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Soul-Move -新章開始-  作者: 癒柚 礼香
【魔物の侵攻】
118/145

135話≫〔修正版〕

よろしくお願いします。









爆睡からの38日目の朝。

今日は曇りだが雨が降るような気配は無く、ただ暗雲が太陽を隠しているだけの様だ。

この地方の気候は余り寒暖差の無い場所らしく、やや緩やかな春夏秋冬があるらしい。


ロートヴァイス城から出て、寝床とさせてもらった宿は城から徒歩で10分程の場所にある

【国の御膝元】と呼ばれる貴族やベテランの冒険者が御用達の宿であり、1階には貴族の食堂、隣には中堅でも入りやすい酒場がついている


ちなみに俺とソラ姉が食事を摂ったのは隣についている酒場の方だった。

ウォルテッドの侵攻のまではまだある程度の余裕がある、まだ侵攻までは3日ある為、今回は1日か2日程の余裕を持って着く事ができるだろう。

ウォルテッドの侵攻を指揮する魔物がどんな奴かは分からないが、

少なくとも堕零竜人フォールン・ドラゴニュートよりも強力な個体がでてくるのは間違いないだろう。


俺は多くても1日しかここに滞在する気は無い、心情的には準備さえ整えば直ぐにでもウォルテッドに向かいたいものだ。


だが、そうも行かない

今、俺の目の前には幸せそうにパフェを頬張るエミリーが一口食べるごとに頬を抑えうんうん言っているからだ。

もちろん眼福なので何も言わないが…


事の起こりは前日の夜まで遡る…




××××××××××××××××××××××××××××××××××




謁見も無事終わり、想像以上に国のトップ達は面白いと思いながら城から街に続く道を歩く。

暫くすれば城壁に着き、衛兵の者が城門を開けてくれるだろう。


だが、ソラ姉と雑談しながら暫く歩いていると後ろからコツコツと石畳を走ってくる音が聞こえて来た。

次第にその音は大きくなって来て、俺のいる方に来ている事が分かった。

暫くするとランタンの様な物を持ちながら駆け寄って来るエミリーが見えてきた。


「あのっカナデさん!…や、約束…覚えてますか?」


そして第一声がコレ。

約束とはあれの事だろう。


ー『その時は王国の首都の案内でもお願いしたいな…』ー


ー『は、はい!約束ですよ!?』ー


あの時は久しぶりの人との会話で張り詰めていた心の緊迫した感じが優しく溶かされたのを強く覚えている…


これが事の顛末だろう。


もちろん覚えている、あの時の人恋しかった俺が約束したのだ、忘れるわけがない。


「いや、忘れるわけがない。お願いしてもいいのかな?王都の案内を…」


「えぇ、あたしに任せて」


その後会う場所を決めたりする為に2.3言交わしたあと、


じゃあ、あたしはもう行くね」


エミリーはスキップをしながら王城の方へ消えて行った。

そして横の女性の純粋な視線。


「カナデくん…あの女の人は?」


なぜか寒気がして横を見る事が出来ず、結局友人であると説明しておいた。


俺とエミリーは次の日の朝っぱらから、王城の正面に位置する中央広場ーまぁしっかりとした名前があるみたいだが割愛するーに集まる事にした。


中央広場の真ん中には噴水が設置されており、中心には10人の見目麗しい像が立ち並んでいる

あれは属性を司る10人の神々だろう。

創成神は?と思う人もいるかもしれないが、この世界では既に殆どの人が忘れ去ってしまっているらしい。

あくまで殆どの人だから知っている人は居なくもないらしいが。

まぁ、仕方ないと言ったら仕方ないのかもしれない、人と接触しなければそれは忘れられるだろう。


そして噴水を囲むように花壇があり底には国花であるトリステインと呼ばれる薔薇によく似た赤い花が咲き誇っている。

城に使われている石と同じ色の真っ白な像にトリステインが華を添えている。

城のコントラストと同じようなその場所は写真に納めて保存したいと思えるほどだ。


ちなみにソラ姉は宿でまだ爆睡していた。

