第八話 シフォン
「お嬢、新たな敵を確認したおそらく…魔導師だ」
「魔導師…ですって…?」
「数年前にケリはついたんでしょ?あの戦いで」
そう、私は…もう、魔導師じゃない。
魔導師に追われることはない。そう思っていた。
シフォン・ノイスクランチ。
彼とは、私がまだ魔導師として、国のために働いていたときに知り合って、その時に三導師と呼ばれた内の一人が私だ。
魔導師とは、自らの魔力を使って生み出した武器を使って戦う者の事で、これは才が求められる。
そして、私にはその才能があった。
光龍という龍が、私の武器。
魔導師の武器は、生物であっても当てはまるが、それはかなりの実力者にのみだそうで、私は、それを平然とやってのけたわけだ。
魔導師として、私は生きて、そして…あの日がやってきた。
そう、それは…豪華客船、スカイウェーブ号での話。
魔導師の仕事は、国の密告者や犯罪者などを殺すこと。
重罪に当てはまるものが、これに該当する…。
そして、スカイウェーブ号に、ジャックを仕掛けたとされるメリュジーヌを確保または殺害することが、目標で、乗り込んだ私たちは、メリュジーヌの罠にはまり、スカイウェーブ号の乗客を生け捕りにされ、さらに私はメリュジーヌによって、魔力を失ってしまい、光龍を出せなくなった。
…だから、やめたのだ。
魔術師は、呪文を使うとき、魔力を使うが、呪文がその分負担してくれるために、私は少量の魔力を放てば、どうにかなる。
そのために、私は魔術師となったのだ。
…最終的には、私の師を殺す事になったわけだが…。
「私に何か用かしら?シフォン」
「ああ…国王、ラグナ・フォーミル王からの伝言だ、急ぎロシルを渡せ。と」
「!?どういうこと!?ロシルが何をしたというの!?」
魔導師は、密告者や犯罪者を裁くだけ…。
私は、魔導師の時に、それをしてきた。
その方針が変わったのかはわからない。
けれど…。
「あのロシルという少年…もしかすると、スパイかもしれない。それが理由だ」
「…そんな事、わかるわけ…」
「いいや、それをこれから確かめる、それだけだ…」
私は、フードコートを風になびかせて現れた男、シフォン・ノイスクランチの横を通ろうとする。
…すると、彼は両手を合わせて、そこから電撃を作り出して、そこから長い棒を生み出して、そしてそれを片手でつかんで、ブンッと回転して振るう。
それを、上半身を曲げて、手を地面につけて、かわす。
そして、そのまま重心を手において、私は後転して立ち上がり
「シフォン…どういうつもり…?」
と言った。
その時、シフォンは嫌悪の目で私を睨んでいた。
そして、大鎌の刃を私の喉元に向ける。
「悪いが、俺はお前にも用事があるんだよなぁ…ノエル、いや…反逆者」
シフォンは、向けた刃を少し離して、勢いをつけて、私の喉元を狙いつけ、振るう。
…と、そこで、パキンッという音を鳴らして、刃は弾かれた。
「お嬢に手ぇ出すとはな、仮にも同僚だったろ?」
「ふん、同僚は昔だ、それに魔導師の規則に則ってこうしているんだ。他者は首を突っ込むな」
シフォン…どうして…。
「ノエル、ロシルくんが心配だわここはソイルに任せましょう」
「…ソイル…」
「行け、ロシルを失ったら、お前の先を誰が継ぐんだよ」
「!?」
知ってたんだ…。
魔力連結の事…バレてた。
隠してたつもりなのになぁ…やっぱ、真実を見抜く目には…わかっちゃうのか。
彼は、呪文こそないものの、1の呪文 「真目」を持っている。
真目は、どの距離に何があるのか、そして嘘を見破るとか、もうその類の目に見えるすべてを知ることができる目。
鷹の目とも言われたりする。
ソイルは、武装を開放する。
彼は、服の内側にあった銃器を取り出して、戦いを始めた。
…どうしてなの…?シフォン…。
俺は、エイピロに向けて、引き金をひいた。
しかし、エイピロの矢が放たれる方が早く、目視でこちらに矢が飛んでくるのがわかって、すぐにひいた引き金の方の力が抜けた。
すると、銃口から気の抜けた弾がぽろっと落ちた。
それを確認するよりも先に、俺は顔に向かってくる矢を体を捻ってかわした。
何故か…スローで見えた。
一本一本の矢が、俺には見える。
「その矢…遅いな」
「それはどうかな…一本一本は遅い…だが、お前は前を見すぎだな」
「なに!?」
と言って、俺は後ろを向く。
…だが、そこには突き刺さった矢のみ。
「かかったなっ!これで終わりだ!」
「くそっ!」
俺は、あわてて、銃口を向けて、引き金を…ひいた。
今度は、力を込めて。
…すると、銃口から光が漏れ始め…そして
「うおぉおっぉおおおおお!!!」
放った。
銃弾が発射された…のではなく、光のレーザーのようなものが、そこから放たれた。
エイピロの矢は木端微塵に。
そして、レーザーはそのままの勢いでエイピロを包む。
「なんだとぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」
そして、レーザーは直進を止めずに、そのまま地響きをあげて、開けられた穴の大きさと同じぐらいの大きさのまま、草原を走った。
「な、なんだ!?これ!」
俺は、あまりの勢いでハンドガンを今にも離してしまいそうになる。
だが、このまま落とすわけにはいかない。
もしも天井を貫いてしまったら、ここがつぶれてしまったら…。
俺は、下敷きになるからだ。
「でも、どうやって止めるんだ、これえええええええええ!」
俺は、ただ嘆いた。
「ロシル!引き金を離して!」
「ノエル!?あ、ああわかった!」
そういわれるがままに俺は引き金から指を離した。
すると、今までの衝撃が嘘のように、スッと反動が消えた。
「ふ、ふぅ・・・すげぇ・・・な、これ・・・」
「それが、君の魔力…?へぇ、やっぱり才能あるね、ロシルくん」
「さい・・・のう・・・?」
「ええ、ノエルが気に入るわけだ」
「は、はは・・・うっ…」
そこで、俺は…気が付いた。
自分の胸元に…矢が刺さっていることに…。
「ククク、ついに…呪文を手に入れた…ぞ…感謝する、ロシル…ぐぁ…はっ…むんっ!」
服がボロボロで、重傷を負っているはずのエイピロの最期の一撃だった。
そして、エイピロは何かを使って、そこから一瞬で消えた。
「…とりあえず、ロシル…話したいことがあるの」
「…わかった」
これが・・・俺の魔術師への一歩だった。