重厚な雰囲気を漂わせている。
これも魔力で片付けるのだろう、
[斧角兎]の全身からはゴブリンの5倍程の魔力が確認出来た。
そして腹部には黄色いY字のマークがあり、つぶらな瞳は全てが血を吸ったかの如く赤く染まり、鋭い牙を震わせながら唸っている。
スキル【|解析の眼《アナライズ・アイズ】はどうやら知りたいと思った物に意識を向け、
スキルの発動を念じると、
今のレベルだと大まかなステータスが表示されるらしい。
レベルは俺より13も高く、明らかに強そうだ。
勝てるか分からないが勝負、
だが既に[斧角兎]は俺を完全にロックオンしたのか俺の方を見て唸っている。
次の瞬間、
アックスホーンラビットの額の斧が赤くきらめいた。
「キシャアァァァァァァ!!」
(なっ!?赤い閃光!?まさか戦儛技の類かっ!?)
魔物が戦舞技なんて、
と油断した隙を突き確実に俺を額の斧で切り裂かんと[斧角兎]は迫る。
カナデは知る由もないが、この戦舞技は
戦舞技ー【斧突】と言われる斧を使った突進である。
(やはり戦舞技か!…
魔物も使う事が出来るのかっ!)
その戦舞技の軌道をすぐに冷静さを取り戻した頭は即座に分析する。
額の斧を使用して身体ごと突進させてぶつける技だと推測し、
直ぐに行動に移す。
俺も自身が持つ数少ない戦舞技から状況に最も適しているであろう戦舞技を選択、
発動し、対抗する。
「…【一閃】!!」
高速で突進するアックスホーンラビットの斧にあわせて剣を全力で横に一閃し、
迫るアックスホーンラビットの斧に剣をぶち当てる。
「……なっ!?…………グッ…カハッ……」
だが次の瞬間、
青い閃光を纏った剣は赤い閃光を纏う斧と接触した瞬間に、
その青い閃光は瞬き消え去った。
本来の半分の軌道しか刻まなかったその太刀筋は大きく弾かれ、
勢いを殺しきれなかった斧は俺を吹き飛ばし、大きく後方に飛ばされた。
「グガァァァァァァァァァァァアァ!!!!!」
[斧角兎]の閃光を纏った斧は満足げにその光を周囲に拡散させ、
勝利の雄たけびを上げた。
俺は衝撃を殺しきれず後ろに飛ばされ、
そこにあった木に受け身も取ることが出来ずに背中から思いっきりぶつかり、
衝撃で肺の息が吐き出され呼吸が出来なくなった。
(ガハッ…こ、これがレベル差かっ?
戦舞技もレベルに依存するのと言うのか?
それとも武器の質量の差なのか?
くそっ!わからない事が多すぎる!……)
今、俺の持つ手札、それは数個の戦舞技のみ。
その中で対抗できる戦舞技が分からない…
いま俺の使える戦舞技で一番強いのはなんだ?
俺は次第に朦朧としてくる意識の中で、
[斧角兎]が俺に向かってゆっくりと歩みを進めるのを見て、
覚めていく思考をフルに回転させて、
冷静に思考した。
【一閃】…
…違う。これはダメだ、通用しない。…
【一投刹那】…
これも違う、かなわない。……
…【刺突】…
だめだ…これでもない、今の状況で面に点の攻撃は効かない…
そうして、戦況は刻一刻とアックスホーンラビットに傾いてゆく
××××××××××××××××××××××××××××××××××
俺は今までで自分が使って来た戦舞技を頭に浮かべ続ける…
………ふと、脳裏によぎったのは蒼と名のつく1つの戦舞技。
……【蒼斜一閃】
…あぁ…これだ。
名が浮かんだ瞬間に、分かった。
これがこの状況の打開策になりうると。
今までで1番高い威力を誇ったのはこの戦舞技しかない、俺は賭ける事にした。
この戦舞技に。
ゴブリン5匹を纏めて葬る威力、
今の俺がもつ最高の技、
まだ力を入れると斧の衝撃を受けた胸に激痛が走り、
思いっきり後ろに弾かれ、
木にぶつかった時にはあばらも何本かいったようだ…
アックスホーンラビットの額の斧が赤い閃光を纏い、
俺にトドメを刺そうと再び、
同じように斧を俺に向け突進しようとしてくる。
戦舞技ー【斧突】
俺はもう油断する事はない。
(やっぱり魔物も戦舞技が使えるのか…)
そんな思考が脳裏をよぎり、それを当たり前として捉える。
実はこれは正確な答えではない。
カナデは知らないが、
魔物全てが使えるわけではなく人型、
または身体の一部に武器を持つ、生やす者のみが使用できるのが、