シャツがめくれ上がり教育上よろしく無い事になっており、義理だし良いよね?なんて思いかけたが寸前でとどまったのはある意味奇跡だ。

そして数分後、私服を身に纏った少女、エミリーが駆け寄って来た。


オレンジの髪がふんわりと風に乗り揺れている。

太陽の様に明るいオレンジの瞳はキラキラとしていて、これからの出来事を堪らなく楽しみにしている様に見えた。

肌と色は白いが、病弱に見える様な白さではなく、健康的な色白である。


着ている服は白いワンピースに薄茶色のレザーベストの様な物を上から着ていて、そして脚にも同じ薄茶色のブーツを履いている。

うん…凄く可愛らしいです、はい。

前の世界のモデルなんて屁じゃあ無いですね。


「すみません!カナデさん…待ちましたか?」


「いや、さっき来た所だよ。」


「で、では…行きましょう?」


と目線を落とせば差し出されている手は赤く染まり若干ではあるが震えているのが分かった。

そこまで無理して繋がなくてもいい物を…

俺は苦笑しながら手を握り返した。

一瞬、エミリーがビクッと反応したが直ぐに落ち着き火照った様に赤い頬を誤魔化すように声を出した。


「ささっカナデさん!今日はいっぱい振り回しますからねっ!」


その顔は随分と嬉しそうで、

つられたのか、気がつけば俺にも自然な笑みが浮かんでいた。

その笑顔は反則だな、エミリーにその気がなくてもドキッとさせられてしまう…

そして俺はエミリーに手を引かれて王都で1、2を争う名店と名高い

【プルーメ菓子工房】と言う花畑にあるお菓子のお店と意味らしいお菓子や甘味を振る舞うカフェに連れてこられた。


花畑は女性客を指す事からも随分と内装も女性向けであり、男性客は1人しか見当たらない…


俺はその男性客に内心で手を合わせておくことにする。


エミリーは随分とご機嫌だ。

聞いて居ない事でもバンバンと話してくれる為聞き手に回っていても飽きないで楽しい。


変わった友達が2人も出来たとか、


俺の事でアイゼント王子に話しかけられたとか、


最近よく王城で見かける黒い子猫さんに餌を上げたとか、


他愛ない話だけれども、常に動乱に巻き込まれていた者からすれば何処か心が落ち着き柔らかな気持ちになれる。


エミリーはどうやら何を頼むか決まった様だ。


「【ロートヴァイスパフェ】の中で!」


「【ロートヴァイスパフェ】のサイズは中ですね?少々お待ちください」


店員を呼びつけ甘そうなパフェと紅茶を2人分。


数分して出てきたパフェは、アイスやポッキーの様なお菓子がバランスよく盛り付けられた、まさしくロートヴァイス城に似せられたパスェだった。


因みに値段は1500エル。


一食500エル前後なのにパフェ一つで3食分ってどうよ。


まぁそれは目の前で目をキラキラさせているエミリーを見る事でチャラとなるが。


「本当に奢ってもらっても良いんですかっ?」


エミリーはどうやら今日1日は俺が奢ると言ったのがパフェを前にして後ろめたくなってしまったのだろう。


「ん?あぁ、久しぶりに会えたんだし、俺の王都案内をしてくれるお礼と言う事でダメかな?」


そういうとエミリーの色白な頬は真っ赤に染まり、満円の笑みで頷いた。


「はいっ!」


ごふっ、一瞬辺りがお花畑になったぜ。


ぱくっ…もぐもぐ


じー


もぐもぐ


じー


もぐ…ッ!?


じー


「ちょ!恥ずかしいですって!」


「いや、美味しそうだなーって。」


どうやら白と赤のコントラストは白いアイスと赤いジャムのような物がベースとなっているようだ。


さぞかし甘いだろうが、俺は前の世界では濃い物は禁止されていたしこの世界でもしょっぱい物ばかりだ。

唯一の甘味といえばフルーツを生かじりした夏かしのキウイモドキだろう。

よって俺はエミリーがパフェに刺したスプーンを拝借して横からアイスをちょっとばかし頂いた。


「あっ……………」


「うん、………甘いな……」


むむ、エミリーはそんなに1人占めしたかったのか?

