120話≫〔修正版〕
今日の更新は全部カナデ以外の人です。
長いかもしれませんが重要なひとや会話、
それにちゃっかりフラグ回収も
もちらほらあるのでご了承ください。
本日5/22日12:00
累計3,069,930アクセス
ユニーク226,110人
本当にありがとうございます。
アクセス数が1から始めた数ヶ月前の私が見たらどう思うでしょう。
お気に入り登録3780件。
お気に入りしてくれた読者様が1人増えるたびに一喜一憂していた数ヶ月前の私が見たら…
どう思うでしょう。
きっと、ありえない。そう言うと思います。
長々と前書きを書いてしまいました…
よろしくお願いします。
【雪埜空葉Side】
棺の前に座るお坊さんが1時間、
お経を唱え彼の空っぽの肉体の前で魂を追悼する。
私はその棺のをずっと見ながら止まない涙を流した。
私の母も、義理の父も部屋の端で肩を抱きしめ俯いている。
お母さんの表情は顔を覆う髪の毛で分からないし、お父さんの表情も影で隠れて伺えない。
私の名前は雪埜空葉、
カナデくんの義理の姉。
私はカナデくんの収まる棺を見ているうちに過去の思い出を回想していた。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
カナデくんと最初に会ったのは…
病室だった。
一面が白い壁、天井、床。
白く塗装された金属製の自動ドア。
そして1つだけ、空が覗く…
決して開く事の無い窓。
その中で異彩を放つ灰色の機器。
そんな白い部屋の中に、
溶けてしまいそうな肌白い青年がぽつんと1人。
まるで触れれば散らしてしまうような儚い華のような印象、
触れれば溶ける雪のような印象、
目を話せば消える霧のような印象、
それが最初にカナデくん、
雪埜奏に会って感じた思いだった。
それからというもの度々お見舞いと称してカナデくんの病室を訪れるようになった。
真っ白な部屋の片隅に置かれた花瓶に生けられた頭を垂れる純白のササユリの花を眺めながら話をしたり、
嵌め込まれて開く事の無い唯一窓から覗くの空を窓から眺めながら話をしたり、
灰色の機器に映る脈動を見ながら笑ったり。
そんな普通と少しだけ違う日々が日常になった時、
その時から感じ始めた僅かな心の異変。
話すと心があったかい。
話せない日は悲しい。
会うのが楽しみ。
会えない日は辛い。
カナデくんの具合が良い日は私も嬉しい。
具合が悪いと聞くと私まで落ち込む。
いつからかは分からない。
気がついたらその心の異変はハッキリと感じ取れるようになっていた。
それからは学校で告白してくる色々な男子も何故か色褪せて見えるように…
私はその時、カナデくんに気持ちを打ち明けることが出来なかった…
結局私は気持ちを秘めたままだった。
カナデくんに出会わせてくれた神様に感謝して、
そしてカナデくんを病魔が蝕むのを見て行くうちに神様を恨んだ。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
私は立ち上がり、棺の前まで足を進める。
足元がおぼつかない…
フラフラ…フラフラ…
現実を直視したくない…
やだ…やだ…
まだカナデくんは何処かで生きてるんだよ?
そんな思考が頭の中を占めて悲しい事実を隠そうとする。
そうしているうちに辿り着いてしまう。
黒塗りの容器に入ったお焼香を震える手で摘まむ。
それを3度、おでこに近づけてから別の容器に移す…
そして私は顔を上げる。
目の前に横たわる棺。
蓋の外された棺から覗くカナデくんの顔は…
安らかで笑みすら浮かべていた。
なぁんだ…カナデくんは…
もう居ないん………………だ。
意識が遠のきそうになりバランスを崩して膝を付き、棺に手を掛けた。
私の目から溢れ出した涙が1滴…
ーぽつんっ………
カナデくんの頬に落ちて、
死に化粧を纏ったその笑顔を間近で見た瞬間。
……ゾワッ……
背筋を何かが伝ったかのような嫌な感覚に陥った。
なんで?…なに?…なんなの?…
なんでいつも見ていたカナデくんの笑顔は…表情は…今は思えば違和感しか感じない?
病室で見るカナデくんのいつもの表情と同じ筈なのに。
カナデくんはいつも笑顔で私たちを逆に励ましてくれていた。
それは本当のカナデくんの素の表情だった筈なのに…
私はその考えに没頭し夢中になってしまう。
いつしか涙は止み、耳に入っていたお坊さんのお経の声も聞こえなくなっていた。
周囲に音が戻り、
お坊さんのお経が耳に入って周りの雰囲気が何かおかしいと気がついた時には、
随分と時間が経ってしまったのだろう、
周りが沈黙していた。
「…あ、すみません……」
次の人に場所を譲り席に戻る。
その後は只カナデくんの前まで行き、
ひと声かける知らない親戚の人達がたくさんいた。
お葬式が終わり、私はお母さんとお父さんと家に帰った。
その日は涙を流しながらベッドに寝転んだ。
涙を流していても、
カナデくんの表情。
不思議とそれだけが気がかりだった。
そのままどうやら寝てしまったみたい。
朝起きれば涙はバリバリに乾き、
目元は崩れたメイクと合わさって酷いことになっていた。
私はすぐにシャワーを浴びに行き身体を洗う。
私が妙な体験をしたのはそれから数日後の夢の中。
すこしその話も話しましょう。
カナデくんのお葬式から数日後、
未だ晴れぬ表情だと友達に言われるのも慣れてしまい、
今日も落ち込んだ顔のまま生活していた。
その日の夜、私は不思議な夢を見たのです。
空を飛ぶ自分、首を回せば左右には翼が見えます。
それも七色の。
どうやら私は夢の中で鳥になっているみたい。
ぐるぐるーと首を回していると隣にもう一つの首がありました。
どうやらこの鳥は二つの首をもつ七色の鳥さんのようです。
流石私の夢、独創的だなぁ。
そして見渡す幻想的で様々な景色、
日が出てても真っ黒な場所、
石の壁に囲まれた大きな街、
怖い顔の妖怪?
