11話≫〔統合版〕
よろしくお願いします。
目が覚めてから15日目の朝を迎えた。
今日は朝から気温が高くて暖かいが、
風はある為か不思議とジメジメした感じはせず、比較的快適な気候である。
それでも昼頃にはかなり気温が高くなってくるだろう。
そんな事を伺わせる天気であった。
それに空は雲の存在を忘れたかのように晴れ渡っていて、
青空が今日も世界を見渡している。
今日は雨が降る事はなさそうだ。
まぁ目が覚めてから一度も雨には遭遇してないけどね。
ここら辺は森の奥に山脈も広がっているし、もしかすると雨が降りづらい気候なのかもしれない。
この天気の良さならお昼頃に近くの川で水浴びするのもいいかもしれない、
そんな事を考えながら今日は午前中の間に出来るだけ身体の汚れるような事をやって行きたいとおもう。
まぁおもに身体を動かしたり肉を取る為に戦ったりする事になるのだが、
人里に出るやしろ、戦うしろ、レベルをあげないこの世界生きて行くのは大変である。
この世界は"レベルの低い人間"にとって
生きていくには辛過ぎる。
そんな気がしてならない。
そんな思考に周囲の警戒が鈍ったのか、
もはや毎度お馴染みの存在と化したゴブリンが周囲からぞろぞろと俺を囲むように現れた。
数は4匹、そいつらは各方向に別れ四方から俺を囲んでいる。
もういつもゴブリンと遭遇する理由を聞くのはやめて欲しい。
(はぁ…なんでかなぁ…魔物にモテても嬉しくないし。…はぁ…)
ひとしきり落ち込んだ後気を取り直して剣を抜く。
と、見せかけて、
ゴブリンの集落を殲滅した時に回収しすぎた短剣を右手に2本、左手に2本もつ。
そして戦舞技ー【一投刹那】を放つ。
両手に持った4本の刃の内、左右に持つ1本ずつ持つの短剣が閃光を纏った。
そして俺が短剣を両手から1本ずつ放たれた。
「「………グァ?………………」」
2匹のゴブリンは自分に起こった事態を認識する前に目から光を消した。
ややカッコつけて見たものの、
やはり短剣の戦舞技として発動できる手数は最高で2本が限界らしい。
多分剣も2刀流が限界なのだろう。
何と無くそんなかんじがする。
放たれた2本は寸分違わずゴブリンの眉間に突き刺さり、それが当たり前の事と言わんばかりに命を刈りとった。
残りの2体にも再び【一投刹那】を使い左右の手に残った短剣を放つ。
「「グギャァァ!…」」
「…グェッ…「グガ……」………」
放たれた短剣は混乱に陥ったゴブリン2匹の眉間を貫き命を刈り取った。
こうすれば短剣を間髪入れずに放てる事がわかり、それなりに満足する事が出来た。
もはや感覚は麻痺し、罪悪感は感じない。
ただ、殺した。
その事実を正面から受け止める事が出来るようになったのだ。
スキルの影響があるとは言え、人間の慣れとは恐ろしいものだ。
最初に吐いていた俺と今の俺が同じとは思えない。
倒したゴブリンの眉間から短剣を抜き取り血を降り払う。
そのときに返り血が服についてしまったがどうせ水浴びをする予定だ。
特に気にするような事ではないだろう。
ズポッ…
ブジャァァァア…
思ったより汚れたからしっかり洗わないと臭いが残るだろうが………問題ない……。
ゴブリンを返り討ちにしたところで次は薬草探しをする為に視線を足元に向ける。
前々から薬草関連は探したかったのだが中々時間が取れなくて探してなかったからな。
今はスキル【解析の眼】があるから毒の心配は無いだろうし、ある程度野草を食べても大丈夫な気がする。
そう思い、手あたり次第に草や葉っぱを掴み【解析の眼】にかけていく。
[ピクピク草]
麻痺毒
[リンゴモドキノ葉]
毒草。
症状:下痢、嘔吐、出血。
[ドキノ葉]
葉のみ有毒、下手をすれば心臓が止まり死に至る。
症状:眩暈、動悸
[ドンビキ草]
取り敢えず臭い。
[草]
草。
[薬草]
微回復。調合により回復薬作成が可能。
様々な草、主に毒ばっかだったが、6本目にしてやっと薬草が見つかった。
それにしてもこの森はロクな草や葉が生えていない…
だから芋虫が少ないのか…
なんか芋虫が可哀想に思えてくるのだから不思議だ。
取り敢えず群生していた薬草を摘み取り、
何と無くこうしたらいいんじゃ無い?
