145話≫〔修正版〕
前回よりは短いです。
ストック切れました。
不定期更新になりますがこれからも
ソウルムーブをよろしくお願いします。
ドゴォォォォォォォン……………
マッド・ワイヴァーンの脳天に向かって振り下した【古代天魔の剣】は 確実に頭部を穿ち、敵の生命を根絶させ白目を剥いたマッド・ワイヴァーンは倒れた。
俺がゆっくりと剣を引き抜けば血が面白いくらいに噴き出る。
血の霧が辺りを染める中で顔を上げてみれば、俺の視線に射抜かれたノワール・ドールは面白いくらいに動揺していた。
「ありえない」、そう言いたげに。
こうなれば俺は誰だか分からないが、
英雄と呼ばれた古人の威を借りようじゃないか。
その方が早く目的に近づく事ができる。
さぁ、まずはお前からだ漆黒人形。
「来い、ノワール・ドール。さっきの借りはきっちりと返してやる」
その時、既に進化したスキルでも覆いきれないほどに心は壊れていたのだろう。
何処かいつもと違う口調で、いつもと違う好戦的な台詞を放っていた。
どうやら俺は戦闘になるとスキルからイカれた所が溢れでてしまうようだ。
「ア………ァ"…………アァ"……………」
ノワール・ドールの黒いながらも精緻な顔が一気に歪み口が耳の辺りまで裂ける。
そして黒かった瞳は真っ赤に染まり、地獄から這い出した餓鬼のような叫びを上げた。
「…ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!!!!」
そして人体の構造からしたらありえないような動きで俺に迫ってきた。
普通の人がみれば1秒で気絶しそうなかなり速くてヤヴァイ動きだが、
今の俺には普通のダッシュに見えた。
俺の目にダッシュで映るだけ相当早いのだが。
腰を落とし、一気に地面を蹴りノワール・ドールが繰り出した右手の手刀に自ら飛び込む。
俺の胸部に接触する瞬間、半身を逸らしギリギリでノワール・ドールとすれ違う。
その時に俺は懐と短剣を抜き放ちノワール・ドールの首筋に突き立てようとした。
「…シッ!!」
そしてそれは阻まれた。
突き出した筈の右手によって。
「…なっ!」
これには驚きが隠せなかった。
ノワール・ドールの右腕は肘が逆に曲がり、俺の繰り出した短剣を握りしめていたのだ。
あの妙な動きの時点で気がついておくべきだった。関節などノワール・ドールにとっては意味がないのだと、そしてこのような軌道の全く読めない機動をする魔物には接近戦は裂けた方が良かった事を。
ノワール・ドールが俺の方を向き、いきなり着ていたドレスの胸部が裂けた。
そこから飛び出してきたのは大量の凶器。
それが爆発的な勢いでもって全て俺に迫る。
ゼロ距離で放たれた無数の凶器は避けられない。
ならば俺も同数の武器を生み出させてもらう。
スキル【武器作成:Ⅰ】発動。
このスキルの詳しい効果は一度使用した武器を生産できる。
魔力の続く限りで上限は100本。
だが試してみた所、1本1本しっかりとイメージしなければしっかりとした形にはならず戦闘には使えなかった。
だが、それは1本1本を最初からイメージしたからだ。
ようするに最初から出来上がっている設計図を頭の中で強くイメージすれば一瞬で
【武器作成:Ⅰ】は発動する。
それにスキル【超思考加速】と【並列思考】を合わせる事によって加速する並列思考の中で完全な設計図を描き、イメージする。
そして俺の周囲には瞬時にこれといった装飾もないシンプルな黒い両刃剣が無数に出現した。
