76話≫〔修正版〕
よろしくお願いします。
ロゼッタさん達のクラン【ピアロマイアスの麗槍】はダンジョン内で得た素材の分配をしてからくるそうなので別れ、
俺は【エスナの地下迷宮】から徒歩で小都市ウォルテッドを目指すため歩いていた。
足腰は鉛のように思いが、案外足を前に出す事さえ出来れば距離は稼げるものである。
そうして1時間程歩いていると大きな城壁に囲まれた街が見えてきた。
(…小都市でこれか…やっぱ城壁ってでかいな)
ロゼッタさんによると、ウォルテッドは人口5万人程の小さな都市で、周囲を高さ8メイル程の城壁で囲んであり【エスナの地下迷宮】を攻略する為に集まった冒険者や研究者が集まり次第に街を形成して行ったらしい。
まぁ、今のこの街の役割は【深淵の密林】から来るゴブリンなどの魔物が都市や国土に侵入するのを防ぐ事でもあるらしい。
魔物の出る森に近い為か、常に千人の兵が見回りや巡回をしているらしく、常駐兵はなんと2千人も居るそうだ。
そして有事の際は2千5百人くらいの兵士が動員されるらしい。
正直この都市は戦力が多すぎる。
まぁ魔物がそれだけ攻めてくるんだろうけどね。
まぁぶっちゃけ多いんだか少ないんだか分からないけど、小都市にしては多いのかもしれない。
でもそうしたら王都とかの兵力は相当ヤバそうだな…
俺はベルベットさんにも言われた通り、
焦り過ぎずに、でも確実に強くならねばならないからな。
1対多の戦闘も視野に入れておこう、魔物と戦うにせよ、人と戦うにせよ…
取り敢えず西の門から入る事にするが、
西の門は【深淵の密林】に面していて1番強固に出来ていて、
人通りが冒険者しか居ない為か門番は数人しか居ない。
俺は気がつかれない様に門の近くまで木に隠れて行きながらスキルを発動させた。
スキル【隠密】発動
気配が完全に周囲に溶け込む。
俺を認識していた虫や小動物達は、対象が意識の外に追いやられた為か各々で草を食べたり羽虫を食べたりと、日常に帰って行った。
こうすれば門番にはバレないで門をくぐり、都市に侵入する事が可能だ。
後は冒険者ギルドに行って冒険者登録してしまえば身分証の事は一件落着となる。
そう、俺は身分証を持たない怪しい子なのだ。
よって俺はもしもの不都合を避ける為にこういう手をとったのだ。
まぁ、簡単にいえば面倒。これに尽きる。
門を見張るおっさん兵士とか明らかに俺を捕まえそうな感じだしな。
ずっとキョロキョロ誰かを探す様な事をしている。
もちろん俺は捕まらん!
そう思いおっさんの横を堂々と通り過ぎてウォルテッドに侵入した。
ふぅ、やっぱすこし緊張したな…
そう思い顔をあげれば目の前に広がる街並みが視界いっぱいに入ってきた。
「おぉ…ジーザス…」
初めて見る街並み、
初めて見る異世界の雰囲気、
まるでインターネットでみたファンタジー中世の街並みの絵をそのまま現実に投影したかの様な感じだ…
改めてこの世界が異世界だと認識させられた瞬間だった。
この世界で初めて見た街並みの余りの綺麗さに気がつけば涙を流していた。
おっとこんな事している場合ではない!
俺は冒険者ギルドに行って冒険者登録しなければならなかったんだ。
このままでは涙を流しながら身分証明書を持たず街に侵入した不審者だ。
俺は街並みを記憶に焼き付けて足早に歩き始めた。
ー数分後ー
(あー…ロゼッタさんに冒険者ギルドの場所聞いとけば良かった…)
俺は早速悩んでいた。
そしてまず、未だに【隠密】を解いていない事に気がつく。
解除しようと思った時、
ふと脳裏によぎったのはあの懐かしいとあるおっさんの言葉。
"カナデ、その黒髪、隠したほうが良いぞ"
そうだ、あれはローランドのおっさんにダンジョンで言われた事だ…
俺はスキルを解除する前にフードを深めに被り路地裏でスキルを解除した。
路地裏はやはり汚く、空気が停滞していた。
俺にとってこの世界はファンタジーなんだろうが、そこに住む人にとっては現実であり、
路地裏に寝転ぶ子供や人達を見て俺はどこの世界も本質は変わらないと思った。
これも力があれば解決するのだろうか…?