"赤い戦舞技"なのだ。
アックスホーンラビットの迫り来る斧を視界に捉えつつ、
知らぬ間に肩にこもっていた力を抜き、
ゆっくりと剣を構える。
脇腹の痛みに胸の痛み、意識が朦朧とする中で、
迫るアックスホーンラビットに意識を集中させる。
その時だった。
いきなり頭に文字が浮かび上がったのは…
ーーーー
※※※(※)の強制介入
補助スキル【派生補正:中】を取得しました
:能力の派生率[中]上昇
※このスキルはステータスに表示されません
【解析の眼】の派生能力が発生しました
固有派生能力【弱点解析】を取得しました
ーーーー
また※※※(※)の強制介入だ。
だが今の状況ではありがたい…
一体なぜ、俺に介入してくるのか、
理由など分からないし、知ろうとも思わない。
ただ気まぐれかもしれないけれど、それでも今は感謝しておく。
今取得したスキル【弱点解析】を発動する。
このスキルの効果は既に記憶し、
頭の中に入っている。
スキルの効果は単純故に強力な手札となりうる。
その名の通り、敵の弱点を解析するスキル、
スキルの発動から殆どタイムラグ無しに、
アックスホーンラビットの斧の付け根の部分が赤く光った。
これが固有派生した能力。
【弱点解析】
大きく息を吐き出し、
迫るアックスホーンラビットの腹部を見据え腰を落とす。
「………フーーーッ……」
俺が狙うのは、
アックスホーンラビットが飛びかかる為に空中に身をさらす、その瞬間。
感覚が研ぎ澄まされ、
周囲を流れる時間がゆったりた流れる感覚を味わう中、
アックスホーンラビットその逞しい後脚を蹴り上げ地面を蹴った。
俺は心の高ぶりを抑え、一気に息を吸い込む。
そして静かに、だがハッキリと戦舞技を名を叫び、発動させた。
「……【蒼斜一閃】!!……」
青い光を纏った剣は、その身の通った後に青い残光を追従させながら、
剣はゆっくりと斜めに流れていく。
飛びかかるアックスホーンラビットの斧の付け根に斜めから振り下ろされた剣は、
寸分違わず吸い込まれーーー
アックスホーンラビットの斧を横合いから叩き、へし折った。
「ギャァァァァァァァァ!!!!!!」
だが相手の戦舞技はキャンセル出来てたとしても、
斧を失ったアックスホーンラビットは止まらない。
突進とはえてしてそう言う物なのである。
その巨大な体躯に見合った質量が俺を叩き潰さんと迫る。
それは既に避けられない距離であり、
流石にこれに押しつぶされればただではすまないだろう。
その瞬間、
おあつらえたようにして、
再び頭の中に文字が浮かび上がった。
(戦舞技ー【蒼逆斜斬】)
2つ目の蒼の付く高威力の戦舞技を脳裏に見て、
俺の口はそれをなぞるように、自然と動いていた。
「…【蒼逆斜斬】…」
ふわり…
頬を撫でる風のざわめきが数時間に感じる時間の中で、
消えかかった青い閃光は、
再び強く光り始めた。
俺は無意識の力に促され、そのまま剣の柄を握りしめた。
そのまま、斜めに振り下ろした軌道をまるで逆再生するかのように、
人体の構造上あり得ない速度で剣が振り上げられて行く。
その剣は、斧の無くなったアックスホーンラビットを、下から上に斜めに切り裂いた。
アックスホーンラビットの真紅の瞳の放っていた生命力が一気に消え去ったのを感じながら。
俺の顔を、
腕を、
足を、
胴を、
俺の身体を左右を通り過ぎる肉塊から噴き出す血が濡らし、
辺りを濃密な血霧が満たし、
じわじわとレベルが上昇する感覚が身体を満たす。
勝った…
こみ上げた感情は2つ。
格上に勝つ事が出来た喜びと、
人間大の1つの命を奪った事による、
心の端にチクリとした違和感。
だがその違和感はすぐにスキルが消してしまい、
俺が気がつくことはなかった。
そして俺には達成感だけが残った。
【SideOut】
『半人族[lv:8]』 :【剣士】
雪埜 奏
必要経験値/規定経験値:531/900
能力:【戦舞技補正:強】【鈍感:中】
【剣術補正:中】【魔力探知:中】
【体力補正:中】【解析の眼】
new!【弱点解析】
残存Point:[2]
加護:なし
称号:【魂を鎮める者】
経験値500を手に入れました
[!]強敵打倒により経験値ボーナスが入ります。
300GET!
