127話≫〔修正版〕
よろしくお願いします。
新しい概念魔法の研究もとい妄想にふけって数時間。
気がつくと空は綺麗に晴れ渡り、時間的には多分昼ごろになっていた。
あれからまた二度寝したのかベットの上のもっこりな姉は未だ布団をゆっくりと上下させている。
だがそろそろ発行されたギルドカードを受け取りにかねばならないのでソラ姉を揺り起こす。
そしてまだふにゃふにゃしているソラ姉を連れて街に繰り出した。
と言っても歩いて十数分の所にあるギルドに向かうだけなのだが…
そうしてギルドに至り、
とくに問題を起こす事なくギルドカードを受け取る。
もちろんソラ姉のギルドランクは初心者のEランクだ。
説明は俺が暗記しているので大まかな事を要点だけ教えておけば十分だろう。
そういう事で晴れて冒険者デビューしたソラ姉だが、
生憎と武器が無い為戦う事もできないし、
武器の無い冒険者だとなんかしっくりこない。
何が使えそうかも分からないし、
正直悩むが、短剣やダガー程度は持たせておけば最低限大丈夫だろう。
そう思い、やっと意識が覚醒したらしいソラ姉を連れてギルドから近い南側にある商業地区に向かった。
迷宮の転移門【ゲート】がある広場を囲む様にして並ぶ店や露店の数々を冷やかしながら俺は至って普通の悩みに頭を捻っていた。
(あれ、店が多すぎて何処に入ればいいか分からないぞ…)
こんな事ならギルドの受付嬢にオススメを聞いておけばよかった。
だが、考えていても埒があかないし、露店に並ぶ短剣やダガーを解析しながらソラ姉にあった武器を探して行くか…
ソラ姉にその事を話すと刃物を持つ事にちょっと怖がっていたが、
あくまで護身用程度だと言っておき、
そういう本格的なのはおいおい出来るように練習していくと説明する。
いくら俺と何時も行動を共にしていると言っても絶対に守れるとは限らないのだから…
そんなのこの世界で目が覚めた時に嫌という程実感した。
そしてこの世界は力無き人が生きていくには厳しく出来すぎている。
俺は雲の見当たらない蒼天を見上げた。
「これもプレイヤー基準だった時の名残りなのだろうか…」
うわ言のように呟やいた言葉は、
隣にいたソラ姉にも聞こえる事なく空に消えていった…
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時刻も多分昼頃になり、露店を冷やかしながら特にめぼしい物も見つからず。
少し落胆しながら露店で探すのを諦めようとした時、
不意に1つの露店に目が止まった。
「ソラ姉、この短剣持ってみて。」
「いらっしゃい君は目の付け所が良いな」
地面に置かれた木箱に腰を下ろす黒いフードで顔を隠した怪しげな男が小さな声で呟くが、
怪しすぎるので適当に無視しておく。
俺が手にとった短剣に装飾は殆どなく、
特にこれと言った特徴の無い短剣である。
柄に巻かれた茶色い革は所々擦り切れていて年季を感じさせ、
強いて特徴を言うなら刀身の側面に彫られた小さな紋章がある点だろうか。
十字に交差された剣の紋章は溝に赤い塗料が染み込ませてあり、
その塗料も若干色あせているが僅かな魔力を感じた。
ソラ姉はいきなり短剣を進めた俺には怪訝な顔をしたが、
直ぐにいつもの表情に戻って恐る恐るといった感じで俺の手の上に乗る短剣を手に取り、ゆっくりと握った。
「え?…はい。これで良いですか?
…って…あれ?なんだか手に馴染んで…
まるで昔から使っていたような気がします…」
ソラ姉の握った短剣には簡単なスキルが1つ付与されていた。
【親和率上昇:弱】
このスキルは長年使った道具が手に馴染むのと同じような効果をもたらすようだ。
どうやらこの武器はれっきとした
【魔法武器】のようで
ステータスに表示されていた銘は、
【古き優しさの短剣】そんな安直な名前だった。
「勝手に選んじゃったけど、これで大丈夫かな?」
「は、はい、大丈夫だと思います!ありがとうカナデくん!」
ソラ姉は手に馴染む短剣に少し不思議がるような仕草を見せたが、
馴染む事が嬉しかったのかその疑問は直ぐに引っ込み、
嬉しそうに短剣を振り回して喜んでいた。
もちろん危ないから直ぐにやめさせたが。
だが、こんな物を貰っても嬉しく無いだろうに、
女性なんだから今度はちゃんとしたアクセサリーとかも買ってあげるのも良いかもしれないと思った。
再開の記念として。
「この短剣の値段は?」
俺は黒いフードの怪しげな男に話しかける。
「そいつは手に入れるのに苦労したから2万だな。」
まぁ、腐っても【魔法武器】。
むしろ安い方だろう。
「妥当だな、よし!決まりだ。」
露店の黒いフードで顔の見えない怪しげな男はフードのしたに隠れた口をニンマリと笑わせた。
俺はスキルもついてるし妥当な値段だと納得し、素直に2万エルを渡す。
「…まいどあり」
ソラ姉の装備を整えた時の値段が3万エルだったので短剣1つにしてはある程度高いとは思うが、
