第八十六話 始動
「兵を集めろ、いよいよ戦争だ」
摩天楼中央区
そこで兵士が集められつつあった。
都内で起きた幾多の暴動が、ようやく彼らを動かしたのだ。
そう、反吸血鬼派の旗揚げだ。
「いくぞおおおおおおおおおおお!」
「うぉおおおおお!」
兵士の数、約200人。
吸血鬼軍の数、約20人。
その10倍の差は、たった一つの「吸血目」によって、一変する。
そう、吸血鬼は兵士を増やすためには、クリスの血を必要としているが、
技術を身に着けた彼らは、量産式の血を生み出していたのだ。
…それが、「複製目」。
複製目、それはとある人物の複製品を作るもの。
これにより、吸血鬼軍の戦力は尽きることなく増え続けていた。
「いよいよ…始まったか…」
俺は手を大きく振るう。
そこから風が生まれ、嵐となり、もう一つの手で、豪雨を作る。
月は隠れ、闇に包まれた摩天楼…
「さて…下準備はできた…キーン、動くぞ」
「あいあいさ」
キーンは、蛇で俺をつけていた。
それにより、俺との連絡手段という事にしていた。
「さぁて…と、やりましょうかねぇ…国落とし…あぁ…久々に素晴らしい夜になりそうよ…
エドワードさん!」
キーンは両手で大きく空を仰ぐ。
すると、月を隠した雲が、やがて渦を巻き、
巨大な風を作り、巨大な蛇を作り、巨大な雨を作り上げた。
「…これだけで、もはやこの世の終わりを感じるな…」
「聞こえてるわよ」
「げっ・・・」
俺は…きっと、もう正義じゃない。
どこで間違えてるのかわからないが…
きっと、人の思う正義は、いつの間にか、他者の悪になっているんだ。
なんでかこの時の俺は正義だと思ってた。
…なんでかな・・・。
「んじゃあ…行くか、一気に落とすぜ」
俺は摩天楼中央支部へと潜入した。
下では彼らが戦いを繰り広げている。
その上を抜けていく。
そして、その先には…
「へっ…やっぱ…会うわけだよな!」
「ここで止めます、あなたは脅威でしかない」
脅威…か。
「止めてみろ!俺を止めれるならな!行くぜ…グラム…!」
「まるで馬鹿の一つ覚えですね…しかし、容赦は致しません、わたしはあなたを止めるという使命を全う致します!!!」
やはり、既に血を得ている!
左手が何かを得ている。
吸血目のおかげか、それを確認できる。
「吸血目…『血をシールドにする!』!」
「打ち破ってあげるわ!!!」
そして、摩天楼の周辺のビルで、俺たちは飛びかいつつ、戦闘を行い始めた。