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Soul-Move -新章開始-  作者: 癒柚 礼香
【魔物の侵攻】
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122話≫〔修正版〕


よろしくお願いします。






【カマバール・リードレールSide】



俺の名前はカマバール・リードレール。


冒険者で最高峰であるAランクになってから、早くも10年が経とうとしている。


付けられた二つ名は【滾るオカマ】。

何故そのような二つ名を付けられたのか、

未だ俺には分からないし分かりたくもない。



周囲の人々は服装がダメとよく俺に言う。

だがこれは俺の趣味なのだ。


風になびくフリル。

戦う時にふわりと舞うスカート。

怪我を防止するニーソックス。

そして白地にピンクのレースをあしらったこの服は対人戦で相手を油断させる。


機動力も防御力も共に問題なし。

それにデザインも文句のつけようがない。


何故人々は俺を見て批判するのか理解できない。




カナデと共闘した日の後日、

俺はウォルテッドの冒険者ギルドに来ていた。


そこで兎の耳を持つ女性が俺には声をかけてきた。


「あ、あの…Aランク冒険者のリードレールさんですよね…?ギルドマスターがお呼びです。」


なんだ?昨日の依頼の事でまだ何かあるのか?


「…す、すみましぇん!!…ふぇぇ…」


兎の耳を持つ女性を見ると何故か謝られたが意味が分からない。


そしてギルドマスタールームに入る。


「入るぞ。」


「よく来たの、カマバール。まぁそこに座れ。」


だがそこで(ダイン)の口から出てきた言葉は予想とは全く違う事柄だった。


「…違法奴隷市場の摘発依頼の補助及び主犯格の追跡だと?」


「あぁ、つい先日の迷宮調査依頼の疲労が溜まっている所、本当に済まないがこの依頼は中堅や駆け出しには任せられん…」


どうやらその奴隷商人のバックが随分とデカイいらしく、

証拠は上がっているが下手な冒険者を派遣すると証拠ごと潰されシラを切られ、

逆に名誉棄損で訴えられかねないらしい。


それに無理やり攫われた違法奴隷の売りが数日後に王都で行われるようで、

今回売りに出す商品の奴隷を連れた奴隷商人は今ウォルテッドに居るらしい。


ここを出るのが今日のようで、

正義漢のAランク冒険者、カマドール・リードレールにダインから指名の依頼として入ったらしい。


「違法奴隷か、考えるまでもなく俺が了承するのを知っていただろうに」


この爺は俺がそういう人の気持ちを蔑ろにする事が嫌いなのを知っている。


奴隷自体は否定しない。

国が認めているのだから…


だが無理やり攫われ奴隷に身を落とした者や、

奴隷を物として扱う人間は凄まじく嫌い、

成敗する。


それを分かってあえて俺に依頼を持ってきたこの爺にはイライラするが…


「ハッハッハ!…全てお見通しか。まぁ、良いだろうワシもこういう卑劣なモノは好かん」


まぁ仕方ない、そう言うのが嫌いなのはこの爺も同じだった。


爺がなぜそこまで奴隷を嫌うのか、

それは分からないが過去に何かあったとしか思えない程に爺は奴隷商人や奴隷を嫌っていた。


それこそギルドマスターになる前、

といっても数十年前だが、

それまでは救う糸口さえ見つければ自分で奴隷商人の屋敷まで乗り込み奴隷商人を殺して奴隷を解放していたほどだ。


案外この爺にも熱い心があるのだ。


「糞爺め、まぁ今回は利害も一致している。貸しだぞ」


「ばか言え。ただの依頼で処理してやる。」


俺は踵を返しギルドマスタールームを後にした。


そして渡された情報を頼りに薄暗い路地裏を縫う様にして進む。


しばらく進めば、報告にあった奴隷を1時的に置いておく古びた小屋を発見した。


「…ここか…」


小屋の近くに立っている屈強な男を近くの建物の屋根から監視する事にして、