手に馴染む武器と言うのは俺の持っている剣と同じでいざという時すっと抜く事が出来る。
何かしらに役立つ筈だ。
まぁ使わない事が1番なんだけどな。
まぁそれが叶うと思うほどアマちゃんな思考はとうの昔に捨てたし、
いずれ戦わせて戦闘訓練を積ませるつもりだ。
プレーンラビットあたりで。
後で宿に帰ったらソラ姉のステータスの確認もしなければならないし、
やる事は山積みだな。
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宿に戻り、お互い椅子とベットに座り対面する。
ちなみに椅子は俺、ベットに腰掛けるのはソラ姉だ。
ソラ姉には何をするか事前に説明してあるので特に動揺する事なく俺と目を合わせている。
一定の経験値を蓄積する事で上昇するレベルと言う物が支配する異世界。
ソラ姉はなんとなく前いた世界とは違うと言うのは分かっていたらしく、
思いのほか話を飲み込むのが早かった。
ソラ姉はあまりゲームをやらないと思っていたが、
案外そう言うのも好きだったらしくタイトルこそ忘れたが、
数本の【VRMMO】はやった事があるらしい。
以外すぎて少し唖然としたが、どうやらやっていたゲームはどれも
御花畑を大きくする【VRMMO】や、
牧場でモフモフの動物を育てるような【VRMMO】だったらしい。
案外俺のイメージそのままだった。
そんな事を思いつつ、
スキル【解析の眼】を発動させる。
どうやらレベルが上がって魔物の表示が詳細になったのと同じで、
人のステータスも詳細になったのだろう。
それともソラ姉のステータスだからここまで詳しく見えるのだろうか…
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『半人族[lv:4]』 :
雪埜 空葉
必要経験値/規定経験値:0/500
能力:
【戦舞技補正.強】
称号:なし
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まぁ妥当だろうな。
レベルの欄も俺がスタートした時と同じで
[lv:4]からのスタート。
経験値も500貯めれば5レベルにアップする。
それにスキル【戦舞技補正.強】の効果は『戦儛技発動時の威力.速度[強]上昇』だろう。
多分ポイントもついているだろう。
レベルが上がれば表示に出てくる筈だ。
ポイント制度があると言う事はこの世界の住人じゃ無い人の特権。
選択の自由、これだけで軽くチートだ。
まぁ、狡いと言われてもある物は活用しなければ生き残れないのでこればっかりは仕方が無い。
そしてソラ姉にもある程度強くなってもらう。
ソラ姉と俺の種族、これは他にこの世界に来た人間を過去なり現在なり文献なり旅してなり探して行けば分かるかもしれないが現状なんとも言えない。
そして最初に1つだけある戦舞技に補正のかかるスキルは何なのだろうか。
俺らのデフォルトかな?
まぁ今突き詰めて行っても分かるまい。
俺はソラ姉のステータスの大まかな把握をひとまず終わらせた。
どうやらソラ姉も自身のステータスを呼び出す事が出来たようで
それによって分かったのは、
自分で出したステータスは他人に見られる事は無く頭の中と目の前にスクリーンとして表示する2通りの手段があるということで、
そのどちらも他者からは感知されないようだ。
良い短剣が手に入ったり、
色々な事が分かって今日は良い1日だったといえよう。
夕焼けが窓から差し込み俺の下がりつつある瞼を照らす。
そして気がつけば椅子に座ったまま深い眠りに落ちていた。
『おやすみなさい…カナデくん…』
眠り際に聞こえたその声は、
甘美な響きを脳内に反響させながら沈む意識と共に消えて行った。
【SideOut】
『半人族[lv:54]』 :【剣士】/【戦舞技師】/【全属性大魔術師】/【虐殺者】
雪埜 奏
必要経験値/規定経験値:0/5500
能力:【戦舞技補正:強】【鈍感:大】
【剣豪:Ⅰ】【体力補正:強】【筋力補正:中】
【解析の眼】【弱点解析】【縛りの咆哮】
【竜種の咆哮】【野生の本能】【下克上】
【隠密】【暗視】【魅了】
【砂塵の爪甲】【思考加速】
【並列思考】【瞬間移動】【予測の眼】
【血分体】【下位従属】【超回復】
【粘糸精製】【識字】【色素調整】
【剥ぎ取り補正:弱】【異次元収納】
【毒耐性:弱】【麻痺耐性:弱】
【雷耐性:弱】【炎耐性:弱】【氷耐性:弱】
【武器作成:Ⅰ】【格闘術補正:弱】
【幸運補正:弱】【虐殺者】
----------【祖なる魔導師:Ⅰ】----------
【全属性魔法】
【魔法威力補正:強】【魔法命中率:強】
【魔法操作:強】【魔力量増大:強】
【魔力探知:強】【消費魔力半減】
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残存Point:[32]
所持金:[1103万2千1百エル]
称号:【魂を鎮める者】
【英雄の国の者】