実戦での使用は始めてだが、うまく行ったようだ。
俺の生み出した黒い両刃剣は全て俺の目の前に出現し、ノワール・ドールの胸から飛び出した凶器を受け止めて一瞬の時間を稼いでくれた。
一瞬でいい。その一瞬で距離を取る術を俺はもっているから。
スキル【瞬間移動】発動
俺は瞬時にノワール・ドールから距離を取って再出現した。
ノワール・ドールの動きが分からずに接近できないのならば…接近しても傷つかないだけの装甲があればいい…
そして概念魔法を発動させる。
概念魔法とはイメージの産物である。
だからイメージにより雷とも炎とも身体を重ねる事ができるのだ。
だから今の記憶を持ってすれば造作もない。
俺の仲間だった全身鎧の上位魔族の男使っていた絶対防御のあの盾の硬さを…
俺の魂に刻まれた記憶が疼く。
忘れられない記憶、蘇る懐かしいあの時…
もう戻れないあの時間…
仲間たちといた場所。
その旅の途中で仲間の1人が手にいれた
【神話武器】。
男はその時、始めて笑った。
『これで皆を守る事ができる』
そう言って…
思い出せ、今までの概念魔法のようなただ事象をイメージするだけでない本当の概念魔法を…
……【概念魔法】オリジナルスペル
「ー【我汝の大盾を借りる】ー」
発動キーを紡いだ直後、魂が今までに無いほどに震えて全身を鳥肌が覆った。
そして地面が割れ、岩や石が浮かび上がり、
次第に魔力と溶け合い、
生き物の様に脈動しだした。
その岩は俺の身体に触れて次第に全身を包んでいき懐かしい鎧の形を象った。
ソフランと言う、無口だったが誰よりも熱い男が残した大盾が、俺のイメージによりかつてソフランが纏っていた全身鎧と融合した。
「あぁ…ごめんソフラン…あの時助けられなくて…」
俺はこの世界で1000年振りにソフランの全身鎧とアルトフレールの大盾の模造品を顕現させた。
復讐。
それが俺をこの世界に送った奴ですら気がつかない、俺がこの世界にきた本当の理由なのかもしれない。
考えすぎかもしれないが、現に俺は【七光】や他のプレイヤー達を殺したあのシルバリオン等を差し向けた奴を殺したい。
そう思っているのだから、あながち間違えでは無いのかもしれないな。
だが、まずは目先の事からだ。
ノワール・ドール
この人形にもそれなりの物語があるのだろう。
そしてやりたい事も。
今ならわかる、この人形の目に映る世界は、既に色彩を失った灰色だと。
何かを境に色を失ってしまったと…
もう復讐でしか生きれない人形を見て、俺はアマツキを思い出した。
アマツキは、俺が死んだ後にこの世界に残ったのだろうか。
流石にあの崩落程度で死ぬほどやわに鍛えたつもりは無いので死んでいるとは思っていない。
だが白銀の斧巨兵も同時に地面に落下した筈だ。
3体ともレベルは100、アマツキには絶対に倒せない相手だった。
下半身の動きが遅かったことからもかなりの重量が想定された為に落下させればかなりのダメージを与えることができると踏んでの攻撃だったのだが、死んだかは分からない。
となるとアマツキは落下後に生きていたのかもしれない、アマツキの性格からしてどれだけ怒りに染まっていても勝ち負けの計算は出来るだろう。
ならば動けなくなったシルバリオン・アクストェルを尻目に逃げた筈だ。
そして俺たちが1人もいなくなってしまった世界でアマツキはどんな気持ちだったのだろうか、最後に残った俺に閉じ込められていた時は何を思っていたのだろうか…
では一緒に戦っていれば何か変わったのか?
