125話≫〔修正版〕
よろしくお願いします。
今は35日目の昼ごろ。
偶然か?必然か?
ボロボロの服を纏い、
千切れた鎖を手足に巻き付けた彼女、
雪埜空葉…
前の世界で生きていた頃、ソラと呼んでいた彼女が俺の前に現れた。
僅かに毛先がウェーブした艶のある黒髪を持ち、
やや切れ長で官能的な目、
綺麗に整った鼻、
肌の色は日本人の特徴を少し薄くした白、
顔立ちは可愛らしさを残しては居るが綺麗系。
彼女はこの世界の言葉を理解する事が出来ていないらしい。
まぁ、そんな事もあるだろうとそこまで深くは考えなかったが。
スキルでも取れば話せるようになるだろう。
俺は今だ胸にうずまり上目遣いで見上げて来るソラを見下ろしながら、
なんとも言えない懐かしさを感じたが義理と言えど姉にドキュンは倫理的にマズイので話を逸らした。
多分上目遣いは無意識だろう。
恐ろしき我が義姉。
「…ソラ…そろそろいいかな?」
「あ、ごめんなさい。」
ソラすぐに俺の胸から離れ目の前にぺたんと座った。
そしてまずは今まで何をしていたのかを聞いた。
すぐに話を聞く事ができ、
大体のあらすじは理解できた。
どうやら随分とこの世界も狭いようだな。
ソラの話に聞いたゴスロリの漢の人。
あれ?なんか記憶がミシミシいっているよ。
もう…カマさんしか思い当たらないよ…
それについてはカマさんに会った時に詳しく聞く事にしよう。
日本人の十八番の棚上げというスキルである。
「ねぇ、ソラ」
「ん?どうしましたか?」
「友達にソラっていう男の子が居るんだけどさ、名前も被っちゃうからソラ姉って呼んでいいか?」
「え!……「あ?嫌だった?そうし」だ、大丈夫!ソラ姉って呼んでください!!…「わ、分かった」…」
そしてこれが今時の職の無い若人の必殺技、匠に話を逸らすである。
なにか生温かい雰囲気になってしまったが許容範囲だろう。
結局俺はブラッティ・ドールのソラと混ざってややこしいから、ソラ姉と呼ぶ事になった。
取り敢えず俺とソラ姉はグローリー・ヒルを抜けて衛星都市アマナドに向かう事にした。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
大空に舞う重なり合う2つの黒点から大きな悲鳴がこだまする。
「あー。大丈夫?ソラ姉?」
「だっ!大丈夫な訳ないじゃないですか!?なんでカナデくんは空飛んでるのですかぁぁぁ!!」
俺は今ソラ姉をお姫様抱っこし、風の概念魔法【我一陣の疾風を纏う】で悠々と空を飛んでいるのだ。
「…ソラ姉に説明したじゃん。これは魔法だよ?って。」
「そ、それはそうですけどっ!!」
ソラ姉は顔を赤くしたまま騒いでいる…
顔が赤いのは酸欠か?でも元気だしなぁ。
空を羽ばたく小さな鳥たちの横を静かに通り過ぎたりしながら空を駆ける。
地平線はどこまでも続き、
遠く北には黒々とした領域にある森や山脈。
手前にみえるあれは【深淵の密林】。
そしてその奥に見える更に暗い森は
【迷いの大森林】。
そして最奥にそびえる山々は【混沌の山脈】だろう。
そして東に見えるのは城壁。
あれが衛生都市アマナドだろう。
ソラ姉を抱きかかえた俺はゆっくりとアマナドに向かう。
アマナドに行っても特にやる事は無い。
なのでアマナドにあるダンジョンを上空から少し見た後、降りてソラ姉の服と装備を買おう。
十分に金はある。
特に気にする事なくしっかりとしたモノを買う事が出来る筈だ。
暫く飛んでいると城壁が目の前に見えてきた。
高さは6m程だろう。
余り高いわけでは無いのは国境に面している訳では無いからだとおもわれる。
そして1番目が行くのが街の上空に見える巨大な階段の様な建造物。
あれが【巨人の階段】か…
何故か空から降り注ぐ太陽光はその階段を透過して下の街に問題なく降り注いでいる。
やはり謎すぎるファンタジー。
俺には理解できん。
【巨人の階段】は上まで段々と続いていて、
空中に浮いている階段と階段の間には一本の塔が聳えている。
バランス的におかしいのに斜め上に伸びて行く階段を支えているのがここからでも見えた。
まじファンタジー。
どうやら小さな人間はあの塔を登って上層に行くようだ。
上層は雲に隠れて見えないが、
何処まで続いているのだろうか。
ここからは1階層の段の上が見える。
そこはどうやら森の様になっているらしく鬱蒼としていて階段の床を見る為には炎で森を焼き尽くさない限り叶わないだろう。
魔物の侵攻を食い止めたらまた来たいものだ。
黒髪が目立って門番に止められて云々が面倒なのでまた侵入する事にした。
今回は上空からの侵入だが。
