第八十四話 潜入
都内では、既に戦いが起こっていた。
干渉をせず、ただこの国の新国王である、奴を叩く。
「まるでスパイだな…スパイ…」
「あら、こんな所でまた会うなんてね」
俺は城壁の上から都内を見ていると、すぐ横に、あの日会った吸血鬼…
「今日は…月が綺麗だ…血が騒ぐ」
「あぁ、俺にもよくわかるよ、実感する…血が騒ぐってのを…な」
俺は、足で円陣を組む。
「まさか!あなた吸血目を!?」
「来い、グラム!そして、レッドサークル!」
レッドサークルで、グラムを強化。
赤き円形は、吸血鬼としての能力だ。
吸血鬼は、自分自身を強化するが、武器に付与はできない。
それを武器に付与させるために作ったのがこれだ。
「吸血目…対するは、吸血目…面白いですね、
ですが、私の方が吸血目をうまく使えるのを、しかと見ていただきますよ」
吸血目は、他の血を吸ってからでないと、効果を発揮しない。
ならば、血を得るのを阻止すれば…いや、
「血は既に吸ってんのか」
「戦争中じゃあ、血なんてどこにでもありますよ」
「そうだな…俺も血を吸うか」
俺は、自分の腕を歯で裂く。
そして、血を吸う。
「何!?自分の血を…」
俺は血を吸う。
自分の血ではないその血を…
「どういう事なんですか…他者の血を得なければ能力は使えないはず…」
「そいつぁ教えられないな!行くぜ…」
俺は、ワンツーステップでグラムをおお振りする。
それを、ジャスティスは掌底打ちで止める…というか、壊す。
「やっぱり、グラムじゃ太刀打ちできねぇか!物理でも、なんでも壊すその能力…やっかいだな!」
「他者の血を奪う事をしないで吸血目になる方が厄介だと思いますが?」
「言えてる!喰らえ!」
俺は”イールグ”を唱える。
言葉にならぬその呪文は、俺の手に風を集め、やがて球体となって、俺はそれを横振りで放つ。
球体は拡散し、ジャスティスを軽く飲み込む程の大きな竜巻となる。
「物理では無理と踏みましたか…ですが、無意味です!」
ジャスティスは右拳を後ろへ、構え、そして大きく突く。
すると、”イールグ”が作り上げた竜巻は、ガラスが割れるように砕け散った。
そこへ、俺はスピルクによって浮きつつ、竜巻の残りを勢いに加算して突撃した。
「嘘でしょう!?どうして突撃なんか!」
「構えろ…吸血鬼、今から放つ技は、俺の最大だ!」
レッドサークルで耐久度を上げたグラム…そして、それに吸血目によって加えた付与効果…
『破壊効果を無効化にする』の血を、グラムに重ね、
吸血目付与グラム…これで、あいつの破壊する能力は、グラムに届かない!
「単純に破壊する効果は!俺の血を自在に変える能力の前では無力だああああ!」
「血を変化させる能力!?」
俺は、グラムでジャスティスを突き刺す。
ようやくこれで・・・一撃!
「痛くは・・・ない・・・!?」
「グラムは元々殺傷能力のない剣…切ったり、突き刺したりできても、傷を負わせる事はできない」
そう、その代わり、突き刺せば、内側から魔力=生命力を吸収する。
「これで、終わりだ」