いや、変わらずにむしろ酷くなっていただろう。
俺の選択があの時のBestだったのだから。
『お前は生きて、【七光】の仇を討ってくれ』
俺はそう言ってアマツキの未来にあったであろう選択肢を潰してしまった。
目の前のノワール・ドールのように色を映さない瞳で、アマツキも戦っていたのだろうか…
ならば、俺も、
(俺は俺の身体の半分をデータに変えた奴に会ってやる)
空を見上げる。
アマツキが復讐しかできなかったのならば、
いや、アマツキが復讐をしてもまだこの世界が誰かに管理されているならば、
アマツキの復讐は後一歩届かなかったのだろう。
だったら俺が、自分で責任を取る。
アマツキの達成できなかったであろう分まで俺が【七光】やプレイヤー達の仇を取る。
見上げた空は何処までも青く、そして憎たらしいほどに綺麗だった。
「この空のどこからみてるかは知らないが、
いつかそのツラを拝んでやる。待っていろ」
俺は目線を空から外し、ノワール・ドールをみた。
「待たせた、真剣勝負といこう」
ノワール・ドールが俺の言葉を理解したかは知らないが、両腕を身体の前に持っていき、人間の武術に酷似した構えを取った。
前の世界には無かった構えだが、放つ雰囲気が武人のそれだ。
油断はしない。復讐で動く者は強い。
だから俺はその場面で最高で最低の手段としてアマツキに俺たちの復讐を願ったのだから。
右腕を回転させながら訳の分からない軌道で繰り出してくるノワール・ドールの右腕を左手で掴み、妙な行動を取らせないようにする。
たとえ掴んだ腕が爆破しようとも武器が飛び出そうとも、今の俺には通じない。
俺の魔力が続く限りはソフランが力を貸してくれるから…
右手を握りしめ、ノワール・ドールのボディにフックを繰り出す。
だがノワール・ドールは腹部を凹ませて回避した。
多少擦り、その衝撃で腹は抉れたが大したダメージは与えられなかった。
それからは技の応酬だった。
俺が右拳を出せば左拳で殴ってくる。
俺が右脚で正面から蹴りつければ、それを受けたとしても引かずに胸部を爆散させて凶器を飛ばしてきた。
俺が【古代天魔の剣】を引き抜けばノワール・ドールは口の中に手を突っ込み、1本の日本刀を取り出した。
人形なので体液は付いていなかったが心情的にあれで切られるのは嫌だな。
ノワール・ドールの取り出した日本刀は
【古代武器】
遺跡やダンジョンから発掘される古代の武器であり、多分【VRMMO】時代の運営の作った武器だろう。
威力はやはりこの世界の武器とは比べ物にならない。
ノワール・ドールの取り出した日本刀の銘は
【嗟羅】
見覚えがある。
毒々しい紫色の鍔に周囲の空間を禍々しくゆらゆら揺らす白銀の刀身。
そして柄から伸びる紐に括り付けられた閉じた目を模したオブジェクト。
多分運営の作った呪いシリーズのTOP3に入る武器だろう。能力は斬りつけるたびにオブジェクトの目が開いて行く事。
それともう一つ、これがメインなのだが目のオブジェクトが完全に開き切るとマズイ事になる。
一度だけ、防御を無視したHP直接攻撃が出来ると言うまさにプレイヤーが運営を呪う様な攻撃なのだ。
要するに防具をつけている意味がなくなる。
どんな防ぎ方をしてもだ。
しかもその一度だけの斬撃の付与効果が厄介で、
切りつけられると高確率でその切りつけられた部位が動かなくなると言うものだった。
しかもこれは呪いよろしく回復系のアイテムや魔法が効かないという本当に呪いの武器と言うのに相応しいものだった。
久しぶりに懐かしい武器を見せてもらったがあまり嬉しくない。
ノワール・ドールは口から取り出した【嗟羅】を構えると複雑な軌道で接近してきて突きを放ってきた。
【嗟羅】の能力を防ぐ為には兎に角避ける事。
剣で打ち合うだけでも目が開いて行くのだから。
だが、ここでノワール・ドールは完全に予想外の行動を取った。
