第六十八話 反吸血鬼派
「戻ったか、クリス=チャル・・・信じられん事態が起きた・・・!」
俺たちがエレベータから降りたと同時に、クリスに話しかける老年の男…相当焦っているみたいだ。
青いコートに、白い手袋。
背中にコウモリがバッテン印が記されている。
「どうしたの?」
ひと呼吸おいて、老年の男は話始めた。
「ミシェール軍に…ここがバレた・・・!!!」
「え…!?」
バレた・・・?
確かに、この空間は広い。
・・・だが、クリスの部屋から来る以外、この工房に入口はみえない。
まさか
「・・・今、この工房にいる戦闘員は・・・?」
「それが…何者かに襲撃を受けたようで、連絡が取れないんだ!」
と、そこで大きな音が響く。
ドゴォオオン!という音。
それは何かが破壊された音に近かった。
俺たちは、すぐにその音がする場所へと向かった。
「あの音がなったのは・・・たしか、試作品00-9Fがおいてある場所よね・・・?」
「ああ、あの場所には確か、試作プラントが置かれてあったはずだ」
試作プラント・・・?大型機械の試作品って事か・・・?
ということは、まさに心臓部を襲撃されたって事になるぞ!?
「大丈夫なのか!?」
「おい、クリス!こいつは?」
と、走る二人に後ろから質問をした俺を指差し、老年の男は、クリスに尋ねた。
「この人は、ロシル=フォート…フォーミルからのお客さんよ」
「な・・・そうか」
老年の男は、一度は驚きの顔を見せたが、そのあとに納得した表情をして、そう言った。
俺たちは、ようやく煙雲のあがるその場所へとたどり着いた。
「こ…これは…一体…!」
「どう考えても、襲撃よね」
襲撃…か、まるで魔導師が攻めてきたあの時みたいだ。
…重なる。
そこは、既に瓦礫の山と化しており、見るも無残になっていた。
そして、中心には一人の少女がいた。
「あれは・・・ジャスティス=デストラクション!?」
クリスがその名を口にすると、中心にいた少女がこちらをみる。
そして、ニヤリと笑うと
「ミスクリス…そんな所にいたのですね」
緑の装束…?
そして、右肩には、紫のコウモリのワッペンがあった。
そいつは足を軽くトントンと地面で叩くと、その足元にいた倒れた人間を手で掴みあげ、首元にかぶりついた。
「血を…吸っている…のか…!?」
俺は、驚愕していた。
クリスも同様なのかもしれない。
この老年の男もまた同じように驚いているのかもしれない。
ただ、ただそこには…血を吸う異様な姿の少女がいた。
そして、吸い終えたのか、ぺろりと口を左手で拭き、
「さぁて・・・始めましょうか・・・反吸血鬼派の皆さん?」
俺たちへ向かって、走ってきた。
「来い!グラム!」
俺は、へとむかう。
グラムは、俺の右手に握られ、そして黒いオーラを纏っていた。
俺は、グラムを振るい、黒くまとったオーラを放つ。
「四頭黒龍!」
黒文字が、俺の腕を包む。
オーラが段々と形を変えて、龍の顔へと変貌し、それが四つに分裂していく。
「無駄!このジャスティス=デストラクションの前ではね!」
ジャスティスは、手を自分から四頭黒龍の一匹に伸ばす。
そして、他の龍たちは、各々が思うがままにジャスティスを包む。
「これで、終わりだ!」
俺は、グラムを上へとかざし、黒いオーラを伸ばす。
槍の形に段々となっていき、黒死蝶へと変貌を遂げた。
それを、俺は黒龍に包まれたジャスティスに投げつける。
グングニルは、ものすごい速さで進み、そして突き刺さった。
「…やったか…?」
俺は、串刺しにされているジャスティスを見て、そう言った。
が、次の瞬間、黒い物質は、まるで瓦礫のように崩れ、突き刺さったグングニルすらもチリとなった。
「だから、無駄だと言ったでしょ?」
少女はそう言って、いたづらな表情を浮かべた。