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Soul-Move -新章開始-  作者: 癒柚 礼香
【深淵の密林】
19/145

41話

分かりやすい展開ですみません


よろしくお願いします。





【ドヴォルザークSide】



辛うじて周囲の体裁を保てる程度の煌びやかさ、

と言っても平民からしたら天の上の様な豪華さだが、

その部屋はバスケットコート2つ分程の大きさのある謁見の間。


まさに栄華を極めているという言葉が似合う。

そして日々、謁見にくる他国の人間や国の民に王国の財力の高さを見せつけているのだ。


だがその謁見の間の奥に鎮座する玉座にどっしりと腰を構える大柄な男の名は、


ドヴォルザーク・ノイン・トリステイン


偉大なるトリステイン王国第9代目国王である。


特徴は燃えるような赤い髪と赤い瞳を持つ精悍な顔立ちの壮年男性と言った所だろう。


王の眼下には左右に立つ武官や文官が数十人、ずらっと並んでいる。


だが今、玉座に座る王は苦虫を噛み潰したように顔をしかめていた。


それは今日の昼頃に緊急の要件が入ったからだ。


どうせ帝国が砦あたりにいつもより激しいちょっかいでも仕掛けて来たのだろう。


そう当たりをつけていた。


だが報告に受けた内容はそれよりも何倍も、いや、数十倍も酷かった。


「緊急の用件です王よ!」


「何があったのだ、直ぐに申せ」



「ハッ!申し上げます!王国辺境グランハーツ辺境伯領の西、【深淵の密林】上空にて準災害級Sランクの魔物である砂塵鳥爪獣(ダストファングバード)が確認されました!

最初に遭遇したのはアルゲンタビス部隊の巡回部隊3名!

内1名はその場で死亡、1名は行方不明!1人が通信石で報告後、帰還した為判明しました!」


一度に全てを言い終えた伝令の者は息を大きく吐き出しながら呼吸を整えている。


だがそんな事に気がつく余裕はない。


一国の王が配下の様子も気に留められなく呆然とする、それ程の事態が起きていた。


「Sランクだと…しかもよりによってダストファングバード…おのれこんな時に…おい!ダストファングバードは今現在何処にいるのだ!すぐさま冒険者達に依頼を出せ!」


王国に散らばり各領地を守護する兵は約57万、


内、王国の王都を守護する兵は約12万。


合計で69万の兵の内、

現在、各地から約3万の兵が帝国の国境付近の砦から近い城塞都市ガルテンに派遣されている。

砦には元々5万の兵がいる。


有事の際には城塞都市から3万の兵が援軍に入る手筈だ。


それ程までに王国は帝国を警戒し、

帝国との小競り合いで、

否応無しに王国の緊張は高まっている。


帝国は絶対王制に近く側近を除き家臣が王に意見をすることは許されないそうだ。


その王が掲げる方針こそ「大陸制覇」らしく、近年も周辺の小国を吸収し巨大化しつつある。


その帝国を横目に魔物に兵を裂く。


確かに緊急の案件だな。


「ハッ!密偵の報告によると、現在【深淵の密林】付近の崖にある洞窟にて羽を休めているもようです!」


「よくやった。

魔物なんぞに国が滅ぼされてたまるか…

わしの代で討伐してくれようぞ。

国境付近の砦に詰めている兵はそのままにし、王国の精鋭を中心に軍を編成し、各領地に詰めている兵の精鋭も出来るだけ集めよ!」


「「「「「ハッ!!!」」」」」


主に武官達が血を滾らせ一際大きな声で返事をしてくる。

その武官達を少しわずわらしそうに顔を顰めながら文官達も返事をする。


「ハッ!では引き続き監視を続けます」


隠密部隊の伝令係はそう言い残し、

消えるように去って行った。


「この戦闘を勝ち勢いに乗れば帝国も退けるやも知れぬな」


ダストファングバードとの交戦までに、

兵や冒険者集めるとなると最大で2日程で編成しなければ、

魔物は生き物だ、いつまでも洞窟で待ってくれるわけではない。


【深淵の密林】の手前の岩場までは全力で行軍して7日。


「…あと9日も都市を破壊するだけの力を秘めた魔物を放置しなければならないのか…」


王の不安から漏れた弱々しい呟きは誰にも聞かれることなく消えて行った。



2日後、



緊急で集まった精鋭の兵は約2万7千、


冒険者は800人、


合計で約2万8千。


まさか依頼を出してからわずか2日で冒険者がここまで集まってくれるとは思わなかった。


国の存亡がかかると言っても過言では無いのだ、ある意味当然かもしれないが…


国王は僅かに口元を緩めた。


進軍中も各地の貴族の私兵から緊急招集されている手練れの兵が合流する手筈だ。


現地につく頃には兵は3万前後と思われる。


約、三個師団級だ。


Sランクの魔物1体に対しての兵の動員としてはこれでやっと少し多いと言える位である。


一般的(・・・)に少数で倒せる、

もしくは稀に個人で倒せる魔物の限界はAランクの中でも下位の魔物とされる。


それ程までにAランクとSランクの魔物の実力の差は激しく、隔絶されている。


亜竜はAランクの上位あり個人や少数が歯向かう事はほぼ無い。

純竜種や古代龍あたりはSランクの上位〜災害指定級または厄災指定級である。


純竜種や古代龍の素材は脱皮した皮か寿命が尽きた竜種の物しか手に入らない為必然的に国宝級となってしまう。


昔に竜種の素材で作る鎧を欲しがった一国の王が全軍で竜を討伐しに向かって全滅し、

その後ブレスで王城を王族ごと消滅させられた事もある。


実に分かりやすい実力差だ。


つまりSランク以上の魔物はそれだけ危険な存在なのである。


基本は人間に興味を示さない種が殆どだが、

今回のダストファングバードはその点、タチが悪い。


知能の殆どを殺戮衝動が覆っていて、

まともに意思の疎通すら出来ないのだから…


実力はAランクの上位だが、

硬い外殻や人をよく襲う為危険度も踏まえてSランクとされる。


過去何度も都市や街を滅ぼされ、多くの国民や兵を殺されて、

やっと撃退していた王国としては倒さねばならない敵である。


ダストファングバードの殺戮周期は大体30年、前回から27年が経った。


どうやら今年がその年の様だな…


だが今回はランクの高い冒険者も少数だがちらほらと見える。

兵の被害をなくす事は出来ないだろうが、

せめて民の被害は無くしてみせる。




この国の王は

不器用な性格とは裏腹に、

国民の気持ちを思う精悍な顔立ちに似合わぬ心の持ち主。



ドヴォルザーク・ノイン・トリステイン



今はまだその片鱗しか見せていないが、

いずれは民から【優王】と呼ばれ、

戦乱の世に落とされた王国を率いて戦う。


そんな優秀な王であり、優しい王になる男。





【SideOut】






精鋭を集めた急編成の軍なので


命令系統はしっかりしていますが


役割り毎に部隊を分けています


4/17[修正]

5/02[修正]

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