みたいな感じで作っていく。
まず川で洗った石を2つ用意して、
それを使って薬草を綺麗にすり潰す。
薬草がペースト状になったら、
苦いのは嫌なのでキウイモドキの実も投入して更にすり潰す。
そして空の小瓶に流し込み完成。
素人が作った割には何と無く出来上がってしまったそれを【解析の眼】にかけてみた。
回復薬(笑)
効果:中回復。
品質:上出来(笑)
いろいろ突っ込みたいが、
自作にしてはかなりのクオリティの回復薬が出来たんじゃないだろうか。
比較対象がいないのは残念だが…
取り敢えず空いている4つの小瓶に詰め込んで4本の回復薬(笑)を作成しておいた。
これで戦闘ももう少し大胆な動きが出来るだろう。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
お昼はキウイモドキを美味しく頂く。
もしゃもしゃもしゃ。
また焼肉をお腹いっぱい食べるためにアックスホーンラビットを倒しに行くとする事に決めた。
お腹が減っては戦は出来ぬ、だからな。
キウイモドキを2つも食べて栄養満点になった所で、
回復薬(笑)の蓋を漏れないようにしっかりと止めている事を確認し、丁寧にポーチにしまう。
そして身体にこびりついたゴブリンの返り血と自らの汗を洗い流す為に川へ向かった。
水を片手で掬い、軽く顔を洗う。
それにしても相変わらず綺麗な川だな。
水色の絵の具を垂らしたかのようなアクアブルーの水が太陽の光を反射しているのがとても幻想的だ。
思わず一幕を脳内フォルダに収めた。
まずはいつも羽織っている長めのレーザーコートを洗う。
この素材はかなり軽くて肩が痛くなったりしないで好きなのだ…
面倒臭がって血の匂いが取れなくなったりしたら嫌だから入念に洗う。
ゴシゴシゴシゴシ……
そしてこびりついた血を綺麗に洗い流し、
臭いもある程度落ちてきたら近くの日の当たる木の枝にかけておく。
天日干しと言うやつだ。
お日様の香りと言うのはとても気持ちいいからな。
インナーのシャツも下に履いていたズボンも同じく全て水でよく洗い流す。
ゴシゴシゴシゴシ……
そして最後に自分を洗う。
身体に付着した汗や汚れを入念に洗い流して綺麗にする。
次に髪についたゴブリンの血や自身の汗を水につけてゴシゴシと擦って洗い落とす。
頭を左右に振り髪についた水分を振り落として、
もう一度身体の隅から隅まで洗う。
昔から身体を綺麗に保つのが好きだったしお風呂も大好きな子供だった記憶がある。
病院に入院してからは身体が動かし辛くなって行ったのでしっかりと洗う事は出来なかったが、
その分今は倍近くの時間をかけてしっかりと汚れを落としていく。
ふと、発動しっぱなしにしになっているスキル、【野生の本能】に反応があり、チクリと変な感覚を捉える。
(視線…か…?こんな森の奥で?)
普通男の裸を覗く奴なんて限られている。
ゲイのゴブリンか、
人間のゲイだ、
それがなんかしらの生物のゲイだ。
だけどここは森の中。
人間のゲイが無くなるとすると…
残るのはゲイのゴブリンだ。
俺は脳内の抹殺ボタンを押そうとするが、
少し気になる事がある。
ゲイの視線に肉欲や敵意、その類の意思が含まれていない様な気がする。
ゲイのゴブリン、いや、
ゴブリンに性欲を抑える意思は無い。
と、なるとゲイのゴブリンでは無いのだろうか。
いや、まずゴブリンですらないのかもしれない…
となるとやはり人間のゲイか!?
