1話≫〔統合版〕
ぱっと思いついた設定から書きはじめています。
初心者故のアホみたいなミスが多いです。
余り期待せずにどうぞ。
修正版→全体の表現や描写を詳しく書き、肉付けしました。
1〜3話の統合。
【私Side】
あなた方が生きている時代のよりも先の未来の、とある場所にある病院の一室。
その部屋の壁はただひたすらに白く、
汚れは一切見つからない綺麗な部屋であった。
そしてその部屋は、厳重な検査を受け病原菌が無い事を確認してからでないと入れない。
私が最初にこの部屋を見たときに思った事とは、
純白の"檻"
余りの白さに部屋に入った者は、
窓から差し込む日差しの反射に目を細めるに違いない。
その部屋は縦横5m程の正方形の部屋で、
部屋の突き当たりにある開く事の無い大きな窓の外には、
青々とした空が広がっている。
そして大きな窓の手前には白を基調とした横1m,縦2m程の一般的なサイズのベッド置かれていた。
そのベットの横には物々しさを感じさせる灰色の大きな機械が置いてあり、
その機械の上部にある液晶にはジグザグとした線が画面を左から右へと脈動するかの様に流れていた。
画面右下に表示された数字は時折減ったり増えたり忙しなく動いているが、
目に見えて減ったりする事は無いようで、
比較的安定している様に見える。
私がベットに視線を戻すと、
凄まじく華奢な上半身を起こし窓の外を眺めている10代後半の青年が視界に入った。
どうやら今の調子は随分と良いらしく、
"彼"の表情にはいつもの様に苦痛に耐える様子は見られなかった。
私はベッドの方にゆっくりと、
ゆっくりと歩いて行く。
その足音でやっと部屋に自分以外の人間が居ると気がついたのだろうか、
窓の外を眺めていた"彼"はゆっくりと、
本当にゆっくりと私のいる方に顔を向けた。
振り向きざまに僅かに浮いた髪は黒く、
しっかりと手入れすればさぞ綺麗な髪になったであろう、
だけど今はその輝きを失っていた。
だが、手入れされていれば見ただけで吸い込まれそうになるに違いない。
そう思わせる黒曜石のような黒であった。
窓から刺す光を吸い込み私を映し出す瞳も髪と同じ黒であり、
瞳の輝きこそ失ってはいなかったが、
その瞳には隠しきれない疲れを滲ませていた。
その瞳は光を際限無く引き込む深い深海のようで、
見つめられれば目が離せなくなる。
髪は長い間切られていないのだろう、
肩甲骨のあたりまで伸びていて、
前髪も睫毛にかかる程までに放置されていた。
鼻筋はくっきりとしていて、
"彼"や私の民族の特徴である平たく鼻の頭が丸まっているなどと言う事は無く、
綺麗な顔立ちをしている。
透明感のある白い頬は微かに染まっている事から、
動く事の無い精緻な人形では無い事がかろうじてわかった。
"彼"の顔に、表情に、仕草に、
私の胸の奥にしまいこんだ気持ちが疼き心にチクリとした違和感を感じたが、
すぐにそんな昔の事はもう関係無いと考え、
その思考を追いやった。
"彼"の蝋燭の火は既に風前の灯となり、
消えかかっていた。
その事実は私を否応無くあせらせる。
"彼"はもう長くはないだろう。
長い病院生活で衰えた、華奢な体躯、
捻っただけで砕けてしまう細い首、
強く握れば本当に折れるであろう細い両腕も、
もう一生地面を踏みしめる事の出来ない両足も、
触れれば消えてしまいそうな儚い魂も、
全てはもう、手遅れだった。
沈黙が嫌いでは無い"彼"は私の気持ちを気遣ってくれたのか、
ゆっくりと口を開いた。
肺に息を吸い込むだけで痛みが走ると聞いた私は、
その行動に苦虫を噛み締めた。
私の重い空気を察したであろう"彼"の綺麗な形の唇が僅かに開く。
「やぁ、ソラ。今日は雲が無くてとても空が綺麗だよ」
"彼"はよく通る透き通った声を響かせて、
未だ扉の前に突っ立っていた私に優しげに声をかけた。
「う、うん…元気そうでよかったよ、カナデくん。
そうだね、今日はとても綺麗な青空だね…」
いつも数回言葉を交わし後は静かに沈黙を楽しみ時間を潰す。
時折気になる事をカナデくんは私に訪ねてきて、
私はそれに持てる知識を総動員して分かる範囲で返し、
分からない所があれば次に会う時に調べて教えてあげる。
時折カナデくんは私自身の事も質問してくる。
他意無いと思うが、
何故か恥ずかしいと思うが私がいるのを感じた。