※規定経験値を超えました。
Levelupします。
必要経験値がresetされます。
【解析の眼】→固有派生【弱点解析】
××××××××××××××××××××××××××××××××××
【エミリーSide】
「………んっ……ん……………」
暗かった世界から意識が引き上げられる感覚を感じながら、
ゆっくりと意識が覚醒していく。
(………あれ?あたし…生きているの?)
力を入れようとしても身体中が痛く動きづらい、
しかも身体中が濡れているのかベタベタとする。
なんでだろう、そう思ってあたしは目を開けた。
目を開いてみても視界は真っ暗で何も見通すことができない…
あれ?目を開けた筈、
そう思いゴソゴソと動き回り、
ふと気がつく。
いつも隣にいたアーミーの匂いがする事に…
(…あぁ…あたしはアーミーの羽に包まれて寝ているのか…)
あたしはそう納得し、
任務か何かで疲れていたのかまた意識が沈んで行こうとする。
そこで、また、気がついた。
アーミーの匂いに混ざって、血の匂いがあたりに充満している事に…
鼻に血の匂いさえ届かなければあたしは心の防御本能に従って眠る事が出来たのだろう。
あたしは沈みかけていた意識を無理やり覚醒に持っていき、痛むからだに鞭を打ってやけに冷たいアーミーの羽を強引にどかして、飛び起きた。
飛び出して見た外は明るかった、そして…
赤かった。
太陽は真上にあり、多分意識を失っていたのは3〜4時間な程度なのだろう…
あれ?
意識を失っていたの?
あたしは自分自身の思考に起こった齟齬を噛み締めて、何かが詰まっている感覚に苦しんだ。
だがその詰まりは直ぐにぽろっと取れた。
取れてしまった。
あたしはすべての思考を放棄して、ただ呆然と立ち尽くし、目の前の光景を視界に収めていた。
手の力は抜け落ち、だらりと落ちた。
辺りは血が放射線状に凄まじい距離に渡ってぶちまけられていた。
目の前にはアーミー、
血まみれのアーミー、
辺りの血はアーミーを中心に広がり、
すべてはアーミーの血。
首から先が見当たらない、
方翼が見当たらない、
胴体が潰れている、
そこであたしは嫌でも思い出した。
守られたのだと、
助けられたのだと。
アーミーは地面に落ちる寸前に最後の魔力を使った。
そして墜落の寸前、自らの首を地面に叩きつける事によって落下の威力を大幅に落とし、
魔力で包んだあたしを方翼で抱えながら胴体から地面に落ちたのだと…
奇跡に次ぐ奇跡を経て、あたしは今ここに立っている事を実感した…
(そんな…あたしを守って…)
鼻の奥が痛い、ツンとした鼻は涙の出る一歩手前で、再びアーミーに目を向けた瞬間に、
目尻に溜まっていた涙は全てこぼれ落ちた。
「あ………あぁ、…アーミー………イヤ…なんで…………うそ…………………ううっ………………あーみいぃ…………」
あまりにも残酷な光景がフラッシュバックする。
カールの死、カールの相棒の死、アーミーの死、イザベルさんは生存不明…
突然のダストファングバードの出現により崩れたあたしの日常はもう修復が不能なほどに破壊された。
だが、そうしてずっと泣き崩れている事は、やはり世界が許さなかった。
この濃密な血の匂いを嗅ぎつけたのか、
周りの木々の合間からゴブリンが顔を覗かせ、歪み、歪みきった顔を向けてくる。
その数は3匹。
あまり多くは無いが今のあたしでは対抗できるか分からない。
身体中は打撲と思われる鈍い痛みが身体を動かすたびに痛み、
元々アルゲンタビスを空中で駆る事によって戦闘に従事する操士達は白兵戦以前に地上で戦うと言う事は苦手なのだ。
あたしも例に漏れず、周りよりかは多少出来ると言った程度でしかなく、森で生き抜くのは其れなりに困難を伴う事になるのは容易に想像出来た。