スキルで気配を消しながら高度を下げて路地裏に降り立つ。
ソラ姉は街をしっかり見るのが始めてなのか路地裏から出るとあたりをキョロキョロと見回している。
だが、周りの視線が凄く強い。
流石に2人組の黒髪の男女と言うのはまずかったのだろう。
俺は面倒なのですぐ近くにあった防具を扱う店に飛び込んだ。
…カランカラン……
ドアを開けるとベルの音色が部屋に響き7畳程の部屋の奥の通路から1人の小柄な男が出てきた。
男と言うよりおっさんだろうか…
何故かおっさんによく会う気がしなくも無いが、
認めると泣きたくなるので保留しておく。
「いらっしゃい、何かお探しの物でも?」
まぁ、ついでにソラ姉の装備も一式見繕ってもらうか。
「あぁ、隣の女性に会う装備を見繕ってくれ。」
「え?良いですよ迷惑かけられないし…」
「まぁ、その服装で居られても困るしね。」
そう言うとソラ姉は自分の服を見て恥ずかしそうに身をよじり俺の方を涙目で睨んできた。
ふぐっ…なんて攻撃力だ……
まぁ、確かに防御力が問題あり過ぎるしその服じゃ次の魔物の侵攻で守り切る自身がない。
今のソラ姉の服は袋に穴を開けて被った様な貫頭衣と手足の枷のみ。
して貫頭衣は少しチラリズムしすぎてて教育に良くない。
脇の辺りから小さいとは決して言えない綺麗な形の横ティティがみえるのだ。
ソラ姉の視線が痛くなってきたので話を変えるが、
よく見ると僅かに魔力を発する首に犬につける首輪の紐みたいな物が巻かれている。
ソラ姉曰く、豚の商人に巻かれたとの事でテンプレ的な思考でいくと多分アレだ。
奴隷を隷属化させる首輪の様な物だろう。
そう思い解析をかけてみれば案の定
【隷属の首輪】と呼ばれる遺跡から出土した魔道具の模造品だった。
今の奴隷に付ける【隷属の首輪】は全てその魔道具の模造品、いわばコピーらしく、
制度は落ちるが量産出来て良いらしい。
と、言う事もあり一目で奴隷と分かってしまうだろう。
防具を扱う店の店主の小柄なおっさんもそれが分かったのだろうか。
持って来たのは首まである長袖のシャツとスキニーパンツの様な物に銀色に光るチェーンメイル、
それに黒に染められた革製の胸当てや肘、膝のプロテクターと灰色に近い黒に染められたフード付きのコートだった。
「シャツにパンツで2000エル
チェーンメイルが5000エル、
胸当てと肘と膝のプロテクターが合わせて15000エル、
フード付きのコートは10000エル、
合わせて32000エルだが切り良く3万エルで良い。買うか?」
悪くない値段である。
むしろお得では無いだろうか。
見繕われた装備全てを解析してみても全てしっかりとした本物であり、頑丈そうだ。
「あぁ…それで良い。」
「まいど、それじゃあサイズを合わせるからこっちへきなお嬢さん。」
「ソラ姉、サイズ合わせるからこっちきてだって。」
「あ、はい…分かりました」
小さいおっさんはそのやり取りに違和感を覚えたようだが、言葉が通じないとわかったのか直ぐに納得した顔をしてソラ姉を手招きした。
この世界のおっさん達まじ良い人やわ…
数分後、装備を付けサイズの調節を終えたソラ姉を見てやはり綺麗な女性は何を着せても似合うと言うのを強く感じた。
そしてきっちりと3万エルを支払い店を後にする。
後は冒険者ギルドに寄ってソラ姉を冒険者にして、
最後に飯の食える酒場と繋がっている宿でも探すとするか。
【SideOut】
『半人族[lv:54]』 :【剣士】/【戦舞技師】/【全属性大魔術師】/【虐殺者】
雪埜 奏
必要経験値/規定経験値:0/5500
能力:【戦舞技補正:強】【鈍感:大】
【剣豪:Ⅰ】【体力補正:強】【筋力補正:中】
【解析の眼】【弱点解析】【縛りの咆哮】
【竜種の咆哮】【野生の本能】【下克上】
【隠密】【暗視】【魅了】
【砂塵の爪甲】【思考加速】
【並列思考】【瞬間移動】【予測の眼】
【血分体】【下位従属】
【超回復】【粘糸精製】【識字】【色素調整】
【剥ぎ取り補正:弱】【異次元収納】
【毒耐性:弱】【麻痺耐性:弱】
【雷耐性:弱】【炎耐性:弱】【氷耐性:弱】
【武器作成:Ⅰ】【格闘術補正:弱】
【幸運補正:弱】【虐殺者】
----------【祖なる魔導師:Ⅰ】----------
【全属性魔法】
【魔法威力補正:強】【魔法命中率:強】
【魔法操作:強】【魔力量増大:強】
【魔力探知:強】【消費魔力半減】
---------------------------------------
残存Point:[32]
所持金:[1106万2千1百エル]
称号:【魂を鎮める者】
【英雄の国の者】