一度距離をとったノワール・ドールを訝しげに見ていると、不意に胸から一本の剣を取り出して【嗟羅】で斬りつけ始めた。
(…まさか…嘘だろ…)
ノワール・ドールの握る【嗟羅】の目が開き始める。
俺が【古代天魔の剣】でを握りしめて飛び出した時には既に目は開き切っていた。
ケタケタケタケタ。
ノワール・ドールは嗤った。
楽しそうに、楽しそうに。
…油断はしていなかった。
でも、思慮が足りなかった。
俺がシステムから解放された武器やスキルの自由度の高さに数十日で気がついたのだ。
それをこの世界に住む人や魔物が気がついていない筈がない…
(くそっ…あんだけカッコつけといてなんだが、これは苦戦しそうだ)
ノワール・ドールがただの剣の方を無造作に放り投げ、【嗟羅】を構えて突っ込んでくる。
俺は既に動き始めてしまった。
仕方ない、俺は【古代天魔の剣】でを持たない左腕で
【嗟羅】の斬撃を受けた。
「……ぐっ……がぁぁあっ」
装甲を完全に透過した攻撃が俺の左腕の中で暴れ、付与効果が発動した。
だらんと垂れ下がる左腕はこの戦いでは使用できないだろう。
解除方法は相手を倒す事しかないのだから。
俺は右腕1本で【古代天魔の剣】でを持ち、スキルを発動させた。
接近戦に限るが手数が足りない。ならば。
スキル【血分体】発動
一瞬だけ目の前が暗くなるがすぐに持ち直し、命令を下す。
「お久しぶりです。主」
久しぶりに見た小さい頃の俺は、フォールンドラゴニュートに首を跳ねられた時以来だが、寸分たがわずにそこにいた。
「フォールンドラゴニュートの時は済まなかった。状況は分かるな?」
俺の血なのだから。
「はい。主」
ソラは一気に跳躍し、胸から取り出した
【血剣ダインスレイヴ】ノワール・ドールに向かって斬りつけた。
俺もそれに続きノワール・ドールに斬りかかる。
【嗟羅】の特集効果は一度の戦闘で一度しか使えないが、それが無くても
【古代武器】なのだ。
安心などできない。
俺は【古代天魔の剣】のスキルを発動させる。
記憶を取り戻したと同時に思い出した
【Mythology.Kadiria.Online】特有の攻撃方法。
【Mythology.Kadiria.Online】は戦闘に殆どの重みを置いた
【VRMMO】のため、それだけ戦闘に関する手段は多かった。
それはMPを消費させる事でフィールドを飛び交う色とりどりで多彩な魔法に始まり、
SPを使う事でシステムアシストの補助を受けて剣を加速させる戦舞技や、
声による発動で戦場に華を添える幾千に及ぶ多彩で無限のスキル。
そしてもう一つ、MPを使う魔法と武器を使う戦舞技を合わせた様なシステムの攻撃方法があった。
それは安直なネーミングだが、【魔装剣】と呼ばれていた。
MPを少しづつ消費する代わりに剣に魔法を纏わせ攻撃する事で威力が上がり、切れ味が上がり、速度が上がる。
それは戦舞技の様にシステムに縛られた動きでは無く、より自由な動きができた。
それは魔法の様にガツガツと魔力を消費する事無く、長時間の戦闘でも効率の良い魔力の運用ができた。
だが、武器には【魔装剣】との相性と言うものがあった。
その相性は【魔法装填:】と表示され、
それによって発動の時に常にゆっくりと減る魔力を軽減できるのだ。
そして俺の【古代天魔の剣】のにも
【魔装剣】専用のスキル、【魔法装填:強】がついていた。
効果は一つ、【古代天魔の剣】で【魔装剣】を使用した場合、消費する魔力の燃費が良くなり、さらに長時間戦えるのだ。
【魔法装填:弱】なら20%軽減、
【魔法装填:中】なら40%、
そして【魔法装填:強】は60%だった。
元々【魔装剣】は長時間の戦闘に対応する為に導入されたらしく、その様にバカみたいな時間連続で発動できるらしかった。
俺はゲーム時代の様に声に出して発動する。
