77話≫〔修正版〕
2日連続投稿です。
よろしくお願いします。
スキル【隠密】発動
スキル【暗視】発動
俺はまだここでは死ねない。
目の前の男の子が振り向き、僅かにうろたえた事がわかる。
いきなり目の前で煙の様に消えたらそりゃびっくりもするだろう。
それにしてもこの刺客をおくった貴族はおかしい。
こんな幼い子供を暗殺者に仕立て上げるなんて…
俺は頭の中を駆け巡る怒りの半分の理由を認識した。
残る半分は…
自分の無力に対する怒り。
もっと力があれば、この時点でもこの男の子にかかっている【状態異常/洗脳】を解除し、救う事が出来たのかもしれない。
俺はもしもの話ばかりしか出来ない。
心の中で男の子に謝り、俺は視線を男の子に向けた。
目の前で消えた俺を探し、キョロキョロと辺りを見回しているしている男の子を倒さなければ。
俺は男の子の背後に回り込もうとした。
だが、男の子の様子がおかしい。
(おいおい…嘘だろ…)
男の子の表情が変わった。
一瞬、苦痛に歪んだ表情を見せた後、
感情の抜け落ちた人形のように無表情になり、男の子が僅かに声を発した。
「ダ…ダスゲ……ガッ……」
俺は溢れ出す怒りの感情を抑えて、
この男の子を苦痛から解放すると決めた。
その言葉が途切れるのとほぼ同時に、
男の子の身体中のあらゆる部位が不自然に脈動し、肉が盛り上がり、
皮膚が千切れ始めた。
表情を無くした男の子が苦痛に呻き、俺は悔しさに歯を噛み締めた。
既にその声に先程の可愛らしさは無く、顔以外の姿は人では無い何か。
「…ア…ガ………グ…ァ…ァ…ァ……」
俺は剣を抜き放ち、一息に首を一閃した。
振り切られた剣は抵抗の間も無く男の子だったモノの首辺りに吸い込まれていく。
シャァァァァァァァァァァァァァァ…………
血が噴き出し、
辺りを濡らす。
そうして既に人の形からかけ離れ、
人間という種族を辞めさせられた男の子の動きがとまった。
(……………終わったか…)
そう思った。
だが、首を無くし膝から崩れ落ちようとした男の子の身体が唐突に膨張し始めた。
それは数秒で元の体積の倍まで膨れ上がり、肉を裂きながら内部から光が漏れ出る。
(…ここまで卑劣な事をするのか…こいつらは…)
俺は心の中にゆらゆらと揺らめく怒りが精神を侵食する一方で、
月夜の湖畔の如き静けさ、
波打つ事のない湖の様に落ち着いて思考していた。
スキル【野生の本能】は僅かにしか反応しない。
という事はこの距離であれば確殺される様な攻撃では無いのだろう。
そしてこれから起こる事象は爆発、
たとえ俺が回避に成功し被害が少なくとも、周りの家屋は確実に爆風で倒壊するだろう。
街に入ったばかりでその様な問題は起こしたくないし、
まだ身分証明書のない怪しい人間なのだ、
捕まったら洒落にならない…
俺はスキル【粘糸精製】を発動させた。
手のひらから飛び出した糸を操り、
膨張し続ける首なしの死体に巻きつけて引き寄せる。
そのままスキル【瞬間移動】を発動。
【瞬間移動】は距離が近ければそこまで魔力を食わない、代わりに距離が離れるほどに魔力の消費は爆発的に増えて行くが。
それに俺と接触しているものも、
【瞬間移動】で送る事が出来る。
俺が男の子だったモノに触れた瞬間、
その場から男の子の首を残し俺は消えた。
俺が再び現れたのはウォルテッドの上空、約15mの位置。
そこで糸に巻きついたもはや肉塊としか言いようの無い、
男の子だったモノをウォルテッドの城壁の外に遠心力を使い投げ飛ばす。
そして糸を切り離して地上へ再び【瞬間移動】で移動した。
(くそっ…結構魔力を持って行かれたな)
次の瞬間、城壁の外から壁を隔ててくぐもった爆発音が聞こえた。
ここが城壁に近くて良かった。