それから数日。


カナデにウォルテッドを発ちガルテンの方へ行くと言われた。


共に死線を潜り抜け、

少なくない情も湧いていた為か少し寂しい思いもしたが、

冒険者とはそんなものだ。


冒険先での一期一会と言うのも冒険者の醍醐味だ。


と思い直し監視に集中したりしていたが、


奴隷商人の方にも特に突筆するような事は起こらず油断こそしないが休息を取る。


その次の日、やっと奴隷商人に動きがあった。


屈強な男達に小屋から連れ出されてきた数人の女性達。


その集団は路地裏から出ていき、

表通りにとめられていた布で出来た馬車の荷台に載せられて運ばれて行った。


ゴトゴトと進む馬車の数十メイル後ろをゆっくりと進む。


ちなみにこの服装は随分と目立つようなので、

不本意ながらもダインに渡されたフード付きのコートを羽織り周囲に与える印象を希薄にする。


数日後、馬車の後方から走って追跡していた俺は王都に着き、

馬車が報告にあった競りの会場に入って行くのを見届けてから競りの会場に侵入し周囲を観察する。


段々になっている所に座る肥えた糞貴族共。


こいつ等の中で1番偉く、

裏で奴隷商人と繋がっているやつを潰す。


頭さえ潰せば後は簡単に崩れる。


頭を潰す。それが今回の俺の仕事だ。


「さあ本日は起こしいただいて有難うございます。今回の奴隷はすべて質の高い見目麗しい女奴隷です! さあ、最初に紹介するのは元冒険者のカトリーヌ!!」


どうやら奴隷の競りがが始まったようだ。


次々とかかる声、釣り上がる値段を聞き流しながら最後の2人の少女に目をやる。


俺は数秒、目を見開き固まった。


「………カナデ……?」


目線の先にいる少女の髪と目は黒く、

何と無くカナデを連想させる雰囲気を放っていた。


思わずカナデと呼んでしまったが、身体つきからすぐに違うと判断する。


顔が似ているわけでは無いが…何故か存在が似ている気がする。


そしてその少女が紹介された時、周囲がざわめいた。


「「「なんて綺麗なんだ!!!」」」


そんな声が周囲をざわめかせる中、

1人の肥えた豚貴族が声を響かせた。


「金貨1000枚だ!!!」


その声で周囲がさらにざわめく。


金貨1000枚、それはカマドール・リードレールは知らないが、

カナデが基準にしている日本円換算で1000万円。


1人の人間の奴隷価値としては破格の値段である。


そしてもう1人の狐耳の少女もついでとばかりに購入した男、

今回の依頼のメインターゲットでもある奴隷商人のバック。


現、ドードルヌヴッヌパット侯爵家当主、



ーウララハウラ・ドドン・ドードルヌヴッヌパットー



実はこの豚貴族、カナデの情報をいち早く掴み今後の障害となると見越して事前に誘拐して洗脳した農民の子供の刺客を差し向けたと、

とある筋からギルドに報告が上がっている。


それにこの豚貴族は評判も悪いが罪を巧妙に隠蔽している為か今まで追求する事も出来ず野放しとなっていた。


だが、とある筋、まぁ娼館なのだが…上がった情報で遂に尻尾がつかめたから今、俺らがここまで大胆に行動出来ると言うわけだ。


ウララハウラ・ドドン・ドードルヌヴッヌパットと言う貴族を表すとしたら、


太ってる 、

脂ぎってる 、

短気 、

お飾りの侯爵、

豚、

バカ貴族、

アホ貴族、

糞貴族、

豚貴族、

性欲豚(オーク)みたいな外見、

奴隷を無理やり犯す、

メイドを無理やり犯す、

村人を攫い無理やり犯す、

取り敢えず女を見つけると攫って犯す、

なのに付いているモノは小物、

全ての情報源は子飼いの隠密部隊に任せて自分は踏ん反り返っている、

誘拐した子供を刺客にした.etc


良い所の無い貴族の典型がこのウララハウラ・ドドン・ドードルヌヴッヌパットという男なのだ。



奴隷の競りが終わりウララハウラ・ドドン・ドードルヌヴッヌパット(以後、豚と呼称する)は懐から脂ぎった石板を取り出した。


あれは転移石板か!?


