36話
お気に入りが100件を超えていて驚愕で即身仏になりそうです!
ありがとうございます!
趣味で書いているので進行が無駄に遅いですがよろしくお願いします
【"エミリー"Side】
今"彼"は木の上で眠っている
"あたし"は20m程離れた木の上からそれを静かに見ている
(いつも木の上で寝ているのかしら?町や村には帰らないのかな?)
その思考の後は記憶が曖昧で良く覚えていない
目が覚めると朝だった
"あたし"は頬を伝うヨダレを慌てて拭い"彼"を探した
(…じゅるっ…やばっ!見失った??)
木の下に降りて"彼"を探す為あたりを見回すと
そこまで遠くない所にに立っていた
だが"彼"は身動きしていない
なぜだろう…
そう思い辺りに視線を巡らせると
"彼"の向いて居るであろう方向に芋虫の行列が眼に止まった…
まさか…
今日は暴食の日!?!?
芋虫には1年に1度、繁殖期の時期になると
食べる物が草食から肉食に変化する習性がある
一説によると肉をたべた後に
本格的な繁殖期に入り子供を大量に産むとされるからと言われている
肉食になった芋虫の向かう先は森の付近にある村などが殆ど
いつもならこの時期には大規模な討伐隊が国から派遣され
村や街に出てくる芋虫は討伐されるのが常
だが今年は隣の帝国との緊張が高まり、
帝国と王国の狭間にある【深淵の森】の付近には政治的な事と
辺境であるが為
防衛の為に国境付近の城塞都市や砦に兵を当ててしまっている現在
この付近には兵を派遣出来ないのだろう
このままじゃ、村人が皆食い殺されちゃう
「…このままじゃ!…はっ…」
思わず声を出してしまった
芋虫に気がつかれてしまったかもしれない
だがその声を聞いて動いたのは"彼"だった
彼は"あたし"の声が聞こえたのか
"彼"は左手を真上に上げた
次に起きた現象に思わず息を飲む
その手の先に現れたのは
5m程の巨大な氷の弾
今にもはち切れんばかりの氷弾と言うよりもはや氷球
大きさだけで言えば中位程度の大きさだが
いま感じる"彼"から発させる魔力は冷気に変換され氷球にまとわりつき大きくなりつつ圧縮され透明度が増していく
その有り余る冷気は離れている"あたし"の肌までも微かに刺すように感じる
氷球が内包する魔力が中位とは思えない
(なんなの…これ…まさか"彼"は氷魔術師なの?)
思わず息をのむ
魔法を使うものには4段階ある
下位を使う魔法使い
中位を使う魔導士
現在王国に百数十人程しかいない
上位を使う魔導師
現在使用する人間が確認されていない
固有魔法を使う大魔術師
現在は魔術師は数が少ない為
魔術師は皆各国が登録し管理している
王国に登録されている魔術師の数は126
帝国は182と言われている
この数は一国が擁する魔術師の数としては異例で
近くの小国などでは最高で4〜50程度だと言われている為この2カ国ーとこの規模の大国は後2つあるがそれはまた今度ーがいかに異例かお分かりいただけただろうか
ー閑話休題ー
再び無意識のうちに息をのむ…
魔導師になんて滅多に会えるものじゃない
彼らは基本王国の軍などに所属するが
殆ど会う事は無い
"あたし"は"彼"を尊敬の眼差しで見つめた
脈動している様にしていた氷球が安定し始める
"彼"は氷弾を操る手の平を
ゆっくりと振り下ろした
そして風に乗って僅かに
聞こえる魔法の発動を促すキー
「…上位氷弾…」
その魅力的な声に鳥肌が立つ
そしてその氷球の威力にも…
(な、なんて綺麗なの…)
放たれる5m前後の氷弾は芋虫の行列を背後から抉った
氷の弾の通り過ぎた後に残るのは凍った道とまるで稀代の芸術家が遺したクリスタル芸術品の如き美しさを放つ
無数の芋虫のオブジェだった
木々の合間から差し込む光を氷が反射して虹色に輝いている
そこだけを切り取ったかの様に別世界が広がる
そこに広がるクリスタルの様な輝きを放つ氷は時を忘れる程に美く心が引き込まれそうになった
"あたし"の意識が現実に引き戻したのは"彼"
こちらを向き僅かに微笑んだ"彼"は倒れこんだ
(なっ!?魔力が枯渇したの!!)
"あたし"は急いで駆け寄り倒れている
"彼"の背に手を回し抱きかかえた
(こんな所で倒れたら危ないじゃん…)
綺麗な肌にふわりと乗っかる
長い睫毛に綺麗な鼻筋
服が黒ずくめでなければ森の妖精の様だと思った程
全身が黒く氷の魔法を使った為
人々を魅惑する冷徹な悪魔に見えてしまったが
スヤスヤと寝息をたてている"彼"の寝顔は可愛らしく
思わず笑みがこぼれてしまう
だけど
最後の笑みでなんとなく"彼"があの墓を建てた人だと感じた
"あたし"の胸の奥が僅かに高鳴った
"彼"の頭を自分の膝の上にのせようとした時に
自分の服が未だ血塗れなのを今更だが思い出し
顔が赤くなるのを感じる
"あたし"はそそくさと横にある川に向かった
【SideOut】
『Unknown』 【氷魔術師?】"彼"
必要経験値/規定経験値:Unknown/Unknown
能力:Unknown【氷属性魔法?】
加護:Unknown
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