もし、男の子と遭遇したのが街の真ん中であったら…
例え上に投げて爆発を回避したとしても地上には血の雨が降っていただろう。
そうな?と俺が今後この街で活動する事が出来なくなる。
城壁の方向から街の兵士達や住民が騒ぐ声が聞こえてくる中で、
俺は足元に転がる男の子の首をゆっくりと両手で掴み、持ち上げた。
その顔は僅かに苦痛が和らいだのか、
無表情の中にも安らぎが見えた。
【魂を鎮める者】
こんなちんけな事しか出来なかった。
今の俺の限界、男の子の苦痛の表情を消して俺は頑張ったと、全力を尽くしたと自己満足してる。
(…ごめん…な…)
そんな俺の悲しみはつづいても、
殺した罪悪感はスキルが消し去ってしまった。
なんと不思議な感覚なのだろうか、
このスキルは数秒の殺しの罪悪感すら抱かせてくれない。
残るのは胸にチクリとした違和感のみ、
俺の心の亀裂無意識の内に深まってゆく…
やはりどこの世界でも貴族は腐ってるのか…
前の世界ではインターネットでの情報しか知らないが、
腐敗が進んだ貴族の成した事はどれも酷いものであった。
しかも貴族を迂闊に殺してはならない。
正論だ。
権力と関わるとロクな事が無い。
まぁ既に狙われている様だが、わざわざ自分から正面から尻尾ふって近寄るつもりはない。
やるならもっと力をつけて足のつかない様に確殺する。
そう、迂闊に殺してはならないからだ。
相手が手を出せないまでの強さ。
それを手に入れれば手を出す貴族を返り討ちにし、倒せるかもしれない。
俺は拳に入る力を抜き、大きく息をはいた。
既に日は城壁の外に落ち、表通りは街灯のようなものが均等に立ち、僅かに橙色の光りを放っている。
俺はそんな夜の蝶が羽ばたき始める時間が訪れる中、スキル【全属性魔法】を発動させた。
火属性下位弾発動
男の子の首を丁寧に、ゆっくりと地面に起き、今までに無いほど精密に魔法を操作し、
発動キーを唱えた。
「……【火の弾】……」
その火はこの世界の常識を覆す様に青く、
輝きと儚さを兼ね備えていた。
ゆらゆらと空に向かって伸びる一筋の煙は、
男の子の魂と共に空へと滲み、消え去ってゆく。
俺は煙が消えるのを見届けた後、冒険者ギルドを探す事にして路地裏をぬけた。
テンプレによくある悪人を最初に殺し、
殺しのハードルを乗り切る主人公はよく居るが、2回目とはいえ殺した人間が悪人に分類されるとは言え、
ただ利用されただけの人だったらその主人公はどう思うのだろうか。
男の子のジョブは【農民】と【暗殺者】の2つだった。
この関連性のない2つのジョブ、だが1つ推測してみれば繋がりも見える。
この2つのジョブを繋ぐのは【状態異常/洗脳】、そして【貴族】、
おのずと浮かび上がってくる信憑性の高い推測に気がつけば拳を握りしめていた。
止まった血が再びしたたり落ちた所でハッと
拳に込めた力を抜いたが、
俺の胸の奥に燻る怒りを消す事は難しそうだった。
これが俺の罪無き人を殺した2回目である。
【SideOut】
『半人族[lv:25]』 :【剣士】/【戦舞技師】/【全属性魔術師】
雪埜 奏
取得経験値/必要経験値:1800/2600
能力:【戦舞技補正:強】【鈍感:中】
【剣術補正:強】【魔力探知:中】【体力補正:強】
【解析の眼】【弱点解析】【縛りの咆哮】
【野生の本能】【下克上】【全属性魔法】
【魔力量増大:中】【隠密】【暗視】【魅了】
【砂塵の爪甲】【魔法操作:中】【思考加速】
【瞬間移動】【予測の眼】【血分体】
【下位従属】【魔法威力補正:中】
【魔法命中率:中】【超回復】
【粘糸精製】
残存Point:[3]
加護:なし
称号:【魂を鎮める者】
経験値200を獲得しました!