現れたゴブリンを認識して、
咄嗟に部隊指定の剣を抜き正面に構える。
剣の長さは70cm程と小さめで、あたしの小柄な身長に合わせて作られている。
あたしが装備している鎧は白くカラーリングされたこれまた部隊指定の革製の胸当てに、同色の各部位を守るプロテクターを装備している。普通の革の鎧よりも防御力が高いが、
ゴブリン達の持つ棍棒の衝撃を完全に殺しきれるとは思えない。
飛行部隊や戦闘飛行部隊にとって大柄な剣や重い鎧は邪魔でしか無く、今だけは自分の軽さを追求した装備を後悔した、
「…うらぁぁぁ!!!セイッ!!」
あたしはその不安を振り払うように、
迫る3匹のゴブリンに雄たけびをあげながら切りかかった。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
「……ハァ…ハァ……………」
疲労した身体を木に寄りかからせ、
ズルズルと地面にへたり込んだ。
あたしの周囲には2匹のゴブリンの死体が転がっている。
2匹とも身体中に切り傷を作り、最後には首を一突きして仕留める事ができた。
そして最後の1匹は不利だと悟った直後に反転し、
逃げようとしはじめたので、腰の短剣を抜き放ち、力の限り戦舞技を発動した。
戦舞技ー【一投刹那】
を使う事によって。
戦舞技には武器ごとにある程度だが違う技があり、あたしには今持っている剣と短剣の戦舞技しか使えない。
短剣のスキル【一投刹那】は短剣の投擲用の戦舞技の中では1番強力な物であり、手傷の少ないゴブリンを仕留めるには短剣の投擲用戦舞技の最下位、【投擲】では仕留めきれないと判断したのだ。
だがそれを使ったせいで体力がそこを尽きかけてしまった。
動けないとまた騒ぎを聞きつけたゴブリンが来るかもしれない…
ここはゴブリンと芋虫しか出ない地域だった筈だが、油断は禁物だ。
小瓶に入った黄色い液体、体力回復薬を一気にあおる。
残りのスタミナポーションの数は4つであり、回復薬は残り5つだった。
(…回復薬系アイテム…帰るまでもつかな…)
抑えきれない不安は胸の奥にしまい込み、体力の回復したあたしはしっかりとした歩みでアーミーの元に歩み寄った。
「…アーミー。埋めてあげる事も出来ないけど…あたしを助けてくれた事…忘れないよ。最高の相棒だった…ありがとう…」
アーミーに礼をいった後、あたしは悔しい気持ちを堪え、唇を噛みしてながらここを後にした。
ここはゴブリンが出現したこと、あたしが飛行していた巡回コース、この2つから考えてみても。
トリステイン王国の辺境に位置する【深淵の密林】だと思う。
しかも常夜地帯である【迷いの大森林】からわずかに1km程の大変危険な森の中であり、
ここら辺なら下手すればゴブリンと芋虫以外の、強力な魔物が出る可能性だってある…
王都までの通信手段である通信石は墜落した時になくしてしまったようだ。
それに最後に空から見た景色だと、
ここから人里まで出るためには最低でも50kmはある筈…
イザベル小隊長の消息は不明だし、カールは死んだ事からも、待っていればいずれ救援は来るだろう。
だが我が【巨鳥部隊】の総力である1.2番隊全てを総動員しても、
砂塵鳥爪獣には勝てない。
そうとなると国王が急編成した軍を派遣するだろう。
…今、王国の出せる手札は少ない。
それは国境を挟んで隣にある帝国の動きも活発化しているからだ。
あたしは帰れるのだろうか…
祖国トリステイン王国の王都、
ヴォールクローネに。
【SideOut】
『人族[lv:19]』:軽剣士/※巨鳥操士
エミリー・アーミアル
必要経験値/規定経験値:1970/2000
能力:【剣術補正:弱】【巨鳥通心】使用不可!
加護:火神フライオヌの加護
※巨鳥操士のジョブは現在使用不可状態となっております