でも私は少し恥ずかしがりながらも話してあげる。
嬉しくも、気がつけば消えてしまうかのように儚い、
夢の中住人のような存在であるカナデくんに胸が痛む。
そんな近づく事も離れる事も出来ない距離こそ、
私とカナデくんとの今の距離であり関係と言える。
カナデくんは再び窓の外に広がる青々とした空を眺め始めた。
そんなカナデくんを見ていた私はまた胸が締め付けられる様な思いを抱く。
この気持ちはもう一生叶う事はないだろう…
私の胸に燻るこの気持ちは、
カナデくんの病気の悪化と共に心の奥に隠した…
病気がなくても叶う事は無かったであろうこの感情は、
いつか私の胸の中の大切な思い出になってしまうだろう。
カナデくんは強い。
無理だと決めつけて諦めた私なんかよりもずっと。
窓から外を見るカナデくんはまだ諦めていない。
窓の外に見える青空を自由に駆ける小鳥達を見つめるカナデくんの黒い瞳は、強い意思を宿している様に私は感じた。
カナデくんは自身の容体を医師から聞いた事は無い。
いや、詳しく教えられてないと言うべきだろう。
だが私が医師に問い詰めた所、
カナデくんの身体を蝕む病魔は、
既に最新の医療技術と医療機器を駆使しても手の施せない最悪の域に達しているようだった。
それは彼自身も薄々感じているだろう。
日々自らが弱っていく感覚と言うのはどれほどの絶望を感じるのか、
それを味わったことのない人々には決して分からない気持ちであろう。
「ソラ?どうかしたの?」
いつの間にかこちらを向いていたカナデくんは心配そうに私を見つめていた。
私は力になる事が出来ない。
助かってほしい。
そんな幻想は既に崩れ去り、塵と化した。
両親はカナデくんの容態が一気に悪化するとめっきり病室に来なくなった。
正確には日に日に痩せていくカナデくんを見て居られなくなり、毎日病室の入り口で泣き崩れて入るタイミングを失っているだけなのだが…
私は…カナデくんが来世では幸せに生きていける事を切に願う
「いえ、心配ないよ…じゃあまた。」
いつからだろう…私達が敬語を使うようになり距離を置き始めたのは
そして私は逃げるように部屋を後にした
数日後…彼は息を引き取ったと言う話を
…カナデくんの親から聞き…
私は…
【SideOut】
『人間』
雪埜奏
残存内包生命力/内包生命力:93/9000
必要経験値/規定経験値:6523/7000
能力:解放不可
加護:なし
××××××××××××××××××××××××××××××××××
俺の思い出せる記憶のうち、
屋外で遊んだという記憶はほんの数えるしかない。
17年間生きていた人生でも数えられる程度しか無かった事を考えてみれば、
かなり少ない事が分かるだろう。
俺は8歳の頃に病気が発覚した。
どうやら俺が発症した病気は先天性の疾患らしく、当時有効な治療法は開発されていなかった。
それから数年間、
両親や姉は治療法が見つかるのを待ち続け、
いろんな国の様々な分野に名を連ねる高名な医者の元を駆けずり回ってくれた。
俺がやっとの事で15歳になった時、
ようやく有効な治療法が見つかったらしく、
両親は泣いて喜んだ。
姉も俺を抱きしめてくれた。
俺も治ると思っていた。
俺が死ぬわけないだろ?と。
自分は特別だと思っていた。
人なんてちっぽけですぐにコロっと死ぬのに、
俺はまだ実感出来なかった。
いや、事実から目を背けていた。
その有効な治療法とやらが見つかったのは、
俺の病気が発覚してから既に7年の歳月が経過した日の事であった。
俺を担当した本にも乗るくらいに高名医師は俺を診た時、一言だけ、こう漏らした。
「…なんでこの状態で生きてるんだ…」
そしてこう続けた、君は何故こんなに長生きできているのか…
それは俺でさえ分からない事であり、
…答える事はできなかったが。
だが、医師のいったこの状態とは、
殆ど死んでいる状態だったようだ。
既にギリギリの身体に手術なんてしよう物ならメスで切られた瞬間に死んでしまう、
それから2年の間は少しずつ悪化する症状に耐え、
新薬を投与されながらなんとか過ごしていけた。
だが度重なる薬の投与によって、
既に俺の身体は壊れボロボロだった。
酷い時は細胞1つ1つが沸騰するかの様な激痛が、
毎晩毎晩身体と精神を蝕み幻覚を見せる。
俺の身体は形を保っているのか?
