46話
二分割です
よろしくお願いします
【アイゼント王子side(前)】
太陽が天上を舞う昼ごろ
「ぎゃぁぁぁぁッ…」
「腕がぁぁぁ俺の腕がねぇぇょぉぉぉ」
「貴様ら落ち着けぇぇ！王国を護る者の覚悟はどうした！！」
「もうダメだ勝てるわけねぇ！！」
どうしてこうなった
いい方向に向かっていた筈の戦闘
だが今はどうだろうか
戦線は崩壊
死者は辺りに溢れている
トリステイン王国第二王子
アイゼント・ノイン・トリステインは絶望の淵にいた
話は朝まで遡る
夜明けと同時にロヴィスキィ村の外れに張っていたテントをたたみ
連絡が途絶えた隠密部隊の代わりに軽戦士部隊を10名程
斥候に出した
前日の疲労も消え、万全な状態となった我が軍は全ての準備を終え
ロヴィスキィ村の住民に送り出される所だった
そのとき
眼前に影が落ちた
それは一瞬で我以外に気がついた者は指揮官達数名だった
何かが風を切り落下する音が聞こえる
上空を見れば
なにか物が落下してくるではないか
我はその落下物を回避するため指示を出し
部隊員たちはその落下物を目視
してしまった…
我の失策はその時その落下物に気を取られすぎて
魔物に知能がある事を忘れた事
最初に眼前に落ちた影を早計に落下物の物と判断した事
砂塵鳥爪獣の動向を掴みきれなかった事
だろう
我もその落下物を見る
赤、赤赤赤赤赤赤
ひたすらに赤い肉塊
僅かに見える白い物体が骨だと気がつくのに時間がかかるほど
ひき肉のようにぐちゃぐちゃに
原型をとどめて居ない人間だった物
それに気がついた数人が嘔吐した
僅かに肉塊の端に見えた隠密部隊を指す紋章と
軽戦士部隊の紋章を見て
我は遅ばせながら大声で叫んだ
「ダストファングバードが来たぞぉぉ！！すぐさま陣形を組めぇぇえ！！」
その声に反応した指揮官が次々に指示を出す
最初に軽戦士部隊の居た場所が爆ぜた
円形に10メル程削り取られた辺りはまるでミキサーにかけられたように肉塊しか残っておらず血の池ができていた
我は舌打ちした
ここは戦場、王族の身の振り方など関係ないからだ
サンドボールか…
その周囲に居た兵は腕や足が半ばから千切れ
ひどい兵は頭が千切れ去ったのか
既に即死していた
「やべぇ！おいっ！生き残ったやつ！陣形を組み直せ！怪我した奴は回復部隊の場所まで下がれ！！」
軽戦士部隊の指揮官、緑の髪と目を持つ
ローチェルド・ベールフェイト
チャラそうな顔をしているが流石は指揮官というべきか
その爆ぜた場所の近くに居ながら盾と風属性魔法を上手く使い
爆発の衝撃を流していた
その声に反応した残りの軽戦士部隊は負傷者と戦える者に別れ陣形を組み直していた
魔物に対抗するための陣形は
凹型に近い陣形
それを全軍で組む
軽戦士部隊の兵士が居たのは凹型の右下に近い位置
回復部隊が居るのは凹型の更に後ろ
軽戦士部隊の負傷者は腕のある者が足のない者に手を貸し下がっていた
それに目ざとく気がついた回復部隊の面々がすかさず治療を施して行く
凹字の右上と左上は歩兵部隊
凹字の真ん中のへこみには大きなタワーシールドにランスをもった重戦士部隊の面々
凹の左下には魔法剣士部隊
凹の下、重戦士部隊の後ろには魔法部隊
冒険者部隊は遊撃する為に少数でチームを凹のへこんだ所に組み散らばっている
誘い込み重戦士部隊で抑え魔法部隊が撃ち落とし
冒険者が遊撃し地に縫い付け
歩兵部隊が肉薄する
魔法剣士部隊と軽戦士部隊がトドメを刺す
それが作戦
荒いが飛行する魔物に対する戦略がまだ発達していない為に仕方がないのだ
砂塵鳥爪獣はサンドボールを打ち続ける事は出来ない
魔法を放つ役割の者は片っ端から撃ち凹みの陣形の凹んだ所に縫い付けつづける
サンドボールを放つ砂塵鳥爪獣には魔法部隊と魔法剣士部隊が全力で各属性の盾を発動して防ぐ
全軍を一面に広がる虹色の壁が覆う
だが一面故に一点の攻撃は弱く
威力を殺しきれず盾を破られ負傷する者や死ぬ者もいる
この世界で盾を一面に張る以外の思考を持つ物はまだ居ない
突如奇襲から戦闘が始まってから20分ほど
奇襲による度重なるサンドボールの砲撃により死者は2000名を越え
負傷者は1000名に及んだが
陣形を整え盾を使用し始めてから死者や負傷者は減り
現在は
死者2200名程
負傷者1500名程に抑えられていた
4/17［修正］
