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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第三章 ミシェール
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第八十二話 魔弾銃

「…また、この教会か」


「いやぁ…会えると思っていたよ、この日のために、僕は訓練したかいがあったってもんだ…」


そいつは、酒豪のようだった。

いや、一言にそう決めつけるのはよくないが、口調、格好、何から何まで乱れている。

…どう戦ってくる?


「僕はぁ…あんまり戦は好まない…訓練だってしたが、僕はこのように武器を持たない…」


武器…いや、徒手格闘もあるだろう。

油断するな…こいつは、俺を殺すチャンスを伺っている。


「なあ・・・取引をしないか?」


「取引…?」


「そう、僕はここで手を叩く…そこから出てきたものあげよう…その代わり、君からは」


この瞬間だ。

今、動きを見せようとしているこの瞬間に仕掛けてくる。


「もう、遅いよ」


時間封鎖タイムウォーカー!」


俺は、そう叫びつつ、そのまま体を仰向けになりつつ、地面へと体を倒す。

時間封鎖で3秒前に戻る…そして、あいつの動きが3秒前になっている所に、


「スピルク!」


そう俺が叫ぶと、

肩から、青い光が生まれ、そこに儂ができる。

すると、そいつは回転しながら、周囲に風を生ませ、俺を風の力で浮かせた。

俺自身が得た浮力は、このスピルクでも応用を聞かせる事で行う事ができる。

スピルク…風の召喚獣で、主に周囲の風力だけを吸収した風力の結晶体だ。

それを俺は自由に扱える。

そして、この浮力で、俺は大きく後ろへと仰向けになっている状態で進む。

ある程度いったところで俺は体制を立て直す。


「来い、グラム!容赦はなしだ!」


「驚いたな…あのままかわそうものなら追い込むものだったのに…そうか、そこまで予想できるか」


さっきとは違う表情…殺意の篭った冷酷な目だ。

吸血目が入っているのかどうかは確かめようがないが…。


「レッドサークル!」


赤い円陣が俺の足場を囲む。

そして、グラムがそれに呼応する。

レッドサークルが段々とグラムに吸い尽くされ・・・

赤きグラムが誕生する。


「そうか、そうか・・・俺も本気で行かせてもらうよ、来い、グラム!」


こいつの動き・・・俺よりも早い!

だが、まけるわけにはいかない!

こちらへ接近してくる。

グラムが振るわれたのと同時に赤きグラムを振るう。

これはあくまで流しだ。

次の攻撃かその次が本腰入れた攻撃!

それをかわして、懐に入ったところにイールグを当ててやる!


「くっ…」


俺は、そこで油断した。

向こうのグラムはただのグラムじゃない。

最小限までスピルクを抑えたグラム…!

流そうにも、そこに風が挟んで、グラムに当たらない!


「戦闘スキルはこっちのが上みたいだな、ここから攻めていくぜ?」


どうする?俺は、この行動を仕掛けてきたこいつをどうすればいい?

次の行動…。


「俺が負けりゃあ…俺がノエルを救えない…俺がやらなくちゃ、いけないんだ…」


「はっ!何使命感にとらわれている?僕が君を殺せば、僕が君となり、この世界を支配するだけさ!」


「独裁者気取ってんじゃねぇ…俺りゃあ…負けねぇよ!」


闇を使うか


「バレッド・オブ・ジャッジメント…!」


俺の周囲に黒い煙が現れる。

バレッド・オブ・ジャッジメントは、俺が定めた目標に対して攻撃を仕掛ける能力。

しかも、オートで。


「闇っ…!そうか、光と闇の魔術も使えるのか…チート過ぎんだろ!」


「そりゃあお互い様だろ…俺の闇を見て、すぐに固有結界を発動させるなんてよ」


俺が闇を使い始めたと同時に固有結界を発動させていた。

固有結界を発動するのに工程がいるのに、それを行う動作すら見られずだ。

要するに最初から固有結界を発動する準備に取り掛かっていたわけだ。

俺の闇を固有結界が弾く。

そして俺は固有結界に飲まれた。


「固有結界『恐怖ドレッドノート』…!」


周囲は暗闇に。

俺は自分の体すら薄く見える程度。

そうか、相手を盲目にする固有結界!

俺には、この暗闇は見えない。

…だが、暗闇を晴らす事はできるはずだ。


「俺はこれを待っていた…この力を、ゆっくりと試せるからな…行くぜ」


俺は腕まくりをし、まくった所を適当に触れていき、歯で皮膚を破り、血を出した。

腕からは血が溢れ、赤く染まる。


「何をしようとしている…」


「へっ…血…ってのはな…あんまし好きじゃないんだ…特に他人の血を吸うのはな」


俺は血を吸う。

自分の血をだ。


「!…まさか…吸血目!だが、それは他者の血を…まさか」


「へへっ…そ、この血は俺の血じゃない…ちょっとした手品だがね」


そう、俺はあいつの血を少しとっていた。

自分の血を出したのは、ここからする事を実行するためだ。


「ちぇ…やっぱり血はまずいぜ…」


ドクンッ…ドクンッ!

鼓動が激しくなる。

ドクッドクッ!

来た…これが…


吸血目ヴァンパイアイズ


俺の目は赤く充血し、そして暗闇がよく見える。

かつ、今の俺は数倍の力を手に入れている上、能力を使える。


俺の能力は…自身の血を


「血を、自在に変える能力」


「それが…お前の能力…!」


俺の右腕から流れる鮮血が、徐々に形になっていく。

まるで地面に鞭打つようにウネウネと動き回り、そして


「今、俺は自分の血を『破壊だけを得意とする剣』に変えた、これでこの固有結界を破壊する」


次元琥牢は、使い方を間違えば、ただの魔力消費にしかならない。

だが、この吸血目で作り出したものなら、そんな事にはならない。

目的さえ与えれば確実に役目をこなす俺の武器だから。


バキ・・・バキキ…

まるで鏡が割れるように…

固有結界が壊れた。


「くくく…そうか、だったら、僕もこの力を使うべきなんだろうな…」


カチャリ…その手に握られていたのは


「魔弾銃!?」


あの時、ノエルに改造された銃。

俺はいつの間にかなくしてしまったものだ。

…どこでなくしたんだ…?


「こいつの威力は、お前が一番よく知っているはずだ」


魔弾銃…こいつ、魔力をどれだけ持っているんだ…?

そもそも魔弾の弾は次元蛇穴で魔力を吸収し、

そして集めた魔力を放出させるものが、魔弾銃だ。

つまり、魔力=弾の威力だから、俺自身の魔力以上を持つとすれば


「くらえ!魔弾銃!」


「こりゃあ…でけぇ…わ」


もう、あいつの姿は見えない。

見えるのは、超巨大な魔弾が俺に向かってきているというだけだ。

俺の吸血目で作り上げた『破壊だけを得意とする剣』でどうにかなるのか・・・?

わからんが、やるしかない!


「破壊しろ!」


俺は、魔弾に剣を突きつける。

そして命令を下す。

魔弾はひびが入るが、進行は止められない。


「くそっ!ばかでけぇ魔力玉飛ばしてきやがって!」


どうする?対処のしようがないぞ?

そんな時、ひびが、段々と広がり、やがて割れはじめ…


「くっ、まさか!ひびを入れたのはこの空間!?くそっ…逃げられたか!」


壊したのは…魔弾じゃなく…この空間!

確かに指示はしなかったが…これで、互いに元の世界に戻る…が


俺は…あいつに、完全に敗北した。

…どれだけ力をつければ…負けずに済む…?



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