なれないものはこの世界でも未だに声に出したほうがスムーズに行くのだ。
システムの名残だろう。
「【魔装剣】」
虹色の光が、【古代天魔の剣】から立ち上がり、空間を侵食していく。
ゆっくりとゆっくりと減って魔力量に満足しながら俺は一気にかけ出した。
そしてノワール・ドールに向かって
【古代天魔の剣】を振り下ろす。
今までの戦舞技よりも早い速度で。
実は戦舞技は上級者になるほどに多用しなくなるのだ。
それは単純に発動している間に動けなくなるから。
だから強くなるに連れて戦舞技は卒業して自由度の高い【魔装剣】を使うプレイヤーが増えて行くのだ。
だから戦舞技よりも格段に速く、切れ味もいい。
その斬撃はちょうどタイミングを見てバックステップで後退したソラも感知できなかった。
振り下ろした【古代天魔の剣】は反応しきれなかったノワール・ドールの右腕を綺麗に切り飛ばした。
まるで豆腐に包丁をいれるくらいの抵抗感しかない。豆腐を切ったことなどないが。
そしてそのまま横に一閃するがその時は既にノワール・ドールは回避していた。
「…行くぞ。一気に終わらせる」
「了解しました。主」
俺とソラは協力して攻撃の隙を消し、隙間なく剣を突き続けた。
ソラが甘い突きを放ち、ノワール・ドールが反撃しようとしたら俺が
【古代天魔の剣】で指を切り飛ばす。
俺の突きご甘くノワール・ドールが攻めてきたらソラが牽制する。
そして遂に、ソラがノワール・ドールの
【嗟羅】を弾き飛ばし、白銀の日本刀は回転しながら遠くの地面に突き刺さった。
俺とソラが剣を突き出し、ノワール・ドールの首を左右から挟む。
そこで俺は考えた。
この魔物の弱点が分からない。
だが、首を跳ねて死ななければ燃やし尽くせば良いだけだと思い直し、
同時に剣を動かして首を跳ねた。
スキル【祖なる魔導師:II】
【全属性魔法】発動。
炎属性下位槍魔法発動
荒れ狂う炎を内包した炎の槍が顕現し、
俺は魔力を本来の下位魔法よりも多く注ぎ込み、
発動キーを唱える。
「【炎の槍】!」
それは復讐に燃えていたノワール・ドールをあっけなく塵に変える。
それは俺の未来を暗示している様にも見えた。
そういえば今気がついたのだが、
なぜ現在の魔法はスキル【属性魔法】なのだろうか。
たしかこの世界の人間もそうだった気がする。
【VRMMO】の時は魔法は魔法、スキルはスキルだった筈なのに。
この世界になってから一緒になったのか?
俺は試しに【VRMMO】時代の魔法を発動してみた。
「…少し魔法を使うから俺の後ろに居てくれるか?」
「了解しました。主」
ソラを後ろに下がらせ、俺は視線を外していた街を攻める魔物達を見た。
既にノワール・ドールの支配下から解き放たれたのか各々が街を守る人間を襲ったり森に逃げようとしていたりぐちゃぐちゃに入り乱れていた。
俺はその中で1番目立って人を襲っていたCランクの魔物、単眼鬼に標準を合わせて魔法を発動させた。
彼我の距離は2km以上あるが、ゲームの世界の様に限界のないこの世界ならば届くだろう。
「…【氷柱の弾丸】」
【氷柱の弾丸】は氷属性弾丸系統下位魔法。
ゲームの中では手をピストルの形にして発動キーを言えば放たれた魔法は、
ゲームが現実となった今でも問題なく発動され、指先にとんがった形をした15cmほどの氷柱が形成され、速度を落とす事なく狙いどおりに人を殺そうとしていたサイクロプスの単眼を後頭部から抉りとった。
(え?…スキルの魔法必要ないじゃん…。)
なんでスキルの魔法がこの世界で普及しているのか、それは分からなかったが何か隠されているのは確実だろう。
だが、まだこの世界で
【Mythology.Kadiria.Online】の時代の魔法が使えるのは心強い。
俺は概念魔法のアルトフレールを解除し、地面に帰ってゆく岩や鉱石のカケラに礼を言った。
