第八十五話 正義破壊
「これで、終わりだ」
「破壊…こそが…正義…私は・・・」
「破壊ばっかりして、結局は自分がしたい事も破壊してるだけなんじゃないか?」
俺は、そういい、グラムを引き抜く。
グラムが突き刺さっていた部分は、穴が開いておらず、
むしろ何事もなかったかのようにそこには何もなかった。
「俺は、自分がわからない…だんだんとわかってくる事すら怖い、
でも、こうやってやるってなったら、どんだけ辛くなっても進んでるつもりだ
お前だって、ちゃんとわかってんだろ、自分がしたくない事をすんのは嫌だって、
俺は自分がわからなくても、突き通す事だけはわかってんだ、お前も少しは
したい事、してみろよ」
「…」
あの時、破壊に飢えてるような、満足したりない顔をしていた。
それが何でかわからなかったけれど、今ならわかる。
こいつは…多分、言われた事をこなしてたんだ。
そして、それがこいつにとって、最善なんだと、自分の感情を”破壊”して、
それを正義だと思ってたんだ。
「だから、”正義破壊”してみろよ!お前の正義を!
お前にとっての正義ってのを、ちゃんと見せてみろよ!」
「!!!」
それが、正義だってんなら、俺は止めない。
ただ、俺が悪だと思ったら、俺は俺の正義を全力で尽くして、
お前を止める。
だから
「待ってるぜ」
と言って、俺は摩天楼へと向かった。
(---摩天楼---)
「そうですか…彼女がやられましたか…無敗と言っても、所詮は駒…
ここは我々が出るべきなんでしょうね」
「ええ、我々、孔雀部隊がいきましょう」
孔雀部隊…右翼、左翼、尾、牙、頭
それぞれが一丸となって孔雀となる。
「さあ、いきましょう」
(---同時刻---)
「アルフェグラは壊滅、そしてこの国には、二つの勢力…吸血鬼と反吸血鬼派がいるわけ」
地図を開き、ある程度の予測できる事を書いた。
「まず、ここ…おそらくここが、私たちがいる所だね」
「なるほど…じゃーここから中央区…摩天楼に向かえば、もしくは」
「そうなるわ…ただ、どうしてもわからない事がある…反吸血鬼派の主導者がいない事について」
そう、本来レジスタンスと思われる組織には、それを統括する…
いや、そうでなくとも、組織には主導者が一人はいておかしくはない。
それが何故かいない。
もしかしたら、単なる平民の一揆が一丸となって起きた組織なのかもしれないし、
そうでなければ、どうしても納得がいかない。
「ぼくがまず、偵察してくるよ、ムサイ一の速さを見せてやる」
ムサイも同じくして、この島…ミシェールで動き始めていた。
かくして、ムサイ、ロシル&リーン、シフォン&シェイノ、反吸血鬼派は、各々が
摩天楼へと向かっていた。
(---ガレー---)
一方その頃、ガレー島で小さな事件が起きていた。
「これは見事に抉られているなぁ…」
各所に点々とある工場が砲台の玉のような形で抉られているという話だ。
それを調査すべく、ガレーは自ら動いた。
「ゼス、サンプルを取ってくれ、私はこの琥珀色の玉について調べてみるよ」
謎の球体型の穴。
そして琥珀色の玉。
それらが何を意味しているのか、まだわからない。
だが
「これは…なんだか嫌な予感がするねぇ」
それだけは…わかっていた。
琥珀色の玉 発見場所ガレー島 第三機甲兵量産工場
発見時、大きな球状の穴が各所に発見される。
おそらく何者かが故意にあけたものだと思われるが、実際は不明。
近くにこれが落ちていたのを、ガレーが発見する。