俺の精神は崩れていないのか?
それでも家族の前では気丈に振舞った。
痛いなんて言わず、涙も流さず、
幸せに満ちた仮面を付けた。
髪は伸び、もう昔の面影は無い。
でも変わらず窓の外に広がる空の事が好きだった。
体調さえ良ければいつもカーテンを開け外を見て、
淀み切ってろくな思考の出来ない心を洗いながした。
再び外を走り回る事に想いを馳せた。
学校に通う自分自身を夢に見た。
身体を動かし、汗を流す自分を幻視した。
淡い恋をし、人並みの青春を享受する事を願った。
何もかもがまだ自分の知識と、
僅かに経験した古い記憶にしか無い事を悔やんだ。
普通が自分自身には無い。
それが辛かった。
…コン、コン…
病室のドアが控えめに叩かれる。
この感じは…ソラかな…
俺は窓の外を見ながらそう感じた。
そして今日も変わらず壊れかけの仮面を付ける。
数日後…
"彼"は死んだ。
【SideOut】
『数奇な亡骸』
雪埜奏
残存内包生命力/内包生命力:0/9000
必要経験値/規定経験値:6585/7000
能力:解放不可
加護:なし
本来"彼"はいるはずの無かった"世界"で没する事となる
これをとある者が感知するのはすぐ後の事
彼の魂は空高く登っていき
病室には仮初めの仮面を被った彼の肉体が横たわっていた
××××××××××××××××××××××××××××××××××
【■■■Side】
"己"は失敗を犯したようだ。
本来失敗と言う事を滅多にしない"己"が、
稀に見る失敗をした。
これは由々しき事態であり、
早急に事態の回復に務めなければならない。
"己"は悠久の時を過ごしている為か、
世界の時間と言うものに疎く、
世界に生きる者達との基準も感じ方も違う為か、
気がついた時にはすでにその人間は
息を引き取ってしまっていたようだ…
"己"は僅かに胸が痛んだ
痛んだ?
そう、痛んだのだ。
感情は時間の中で風化したと思っていた"己"は、僅かにほくそ笑んだ。
故に本来気にする事では無い矮小なる存在に対して少なからず抱いた感情、
それを大切にする事にしてみた。
憐憫。
釣り上がった口角を閉じ、
直ぐに表情は消えた。
自分に残っていた感情を久方ぶりに感じながら"己"は思考を続けた。
"己"は万物を管理し、調整するもの。
そして無限の時を過ごし、
全ての生命を見つめる者ー観察者である。
各世界の知的生命体には"創生神"だとか、
"最古の神"、"理"だとか色々と呼ばれているが、
一貫した呼び名など無い。
もっとも今生きている殆どの知的生命体は、
"己"の存在など知らないようだから無理もない。
各世界はその世界ごとに割り振られた神が統治しているのだから余計に、な。
ー閑話休題ー
"己"は罪滅ぼしではないがその人間にチャンスを与えた。
1つ、己の暇つぶし
1つ、その世界を楽しんで貰うため。
【”己”が作った世界】
その人間はどの様な反応をするのか。
楽しみだ。
"己"は1つの魂魄となり輪廻を彷徨う"彼"を探し、
"彼"の魂魄をその"世界"の輪廻から外し違う"世界"の輪廻に組み込みなおした。
"彼"に楽しんでもらうために。
ー箱庭世界ー
カーディリア
観察者が創りし幾千とある"世界"の1つ、
そのとある大陸にある森の中に"彼"を落とした。
(ふむ、己は機嫌が良い。馴染み深い服と剣を付けておいてやろう)
"己"曰くこれは何千年振りの悪戯らしく、森に落としたのはとある知識を用いただけであり、特に意味は無いという。
【SideOut】
『数奇な彷徨う魂魄』
雪埜奏
残存内包生命力/内包生命力:凍結/9000
必要経験値/規定経験値:6585/7000
能力:解放不可
加護:観察者
感想ありましたらよろしくお願いします