目に見えるもの、手の届くものは助けたいが、俺がこの場でこの人たちに金を渡してもそれは1時的な救済にしか過ぎないだろう。
金を使ったら終わり、また元の生活に逆戻りだ。
いや、贅沢を知れば余計酷くなるだろう。
あの時の生活を生活を生活を、なんて言っているうちに強盗の出来上がりさ。
だが、もしそうだとしても今それを考えても何も出来ないだろう。
そう思い路地裏を出ようと踵を返した時、
「お兄ちゃんは冒険者さん?」
ふと路地裏からそんな声が聞こえた。
下をみると7歳か8歳くらいだろうか、
少し汚れた服を着た紫髪の小さな男の子がいつの間にかぽつんとたっていた。
俺はその男の子の目線までしゃがんで声をかけた。
「違うよ?君は?」
「僕は…アカ!お兄ちゃんは?」
アカちゃん…
俺はすこし笑ってしまったが、やはり感情の機微に目ざとい子供なのか、ばれてしまったようだった。
「むーっ僕の事赤ちゃんだーって思ったでしょー」
アカちゃんは頬を膨らましてすこし怒ってしまった
「ごめんごめん、そんなつもりじゃないよ。いい名前だね、」
「ありがと!」
俺はこの時、
なぜこの男の子のステータスを覗いたのだろうと疑問に思った。
そう、ただ何と無く本当に気まぐれに俺は男の子のステータスを解析した。
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『人族[lv:18]』 :【農民】/【暗殺者】
アーカドータ
貴族の刺客
【状態異常:洗脳】
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「…は?………」
なんだこれ… 暗殺者…
ターゲットが俺だとして、
この前目立ったのは否定しないが、
いくらなんでも早すぎないか?
「…………?……」
男の子は俺の声に振り向き可愛らしげに首を傾げた。
だが、俺の反応が何もないと知るとすぐに路地裏から出て行こうとした。
これはまず、ターゲットの下見という事か?
見かけに騙されちゃいけないのか?
男の子の無邪気な視線を感じる中で…
その本心は…?
目を凝らしてよく見れば、僅かに長袖を着た男の子の手首のあたりが不自然に盛り上がって見える。
なにか隠してるのか…暗器か…?
日は既に落ちかけ路地裏は闇を落としていた。
俺の背後は真っ暗な路地裏になっている、そして俺は黒ずくめの服装。
ならばこれを活かして…
ここで危険の芽を摘んでおく。
今の俺には助ける事が出来ないから…
カナデは歯を食いしばり、拳を握りしめた。
その拳からは血が垂れ、肌の色は力の入れすぎで白くなっていた。
カナデの心の中にあったのは貴族への怒り、
そして自分の無力さへの怒りだった。
次の瞬間、男の子の目の前から唐突にカナデの姿が消えた。
【SideOut】
『半人族[lv:25]』 :【剣士】/【戦舞技師】/【全属性魔術師】
雪埜 奏
取得経験値/必要経験値:1600/2600
能力:【戦舞技補正:強】【鈍感:中】
【剣術補正:強】【魔力探知:中】【体力補正:強】
【解析の眼】【弱点解析】【縛りの咆哮】
【野生の本能】【下克上】【全属性魔法】
【魔力量増大:中】【隠密】【暗視】【魅了】
【砂塵の爪甲】【魔法操作:中】【思考加速】
【瞬間移動】【予測の眼】【血分体】
【下位従属】【魔法威力補正:中】
【魔法命中率:中】【超回復】
【粘糸精製】
残存Point:[3]
加護:なし
称号:【魂を鎮める者】
明日も5話程度投稿できそうです。