いや、早合点はよくない。
生憎と【魔力探知:中】のギリギリ圏外という所から視線を感じる為、
視線からは種族の判別など出来ない。
距離は18m程だろうか…
まぁ視線が凄く純粋な感じだからほっといても大丈夫かな。
そう思い、俺は暖かな光がさす中で足が汚れるのは嫌なので靴だけを履き。
裸で半濡れの服を手に持ちながら森の中に戻って行った。
【SideOut】
『半人族[lv:12]』 :【剣士】/【戦舞技師】
雪埜 奏
必要経験値/規定経験値:199/1300
能力:【戦舞技補正:強】【鈍感:中】【剣術補正:強】
【魔力探知:中】【体力補正:強】
【解析の眼】【弱点解析】【縛りの咆哮】
【下克上】【野生の本能】
【全属性魔法】
残存Point:[2]
加護:なし
称号:【魂を鎮める者】
経験値246を獲得しました。
Levelupします。
必要経験値がリセットされます。
1Point獲得
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【エミリーSide】
アーミーの近くでゴブリン達に襲われてから6日が経った。
もう詳しい日にちを数えるのも億劫になるほどに疲れてしまった。
(…足が重い……柔らかいベッドで寝たい……水浴びしたい…パフェが食べたい…うぅ…)
今日も日が登る前からずっと歩いている。
かなり歩いた筈なのに森が終わる気配はない。
木はどれも同じに見える。
森で遭難するときによくある原因は似た景色のせいでどこにいるのか分からなくなる事。
あたしそれをやってしまったのかもしれない。
常夜地帯と逆に進むようしているとはいえ、
木々に阻まれ長時間見えなくなる事もある。
それに最近妙な魔物の死体をよく見るようになった。
雷で丸焦げにされた様なゴブリンやら、
真っ二つにされたアックスホーンラビットやブレイドホーンベアー。
全て腐敗が始まっていることから2、3日前にやられたのだろうけど…
1番可笑しいのはどれも共通して素材が剥ぎ取られていない事。
ゴブリン程度の魔物をいたずらに殺したのならまだわかるけど、
アックスホーンラビットやブレイドホーンベアーはそんな簡単に倒せる魔物ではない。
今の所考えられるのは2つ。
1つは剥ぎ取ることを知らないがかなりの実力のある人間がこの森の何処かにいる。
2つは【混沌の山脈】や、
【迷いの大森林】から【深淵の密林】に降りてきた砂塵鳥爪獣のようなイレギュラーな存在がここら辺を徘徊している。
2つとも有力すぎる。特に後者は前例があるだけに余計に…
1つはゴブリンの集落の事がある。
あれだけのゴブリンを殲滅するのは1人では時間がかかるし囲まれれば軍人の端くれであるあたしでも死んでしまう可能性が高い。
というより確実に死んでしまうだろう。
あたしは近接専門ではないのだから。
2つはやはり砂塵鳥爪獣の前例があり、
過去、Sランクや災害指定級の魔物が"複数同時"に人間の生活領域付近または生活領域に出現した事は0では無いのだから。
あたしとしては是非前者である強い人が原因だと願いたい。
そっちの方がまだ会話の余地がありそうだからね…
まだ死にたくはないしね…
そんな事を考えながら常夜地帯とは逆に歩いていると木が次第に疎らになり、
「…え?……」
サラサラと水の流れる音が聞こえてきた。
(うぉっしゃやぁぁ!♪やっと水浴びできるわっ!!)
あたしは未だにアーミーの血が身体中に付着していて固まったまま。
こびりついた血は完全に固まり、既にひび割れている。
今の季節はまだ風、火、土、氷の土の月の中頃の筈。
まだ川の水はそこまで冷たく無い筈だし、
ここらへん一帯は氷の月でもそんなに寒くならない気候だったと思う。
だから氷の月に入ってもまだ帰れなかったとしても森の中で凍死する事は無いだろう。
そう思いながらも足を進めてやっと川に着いた。
川の水は綺麗に透き通っていて、水は太陽の光を反射して輝いている。
所々で泳ぐ魚は水の中を悠々と泳ぎあたしの疲れ切った心に安らぎを与えてくれた。
やっとの思いで辿り着いた川の横で服を脱ごうと裾に手をかけた時、
聞いた事のない不思議な…
異国風の綺麗な歌声が聞こえた。
【SIdeOut】
『人族[lv:20]』:軽剣士/※巨鳥操士
エミリー・アーミアル
必要経験値/規定経験値:92/2100
能力:【剣術補正:弱】
【巨鳥通心】使用不可!
加護:火神フライオヌの加護
※巨鳥操士のジョブは現在使用不可状態となっております