73話≫〔修正版〕
次は少し空くかもしれません。
少しエスナ編がだれているので
まとめて投稿して早めに片付けたいと思います。
よろしくお願いします。
(…うぅ………ん…眩しいな……)
意識が覚醒すれば、
まぶたが僅かに太陽の光を受けて赤く透けていた。
目を開けばとまだ太陽は斜めに見えた事からも、まだ夕方にはなってないようだ。
現状を把握する為に周囲に視線を動かせば、俺が居るのはダンジョンの近くにあった夜営の出来るのような場所であった。
木々は刈り取られ、
半径5mくらいの空き地には草が茂っていた。
俺はそこに横たわっているようで、
ふと横を見るとロゼッタさん達のクラン
【ピアロマイアスの麗槍】のメンバーが俺を取り囲むように座って居た。
「…な、なんでロゼッタさん達が?」
多少の睡眠により気分は良くなったとは言え、
未だに少し霞む意識を繋ぎ止めながら俺は1番近くにいたロゼッタさんに声をかけた。
そしてその問いに対する返答は実に分かりやすいものだった。
帰ろうとダンジョンを出て帰ろうとしたら背後で転移の音と光がして振り返ったら俺が1人で血塗れた状態。
そして倒れたので洞窟の近くで看病して、
今に至ると言う事であった。
「皆さん迷惑かけました。後、看病してくれてありがとうございます。じゃあ俺はこれで」
俺は簡単な礼を言い残し、
ダンジョンに踵を返そうとする。
行かなきゃ行かなきゃ行かなきゃ行かなきゃ行かなきゃ行かなきゃ行かなきゃ行かなきゃ
それは既に目の前の人にしっかりと向き合って礼を言う事を忘れる程に視野を狭めていた。
だが、踵を返した俺の目の前に体格に似合わない足捌きでするりとベルベットがさんが入り込み、立ちはだかった。
「バカいうんじゃないよ。そんな身体で何が出来るってんだ、何か焦ってるように見えるけどすこし身体も心も休めな!」
「くそっ!どいてくれ!俺は行かなきゃ行けないんだ!!強くならなきゃいけないんだ!!」
バチィィィィン!!!
その瞬間、頬に焼ける様な熱さと衝撃を感じた。
俺が衝撃に流された顔を戻せば、
手を振り抜いた体制で俺を見つめるベルベットさんがいた。
その目に映る感情は、俺の気持ちが分からないと言った様子だ。
数秒が経ち、頬に感じる痛みが叩かれた事による物だとやっと理解が及び、俺が睨んだところでベルベットさんは言葉を続けた。
「なぜ、カナデはなぜそこまでして力を求めるんだ?
勿論誰しも力を求めている、それは当たり前だ。
だがウチには少し焦り過ぎに見える…
そういう目をした奴が死ぬのを何度も見てきたんだ。」
そこで俺はハッと気がつく。
あれ?俺は…このダンジョンに囚われたローランドを助けに行く為に、
ダンジョンで実力を試すと言った事を…
忘れていた?
転移魔法陣でダンジョンの入り口に出る前までは分かっていた筈なのに…
そうだ。
確かに今までに無い程に…焦っていた。
すぐ助けに行かなければ。
ローランドのおっさんが無事か確認しなければ、と。
たしかに急いだほうが良いけど、ベルベットさんの言うとおり身体もしっかり休めないといけない。
助けに入ったのに俺が死ねばそれこそ本末転倒、ミイラ取りがなんとやらだ。
ここ何日かはダンジョンに潜りっぱなしだったから俺が気がついていないだけで、
精神的な疲労も半端じゃないだろう。
それに今の俺は、周りから見てもおかしいくらいに狂った様に力を求めて戦っていたのかもしれない…
その思考に達した時、頬を叩いてくれたベルベットさんの顔から警戒の色が僅かに薄れたように感じた。
「大丈夫そうだねー。張り詰めた顔じゃあなくなったみたいだしー」
「良かったわ。カナデくんとダンジョンの中で話してた時も時々悲しそうな顔してたし。」
「…そんなひどかったですか?」
4人が見事にタイミングを揃えて頷くのを見ながら俺は苦笑した。
どうやら俺は自分で思っていた以上にローランドのおっさんの事で悩み、心を追い詰めていたみたいだ。
「と、ところでソラ…くんは…」
ロゼッタさんがおずおずといった感じで口を開いた。
「こらっ!それ聞いちゃダメでしょ!!」
お姉さん雰囲気ムンムンのアイラさんが珍しく大声で怒り、ロゼッタさんに説教していた。
あ、そうか…ソラが見えないからダンジョン内でやられたと思ってるのか。
だが、ここで居ないからと言って短絡的に死んだと言うのは後でソラを出した時にまずいだろうし、何より言い訳が面倒だ。
倒されるたびに死んだと言うのも面倒だし、それだと次に出した時に兄弟と言うのが精一杯だろう。
多分それも数十回使えば違和感のオンパレードだしな。
顔は変えられたとしても口調や性格は変わらないのだから説明にはぱっと思いついた事を言う事にしておく。
「いいえ、大丈夫です。ソラは無事ですよ?今は少し別行動しているのでここには居ませんが。」
「そ、そうなのか…なら良かった」
ロゼッタさんは露骨に安心していて、アイラさんも怒鳴ったのが空振りになってしまい、
少し恥ずかしそうに俺の方ををチラチラみていた。
アイラさんには少し悪い事をしてしまったようだ。
胸が痛むが、今はそんな余裕は無い。
俺はおっさんの仇を討つ為にも取り敢えず
【エスナの地下迷宮】を一回抜け、体勢を立て直す事にする。
違う場所でもっと適性レベルの魔物と戦いレベルをあげる事にするのも、
冒険者となってお金を稼ぎながらレベルを上げるのもありだ。
俺だって冒険者になって異世界を冒険するのは憧れる。
森の中に篭るのも地下に篭るのも別に苦痛では無いが暇だ。
ローランドと旅するのも楽しそうだったが、取り敢えず生きていたとしても無傷では済まないだろうし、楽観的な思考は出来ない。
取り敢えず俺はロゼッタさん達の勧めもあり、
身体と精神の疲労を取るために【深淵の密林】の外れにある
【エスナの地下迷宮】から徒歩で1時間程と近い小規模の都市。
小都市ウォルテッドに向かう事にした。
【SideOut】
『半人族[lv:25]』 :【剣士】/【戦舞技師】/【全属性魔術師】
雪埜 奏
取得経験値/必要経験値:1600/2600
能力:【戦舞技補正:強】【鈍感:中】
【剣術補正:強】【魔力探知:中】【体力補正:強】
【解析の眼】【弱点解析】【縛りの咆哮】
【野生の本能】【下克上】【全属性魔法】
【魔力量増大:中】【隠密】【暗視】【魅了】
【砂塵の爪甲】【魔法操作:中】【思考加速】
【瞬間移動】【予測の眼】【血分体】
【下位従属】【魔法威力補正:中】
【魔法命中率:中】【超回復】
【粘糸精製】
残存Point:[3]
加護:なし
称号:【魂を鎮める者】