従者や買い取った奴隷2人をまとめて転移させたのは魔道具。


【転移の石板】


遺跡から出土する魔道具の中でも貴重品であり、入手は困難な事からあの豚は金と爵位にものを言わせて手にいれたのであろう。


直ぐに俺もギルドから支給された

[超]緊急用の【転移の石板】を起動させ、豚の本邸を囲む庭に転移する。


この石板は前に訪れた事のある場所に飛ぶ事が出来、俺は前に一度だけ、引き抜きでここに呼ばれた事があったのだ。


もちろん断ったが。


豚貴族は奴隷商人と裏で繋がり、

多額の賄賂を渡したり、

そのツテで入手した違法奴隷を多く持っている裏が取れている為、

遠慮する事なく捕まえる事が出来る。


俺は周囲を見渡し見張りの兵士がいるのを確認、正門の外に2人、

玄関の前に2人。


多分屋敷内を巡回する兵も数十人は居るだろう…


細かい事を考えるのをやめ、

夜襲だと俺も周囲が見えないから朝方に襲撃する事にした。


夜を跨ぎ、明け方になってから眠そうな兵をモノ言わぬ物体へと変え…はしないが意識を落として気絶させてから、

入り口に取り付けてある装飾過多の高そうな扉を殴って吹き飛ばし。


正面から堂々と屋敷の中に突撃もとい潜入を開始する。


「…うっ…」ドサッ…


「ぐはっ…」ドサッ…


「ひっ!?オカ………」ドサッ…


「掘らないで……」ドサッ…


音にびっくりして駆けつけてきた使用人やら兵士を遭遇し次第、チョップで眠りに落として行く。


そうして事前の調査にあった豚の執務室に付き、扉を吹き飛ばす。


そして部屋に足を踏み入れたのと同時に部屋から飛び出す黒い影。


それが豚だと気がついた時には驚きよりも感心した。


ここまで腐った貴族とは醜いのか、と。


そうして脂肪を揺らしながら迷わず1階に逃げる豚に若干の疑問を覚えつつ追いかけていると、


「ハッハハハハハハハハハー!!!」


眼前にいた豚が急に笑い出した。


豚の目線の先にいるのは黒髪の少女と狐耳の少女とそれぞれに付き添う使用人。


「…ッ!?…ブフォッ!…けほっけほっ…」


俺の方をみた黒髪の少女が何故か吹き出し、プルプルしていたが、何か豚にやられたのか?


これは後で豚に罰が必要だな…


豚は高笑いしたあとに転移の石板に描かれた黄緑色の魔法陣に魔力を込め始めた。


これは本格的にまずい…奴隷を連れて逃げられる。


タイミングを見計らい隙を見せずにゆっくりを歩みを進める。


「……え?……」


そして、石板を上に掲げた瞬間、

一歩踏み出し豚の横っ腹を脚で回し蹴りを決めた。


あまりの早さについていけなかった豚はブヒブヒ叫びながら横に垂直に吹き飛び壁をブチ抜いて錐揉みながら消えて行った。

手加減しているから死ぬ事は無いだろう。


だが、間に合わなかった。


黒髪の少女の足元に落ちた石板に描かれた魔法陣が地面に転写され、

地面から浮き上がった魔法陣が回転し光を散らし、

次の瞬間、舞った光が消えると同時に黒髪の少女の気配がこの場から消えた。


「くそ、俺はなんて事をしてしまったんだ」


ボロボロの豚こそ横の壁に頭から刺さり伸びているが、黒髪の少女はマシな所に飛ばされたのだと願うしかなかった。


俺は捕らえられていた女性の奴隷達と狐耳の少女と手足が変な方向を向いて気絶した豚を連れて、

【転移の石板】を使って一度王都に戻って奴隷商人の検挙の補助に回る事にした。




【SideOut】












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