「ありがとう」
それを隣でみていたソラは不思議そうにカナデの事をみていたという。
本物の人間ではないソラにはそういった日本人特有の考え方がうまく分からなかったのだろう。
「もう人間側が押しているしノワール・ドールが死んでからの被害は殆ど無いみたいだな。おつかれ、ソラ」
言葉した通り、洗脳とはいえ頭を失った魔物の軍勢は一気に瓦解し、人間側に各個撃破されていた。
これでは魔物側の巻き返しはないと見ていいだろう。
「はい、魔物が勝つ様な事はもう無いと思われます。お役に立てて光栄です。それでは…」
ソラの全身が赤黒い血に戻り俺の体内に戻る。
少しグロいがもう慣れた。
周りがみれば気絶しそうだが…
さて、街に帰るか。
ソラ姉やエイラ、それにロゼッタさん達の安否が気になる。
街に攻め込まれてはいないだろうからソラ姉は大丈夫だろうけど、エイラやロゼッタさん達は分からないからな。
そうして俺はマッド・ワイヴァーンの亡骸をアイテムボックスに放り込み、ウォルテッドへ帰還した。
既に周囲に魔物の姿は無く、遠くで残党狩りをする人間達が見えるくらいだった。
今回も人間側の勝利と言えよう。
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取り敢えずは、100レベルに到達した。
まずは【存在昇華】する為に必要な物を集め、
【存在昇華】させた後、魔王とやらを潰す。
そしていずれは…
理不尽な運命を俺たちに強要した
この世界を管理する者を…
殺す。
【SideOut】
英雄がこの世界に来て、始めて明確に決意した指針は。
強くなる事だった。
そして強くなる過程で、
この世界を管理する者への復讐を決めた。
だが、それを知らないこの世界の人間達は最後まで英雄を崇め讃えた。
もちろんそれが悪い事とは言わない。
心が壊れたとしても、英雄は人々に手を差し伸べたのだから。
【新・英雄譚】第一部.
最終章.第一節、【英雄の心】より一部抜粋
[種族]
:【上位人族】
[レベル]
:【LV.100】
[職業]
:【剣士】
:【戦舞技師】
:【全属性大魔術師】
:【虐殺者】
:【古の戦士】
[名前]
:【雪埜 奏】
[経験値]
:【1565/ーーーーー】
[能力]
:【戦舞技補正:強】
【体力補正:強】【筋力補正:強】
【解析の眼】【弱点解析】
【縛りの咆哮】【竜種の咆哮】
【野生の本能】【下克上】【隠密】
【暗視】【魅了】
【砂塵の爪甲】【並列思考】
【瞬間移動】【予測の眼】【血分体】
【下位従属】【超回復】
【粘糸精製】【識字】【色素調整】
【剥ぎ取り補正:弱】【異次元収納】
【毒耐性:弱】【麻痺耐性:弱】【雷耐性:弱】
【炎耐性:弱】【氷耐性:弱】new!【闇耐性:弱】
new!【武器作成:ⅠⅠ】
【格闘術補正:中】【幸運補正:弱】
【虐殺者】【古の戦士】【鈍感:超】
【剣豪:ⅠⅠ】【超思考加速】
【祖なる魔導師:II】〔8〕
:【全属性魔法】
:【魔法威力補正:強】
:【魔法命中率:強】
:【魔法操作:強】
:【魔力量増大:強】
:【魔力探知:強】
:【消費魔力半減】
:【魔力回復速度上昇:弱】
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[クラン]
:【七光】
[Point]
:【23】
[所持金]
:【1102万3千6百エル】
[称号]
:【魂を鎮める者】
:【英雄の国の者】
[!]経験値13500を獲得しました!
※規定経験値を超えました。
2Levelupします。
必要経験値がresetされます。
2Point獲得。
ボス級魔物の討伐により5Point獲得!
【武器作成:Ⅰ】→new!【武器作成:ⅠⅠ】
new!【闇耐性:弱】
感想お待ちしております。