第七十八話 本屋ノブ子
ノエル=フォートの突然のメリュジーヌ宣言。
しかし、ノエルは捕まっていたはず!
何故、今そこにいる!?
私は本屋ノブ子。
物知りというだけで、本屋と名付けられたわ。
つまりは、ノブ子というのが私の名前なわけね。
そして加えて言うと、ノブ子も自分の本当の名前ではない。
ここまで見れば、私の真名がメリュジーヌであるというのは、もうわかっているはずよね?
けれどそうではない。
本当の私はノブ子であって、メリュジーヌではないし、
私はメリュジーヌであって、ノブ子ではないの。
要するに、ノブ子というのもメリュジーヌというのも、付けられた名前よ。
メリュジーヌというのは、蛇の魔女の名前。
その名が私に付けられちゃったってわけ。
そして、メリュジーヌには、夫である人がいたの。
それが、ポワトゥーという人物。
私は、メリュジーヌになりきるため、フォーミルの王に仕えた。
まあ、私の魅力に惹かれ、彼が私をそういう目で見てしまった事は、
本当に都合がよかった。
では、何故なりきる事が必要なのか、それは私がメリュジーヌとしての力を得るためだった。
人としてではなく、伝説として名を残したものを、偉人だとか英雄だとか、神様だとか、
そういう類に入れて、人を越えた存在の力は絶大だったわけ。
要するに税金ね、勝手に魔力が湧いてくるの。
ただし、その名が続く限りの魔力。
だからこそ、メリュジーヌを継ぐ者がいる。
「それが私…今では、メリュジーヌを超える魔力の持ち主…
メリュジーヌという仮想の存在の恐れからの力と、
私自身のこの魔術師の力さえあれば…恐れなき完璧な大魔女…メリュジーヌとなれる」
そうさ、本屋ノブ子は、ノエル=フォートであり、本屋ノブ子を装ったメリュジーヌは、
ノエル=フォートだったのさ!
「ロシル…今、あなたの横にいるのは、本当のメリュジーヌではないわ…そいつは、元なんとかさんよ」
「…」
私の隣で、エイピロ…いえ、エドワードの抜け殻は沈黙する。
理解が追いつけないのだろう。
無理もない、けれど
「教えてほしいですね…どうして、メリュジーヌ様は、ノエル=フォートとして、ロシルくんを育て、
そして魔術師としようとしているのか…目的は輪廻でしょうに」
輪廻…そう、それがメリュジーヌ卿の目的だったわね…
なりきるために、輪廻を達成しなくてはいけないとすれば…
そうね…では、
「アウルゲルミルを生み出す…それを目標としましょうか」
アウルゲルミル…そいつは、生命を生み出す兵器。
いや、それ以上のものね。
「アウルゲルミル…原初の生命ですか…」
「そうよ、それなら、私をメリュジーヌを、また恐ろしくなり、
さらに加えて多大なる魔力を手に入れられるわ」
この時、エイピロは思った。
アウルゲルミルを出したノエルを、彼はどう止められるか、と。
エイピロは知っていたが、ひとつも口には出さない。
その結果、結論を。
「そういえば、エイピロ、あなたは”どこで”戻ってきたの?」
「…」
エイピロは少し身を引いた。
危険視と言っても過言ではない。
ノエル=フォートを舐めていた節もある。
「…それをあなたに伝える義理はありません、我々の関係は単に協力関係であって、
主従関係ではありませんから」
エイピロは少なくとも恐ろしく感じていたのだろう。
メリュジーヌを名乗るだけあって…かなりの事を周知している事に。
---そろそろ、本当に動かなければ…アウルゲルミルは手に負えないぞ…
琴葉…早く、目覚めろ---
*。:.゜アケマシテヽ(´∀`)ノオメデトウ゜.:。+゜
僕は元気です。