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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第三章 ミシェール
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第七十二話 左手

「さぁて・・・見つけましたよ?反吸血鬼派リヴェンジャーオブヴァンパイアさん?」


「…俺のことか…?」


「ええ、そうです…ロシル=フォートさん」


俺が反吸血鬼派に参加していて、俺の名前を知っている…?

まさか…


「反吸血鬼派の…密告者…!!!」


そうか…!この緑の装束を纏ったこいつが…密告者…!

こいつが、吸血鬼たちに情報を…!


「密告者の発見、及び確保が俺に任された任務って奴なんでね…ここでお前を捉えさせてもらう」


俺は、構える。

迂闊にグラムは使えない。

俺の情報をどこまで知っているのかわからない…だが

ここで俺の手の内を読まれるよりも、こいつの手の内を読むのが先だ…


「私が、あなたに触れれば、”血を得る”という事に行き着く…それを先読みして、自分との距離を図る…流石ですね、ロシルさん 正解です」


ですが と、口を地味に動かし、一瞬にして俺の横へと移動したようにみえた。

俺は、すぐに距離を取るため、バッグステップの動作を取るが、


「ッ・・・!まさか・・・!!!」


俺の指先を風で切ったのか・・・!!!

そこから吹き出る血を大きく広げた口に入れる。


「しまった…くそっ!来い!グラムッ!」


俺は慌ててグラムを手に出す。

風が俺の手に舞う。

そして、そこには剣の形の風が生まれ、段々と形が作られていき…

やがて、グラムという剣となった。


「私の能力は…これです」


そう言って、左腕を掲げる。

何もない。

風を纏うわけでもなく、火を灯すわけでもなく、光を放つわけでもない。

闇が覆う様子もない・・・。

ただの女の・・・綺麗な腕だ。

・・・だが彼女はこちらへ突撃して来て、


「アイアンアーム!」


「素手・・・!?」


そう、彼女はその綺麗な腕を素手のまま握りこぶしで俺へと攻撃を仕掛けてきたのだ。

俺はそれをグラムで叩こうとする。

が、その素手に触れた瞬間に、まるで鉄にでも当たったかのような硬さが、俺の手に痺れをもたらした。


「ぐぁ…くそっ…なんだ、この腕は…!」


「強化系の能力…私の能力は、左腕を強化する能力よ」


俺は、グラムから手を離そうとするが、痺れで離せない。

そんな中、彼女は俺の懐まで来て、腹部をその左腕で殴った。


「ぐぁ…はっ…」


ガードが追いつかない…!

そして、そのまま回し蹴りをくらって、俺は後ろへ吹き飛ばされた。


(あの左腕…中々にきついな…物理攻撃を仕掛ければ、あの腕で弾かれる…その上、近接格闘は相手の方が明らかに上だ…どうする…どうする俺…)


ふと、俺の脳裏には 敗北 の二文字が上がった。

いや、それ以前に俺だけではどうしもないのだと諦めすら始めていた。

…いつも誰かの助けを求めていた気がした。


「むしゃくしゃしてきた…さっさとこうするべきだったんだ…俺はああああ!」


「なに・・・急に・・・地面揺れて…」


闇に染まる事を…俺は恐れていた。

結局は光が俺を照らしているのを、俺はその手で闇を作って逃げてただけなんだ。

むしろ、その手をどかすのはたやすいのに…俺はそれに怯えてたんだ。


「光は…闇を払う!俺は!光になる!ここに、来い!双子のグラム!」


俺は、両手を空にかざし、俺の手が風を纏うのを見届ける。


「へぇ…ここに来て、新しい武器?けれど、投影武装を増やしても、たかが投影は投影なのよ!」


そう言って、彼女はまた突撃をしてきた。


「無駄だ、俺はお前の攻撃を”間接的に”かわすことができる」


「それはどうかしらね、こんな事もできるわ」


彼女は、その左手を大きく後ろへと回し、そのまま殴るかのように振るう。


「そんな距離からどうするつもりだ!」


俺は、”イールグ”を唱え、そして放つ。

それを彼女はそのまま受けて、後ろへ吹き飛ぶ。

俺はそれに追撃をかけようとするが、そこには先ほどまでになかった大きな手があり


「な、なんだ・・・よ・・・これ・・・」


手はまだ大きさを留めておらず、もっと大きくなっていった。

その手は…俺を包み込み、そして…握り始めた。


「ゴッドハンド…グー!」


まさか…こいつはこの少女の!手!巨大化もできるのか!?