色とりどりな人たち、
杖から飛び出す色とりどりな光、
剣を手に持ち鎧を着て戦う人々、
動物の耳と尻尾を生やした可愛らしい人々、
そしてその夢の中の森で生き生きとした顔をしている…
ーカナデくんを………
そのカナデくんの顔を見た時、
私は見惚れた。
あまりにも心から笑っていたから。
(行ってみたい…)
気が付けば強くそう思っていた。
夢の中で鳥になって空から見ていた景色が近づいて来た直後、
………ピピピピピピピ!!!………
意識の外から目覚まし時計の音がして、
私の意識は浮上し始めた。
近づいていた景色は遠ざかり、
不意に鳥さんの背中が私の目に映った。
(…幽体離脱みたい……)
そのまま私の意識は夢と切り離され、
現実世界で目を覚ました。
でも…次の日の夢でも、また同じ夢を見たのです。
昨日とは少し違う場所の風景、
オレンジ色の髪と目の女の子と楽しそうに話すカナデくん。
私は胸がチクリと痛んだけど、
その気持ちはそっと抑えた。
既に居ない人を想うのは勝手だけど、
夢の中でまで嫉妬するのは良くないよね…
それに義理でも姉弟なんだから…
その時、頭の中に直接声が響いた。
『あの夢の中に行きたいか?』
『…え?』
『あの夢の中に行きたいか?』
質問こそ同じだが、これは本当に自分の頭の中で作られた声なのかな?
そんなことを思ってしまうほどに意思を感じさせる声色で声は話した。
『…行けるの?カナデくんのいる所に…?』
それは死ぬということでは無いの?
この夢はカナデくんの死後の世界を写しているのかな?
『もちろん。それと君の夢の中の世界は死後の世界ではない…彼はたった今も、第2の人生を歩んでいる。
そして君は彼の生きている世界をみているのだ…』
驚くべきことに声は全ての質問に答えてくれた。
心の中までよむ声に不安を覚えたけれど、
そんな事は言われた言葉の前に霞んでしまった。
『行けるの?本当のカナデくんが生きている世界に?』
何故「本当の」と言ったのか分からない。
だがあの病室にいたカナデくんの表情は、
夢の中で見たカナデくんのを見た後だと、
まるで仮面を被っているかのように思えた。
『今生きている世界の君は行方不明になるが良いのかな』
一瞬お母さんとお父さんの顔が思い浮かんだが、すぐに霧となって消えて行く。
恋って怖いや…親から逃げて駆け落ちするカップルの気持ちが少しだけ分かった。
『フハハハ…じゃあ行こう。君のとっての異世界、カーディリアに。』
その声は最後に僅かに面白そうに笑うと、
訳わからない言葉を残して消え去った。
暗転する視界、歪む身体、激痛、
「………痛い………あ……………」
僅かな関節の痛みを残して目を覚ますと、
目の前には悪そうな顔をした豚さんが居た。
「!?!?……
איפה אתה מה …יצא!!!…」
「え?…何語で話しているのですか?」
「אמא ניעה. ירד מן השמים הוא …מכירה טובה! אני אמכור אותו במחיר גבוה, אם זה בפנים!!!」
私はわけが分からなかった。
その後、
なし崩しで手枷と足枷を付けられ、
わけも分からず檻に入れられて何かでゴトゴトと運ばれた。
「…היינו ניתן …למכור בעתיד…. אני לא מדבר קצת לפני זה? למה להיתפס?」
檻に一緒に入っているオレンジ色の狐耳を持った少女が何か話している。
この動物の耳、夢の中で見た気がする。
ここは本当に夢の中の世界なの?
それともあの声が最後に言った…
確か……異なる世界なのかな?
あり得ないとは思うけど、
パラレルワールドとかが無いとは言い切れないし…
「あの…ごめんね…私あなたの言葉がわからないの…」
言葉が通じないと分かったのか、少し耳を垂らしてしょぼんとした後、
狐耳の少女は肩をすり寄せてスキンシップをして来た。
(………可愛い……)
私はその子の頭を撫でつつこれからどうなるのか不安に思ったけど…
なるようにしかならないか…と考えるのをやめた。
この世界の何処かにカナデくんが居るなら…
もう一度だけ会いたいな。
そう思いながらゴトゴトと揺られて行くのであった。
18:00にウツハサイド2話
19:00にカマサイド1話
20:00に王子サイド2話