でもすこしくらい貰っても良いだろうに…


「……でもこう言うのも悪くないな…」


「………」


何やらエミリーは俺の持っていたスプーンを凝視したまま固まっている。


手に持ったスプーンを右にやれば、


エミリーも右を向く。


左にやれば左を向き、


上にや…るとみせかけて下、


エミリーは騙されなかった。


面白いなこれ…


そう思っているとエミリーがおずおずと言った風に声をかけてきた。


「あの…カナデさん…あたしも…パフェ食べたいかなーなんて。」


あ、スプーン返して欲しかったのか、悪い事したようだ。


「ごめんごめん、はい、あーん。」


俺はスプーンでパフェを取ってエミリーの口に運んであげた。


「ちょ、そこまでっ!?むぐっ…………」


ボッ…


エミリーの顔が髪と同じ色になっているがカナデは気がつかずスプーンから手を話して紅茶を啜る。


ほのかな苦味がパフェの甘味とマッチしていてとても美味しかった。


ウォルテッドについたら直ぐにギルドに行き、ダインに事を話す。

そして一定ランク以上の冒険者を緊急の強制クエストなりなんなりで動員させる。

王国軍は森に面しているしどれほど駐在しているのか分からないが、あの規模の街からしたら多くても2000人程度しか居ないだろう。

最悪を考えておくと1000人位か…


あの街の冒険者の数は問題無いだろう。

近くに迷宮があるし、俺が前にウォルテッドにいた時も魔力の多い冒険者は多かったように思える。


まぁ、今これ以上考えるのは目の前の女性に失礼だな、

俺は適度な所で思考を切り上げて息抜きする事にした。

久しぶりの日常。

それは思った以上に楽しいものだった。






「あっ!あそこに居るのクロちゃんだ!」


「ほらほら!この子が王城でよく餌をあげるクロちゃんです!」


「ほらほら、おいでーぁっ…カナデさん動いちゃだめですよー!」


道を歩いていれば路地裏に黒い子猫を見つけて駆け出し、餌をあげはじめ。





「ここが王都の露店の殆どが集まる商業地区ですよ!」


「わわわっ!ここには近寄っちゃダメです!」


「え?なんでって…まぁここは商業地区ですけど…ねぇ?」


王都で賑わう商業地区を案内してくれれば、気がつけば妖艶さ漂う娼館の立ち並ぶ夕方の色街に。





「ここは王都で1番有名な宿ですね!他国の貴族や大商人などの偉い人が沢山泊まるんですよ!」


「あ、酒屋のおばちゃん!」


「なななっ!?違いますっよっ!ね、ねぇカナデさん?」チラッ


商業地区の宿泊街で城に 1番近く豪華な宿の案内かと思っていたが、

気がつけば地元の知人との世間話になっていたり。





とまぁ、戦闘の無い平和で内容の濃い1日だった。

この体験はかけがえの無い思い出となるに違いない。

そう思えた。


「…また会えますよね?」


「…まぁ…こんな息抜きもたまには良いかもしれないな」


「はいっ!」


夕焼けに染まる城を前に噴水の元で寄り添う2人。

周りからみればそれは仲睦まじいカップルのようであった。


だが、最後の最後でオチがあるのはお約束。






忘れていたソラ姉が走って来たのを見て俺は土下座の準備をするのだった。




【SideOut】



半人族(デミヒューマン)[lv:54]』 :【剣士(ソードマン)】/【戦舞技師ダンズ・ワー・トリッグ】/【全属性大魔術師オール・アトリビュート・アークウィザード】/【虐殺者(スローター)


雪埜(ユキノ) (カナデ)


必要経験値/規定経験値:565/5500



能力(スキル):【戦舞技(センブギ)補正:強】【鈍感:大】

【剣豪:Ⅰ】【体力補正:強】【筋力補正:中】

解析の眼(アナライズ・アイズ)】【弱点解析ウィクネス・アナライズ】【縛りの咆哮(バインド・ロア)

竜種の咆哮(ドラゴ・ロア)

野生の本能ワイルド・インセィティクト】【下克上】

隠密(スパイ)】【暗視(ナイトヴィジョン)】【魅了(チャーム)

【砂塵の爪甲】【思考加速(アクセラブレイン)

【並列思考】【瞬間移動(ワープ)】【予測の眼(ヴィジョン)

血分体(ブラッド)】【下位従属】

超回復(ハイ・リカバリ)】【粘糸精製】【識字】【色素調整ピグメント・アジャストメント

【剥ぎ取り補正:弱】【異次元収納(アイテムボックス)

【毒耐性:弱】【麻痺耐性:弱】

【雷耐性:弱】【炎耐性:弱】【氷耐性:弱】

【武器作成:Ⅰ】【格闘術補正:弱】

【幸運補正:弱】【虐殺者(スローター)

----------【祖なる魔導師:Ⅰ】----------

全属性魔法オール・アトリビュート・マジック

【魔法威力補正:強】【魔法命中率:強】

【魔法操作:強】【魔力量増大:強】

【魔力探知:強】【消費魔力半減】

---------------------------------------


残存Point:[32]


所持金:[1103万エル]


称号:【魂を鎮める者(クロムソウル)

英雄の国の者カントリーキングダムパーソン













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