45話
なかなかカナデに話が行かない…
よろしくお願いします
【イザベルSide】
私の相棒の"イーベ"は疲労や擦り傷の為に今、部隊には復帰していない
後ろで1つにまとめている自慢だった透き通った空のような
水色の髪の色は陰り
常夏の島の海のような透明度の高く透き通っていた
水色の瞳はその輝きが曇ってしまっていた
あまりにもやつれてしまった私
だが私は軍人
戦いに身をおく者として人死に執着するのは愚策だ
決別する為に私は村に向かった
あの時【深淵の密林】上空を巡回していた時に1番近くにあった村は
ロヴィスキィ村
人口300人程の小規模の農村
私はその村の近くに花を添える為に自らの疲労を無視して砂塵鳥爪獣を討伐する為に急遽編成された部隊の輸送車に乗ったのだ
実家の貴族のコネを始めて有効に使おうと思った
他の部隊員の視線を掻い潜るのは大変だったが
案外うまく歩兵隊の輸送車にることができたのは僥倖だった
もしかしたら彼女は…
そんな楽観的すぎる私自身の思考に嫌気がさす
明日の朝には戦端が開かれるだろう
本来部下を死なせた責任で現在は謹慎を食らっている筈の私
カールやエミリーの仇を取るため
死ぬかもしれない
だから最後にそこに行くのかもしれない
私は死ぬ前に森の入り口に花を供えに行った
近くの木の根元に花を起き腰を下ろす
既に日は傾き始め月が天上に輝き始めようとする頃
あまり時間がない、森は魔物がいるから夜は近寄ってはならない
そう思い私は踵を返し村外れの夜営地に帰ろうとした
一瞬、森の木々の合間に人影が写った事にイザベルは気がつかなかった
だが人影は微かに動揺した様子をみせ
森から僅かに姿を現し始めていた
出てきた月の光が照らすオレンジの髪と瞳
そこにはやや、汚れた防具をまとった"少女"がいた
私はその僅かな気配に後ろ髪を引かれるように振り返った私
懐かしいオレンジ色が視界にうつり
目の前の"少女"は目を見開き私を見つめていた
私は最初…信じられないものを見たかのように閉じるきらなくなった
幽霊でも見たのかのように口を開いたまま硬直しかすれる声を必死に発しようとした
幽霊でもいい
最後に会えたなら
だが気がつき声をかけそこなう
僅かに上気した頬
汗が滲む額
力強い瞳は驚愕に見開かれているがいつも見ていた懐かしいオレンジの瞳だった
まさか、いや、だけど…
もしかしたら彼女は…
そんな楽観的すぎる思考をした自分が脳裏をよぎり僅かな光明を見せる
「え、エミ、リー…なの?」
声がうまく出せない
鼻の奥がツンとする
目に水が溜まり、頬を伝う熱いもの
「…うそ…………イザベルさんなの…?…」
その脳裏をよぎった光明が私を照らした
最後まで私の事を心配してくれていた"少女"は
今も純粋に私の無事に安堵していた
"少女"の方が服が破けたり血がついたり
疲れ果てて居るはずなのに
「…よかった………」
「私は…ッ…小隊長なのよ…あんな鳥…なんてことないわ…よ…」
「そうですよね…イザベル小隊長ですもんね……」
「うるさいっ…すこしは小隊長に敬意はらえっての…」
なんという奇跡
なんという偶然
口ではつっかっても内心は全く違った
もっと言いたい事がたくさんある
でも、今はこれで良いのかもしれない
大事な事は後でゆっくり話せば良い
それは"少女"も同じだったのだろう
それは、バラバラになってしまった歯車が
運と言う原動力によって奇跡的に噛み合った奇跡
私はそうとしか思えなかった
「……ハハハッ…」
久しぶりに笑ったかもしれない
笑い方を忘れた喉はうまく声を発せずに笑いづらい
その様子を見て堪えきれなくなったのか
心地よい衝撃に下をみれば小さなオレンジ色の髪が飛び込んで来て私の胸におさまっていた
その小さな部下を壊れないように大事に抱きしめる
不意に頬を伝う一筋の涙
私の胸は熱くなる
最初に流した悲しみと後悔の涙ではない
心に染みる涙
その涙と一緒に心にのしかかった重りも流されてゆく気がする
私の心にのし掛かった重りは少し軽くなった気がした
散って行った部下のカールのためにも
私は生きて行く事にした
上司として仲間として。
「……おかえり……エミリー…」
よく生きててくれた
私は軍人、
でも部下を想い、部下と一喜一憂し
部下の死を忘れず糧にし、
そうして強くなれる上司が1人くらい、居ても良いとおもう
【SideOut】