硬化に巨大化…そうして、複数合成すらもできると仮定すれば…こいつの能力は、ヤバい!

吸血目は逃げてればどうにかその能力を弱まるのを待てばいい・・・。

いや、個々の能力値によるのだろうが…


「血を吸った量は極少…それに似合う能力ではないはずだ…!!!!」


ならば、これをフルパワーで押さえれば…!


「時間もないから、これで終わりにする…!」


大きく包み込む左手は段々と縮んでいく。

そして、壁によたれかかっている彼女の元の手になった。


「…やっぱ、血が足りない…か…それじゃあ、一度撤退するわ、今度はもっとおいしい血を頂戴ね」


そう言って、彼女は煙幕を使って、そこをさった。


…難を逃れた…か。


「いや、この場合は…見逃してもらったと考えたほうがいいのか…俺もまだまだ修行が足りない…」


強くならなければならない。

そうでなければ…ノエルを救う事ができない。


俺はそう思った。

たとえ、今までここまでこれていたとしても、それは運がよかっただけなのかもしれない。

だからこそ…今後は運ではなく、実力で圧倒的に勝たなければならない。


「…教えてくれ、クリス…俺は、どうやったら強くなれる?もっともっと強くなりたいんだ…どうすればいいんだ…」


俺はクリスに問ふ。

そして、その答えはこうだった。


「二週間の修行を行うわ、それもとびっきりきついのをね」


こうして、俺は二週間の修行をすることとなった…。

それもとびっきりきついものを。


---二週間後---


「・・・さて、と」


俺はみっちり二週間を費やした。

そして、その二週間の内にある事が起きた。


それが以上の事だ。


フォーミル ニホン国指揮官イヅモ=エンドウによって、主導権を奪われる。

完全なる敗北を期し、国王ラグナ=フォーミルは牢へと閉じ込められ、

世界的に有名な魔術師ノエル=フォーミルは行方不明。

戦力は未知数。

ほぼ、ニホン国の戦力であるが、反ニホン勢力が少数。

"レジスタンス"として、世界を飛び回っている。


ガレー 突如、軍事勢力が飛躍的に落ち始める。

アルフェル=ガレーの指揮によって、"レジスタンス"に勢力の過半数を参加された。

ニホン国の侵略に対しては、対抗手段として、「機甲隊」を使用する。


ミシェール 侵略国家として名を挙げる。

楽園都市、ミシェールという名もある。

吸血鬼ヴァンパイアオブアイズというものが勢力を上げているという噂。


ドルグレ 魔術対抗兵器 ラグールというものが名をあげる。

魔術対抗兵器によって、他の国家から、主にニホン国からの技術譲歩が多い。



「あらあら、張り切っちゃって…これだから男の子ってのは…」


俺たちは、水晶洞窟という場所で修行をしていた。

2週間…クリスは俺に一切の甘さもなく、俺を鍛えてくれた。

お陰様で、成長が実感できるほどになった。


「感謝するよ、クリス…俺はこれで強くなれた、それとこの剣も…」


俺の手には、柄がボロボロになっている刃が片方にしかないものをクリスへ見せる。

俺は修行中に使っていた茶色の布切れと白い服を軽く叩く。


「吸血鬼への反撃の準備だ」


「ちょっと気が早いと思うけどねー…まあ、いいわあなたたち!出撃準備を!」


おおおお!と大きな声があがる。

…俺たちは基地を移動し、島の北西へと移動した。

ここは森林で、詳しく知っておかなくては迷子になりそうなところだ。

そこに基地を建てた。

勿論目印なんてない。

そこにあるのはただの木々だけだ。

そして地下通路への入口もまた封鎖されていて、そこから出たら二度とここへは戻らないようにしている。

逆に2週間ここに篭もりっきりだったのだ。

久しぶりの外の空気…俺たちは自然を満喫していた。



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