139話≫〔修正版〕【漆黒人形】
よろしくお願いします。
【漆黒人形Side】
『貴方の名前はリズよ!私の大切なお人形さん。私のお友達!』
主は可愛らしい方だった。
意識の無い人形だった頃の私にも優しく接してくれた。
毎日毎日、服を着せ替えられお茶の時間を共に過ごし、寝る時も一緒に寝た。
食事の時もいつも主は膝にのせてくれて、
悲しい時も、嬉しい時も、
辛い時も、楽しい時も、全てを共に過ごした。
いつしか私には主の魔力が溜まり、動けるようになった。
『まぁ!リズ!貴方動けるようになったのね!でもこれはお父様とお母様には秘密よ?』
私はコクコクと頷き、それからはもっと幸せだった。
主の両親の前では人形のふりをしたが、主の前では不要だった。
だが、その幸せはそう長くは続かない…
数年後、主に見合いの話がくる。
主の家より位の高い貴族
主はこう言った。
『相手の男は嫌な噂が多いらしいって侍女が言ってたわ!私はキライよ!』
そう言った数日後、突然主は死んだ。
その柔らかな胸に鉄の刃物を生やして。
その時屋敷に来ていた貴族は言った。
『その人形は魔物だ』
主の両親は勝手に私が殺したと解釈し、
理性を無くして私に襲いかかった。
その時、一瞬振り返ってその貴族を見たとき私には貴族の口の動きが読み取れた。
『私に歯向かったからお前の主は死んだんだ。』
そして歪んだ笑みを浮かべた貴族は踵を返し主の屋敷に消えて行った。
なぜ私が動ける事がばれたのかは知らないけれど、私は無実の罪を着せられ屋敷を追われたからそれを突き止める事はなかった。
主の噴き出す血を浴びた私は全身が殆ど黒に近い赤に染まり、吸った血の分だけ身体は大きくなった。
あの時の貴族の蔑んだ顔を忘れない。
私はその人間に復讐を誓った。
月日は流れて私の復讐の対象はいつしか、
[その]が取れて[人間]になっていた。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
ケタケタケタケタケタ。
やったわ、遂にやった。
私の手に胸を貫かれたその男は胸から生命を流している。
ケタケタケタケタケタ。
これは始まり。
さぁ、狼煙を上げなさい、私の配下達。
【人形の王国】
バコンッ!!ズルズル………
地面が爆ぜ、地から腕が伸びる、そして頭が空気に晒され、逆の腕も地から這い出し、胸までが視界に写る。
腕に力を入れ腰を地に落とす、両足を地から抜き出す。
そうして現れた10人の精緻な人形。
10体。これだけで街は終わる。
ケタケタケタケタケタ。
街までの平原を埋め尽くす私の操った魔物に私の10人の配下。
全ては私の為に、全ては私の為に、全ては私の為に。
行け配下よ、時は来た。
食い止めている前線の人間どもの胸に穴を開けてやれ。
『『『『『カタカタカタカタ。』』』』』
10人の人形は嗤いながら頷いた。
でも、私が踵を返そうとした時、視界の端で人形の1体が爆ぜた。
何故?
それは数秒と経たずに見ることができた。
私が胸を貫いた男が立っていた…
服には穴が空いているのに
胸の穴が塞がっている。
『イ…ガセ…ナ"イ………
……ァ"…ア"…ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!』
辺りに悪魔の様な叫びが響き、直後。
2体目の人形が爆ぜていて、
男は素手で人形を殺していた。
あり得ない…私の10人の配下は全て…
Sランクの筈…
そして数分と持たずに、配下の人形は物言わぬゴミと化した。
『…ッ!?……何だったんだ…今のは……
…でも、Pointは溜まった。』
男は血を吐きながら呟いた。
理解は出来なかったけど良く無いことだと経験が言う。
私は狂乱翼竜をから飛び降りマッド・ワイヴァーンを男にけしかけた。
だが次の瞬間、マッド・ワイヴァーンの片翼が切り裂かれた。
片腕と片翼を奪われ痛みにのたうちまわるマッド・ワイヴァーンの奥に見えたのは、
禍々しさと神々しさ、相反する属性を宿した黒い剣を振り下ろした男がいた。
【SideOut】