第六十五話 屍鬼
「動けば・・・こいつの首をへし折るだけだ、なぁにすごく単純なものだろう?造作もない事だろう?
ああ、ただ動かなければいいだけなのだからな」
まだ力を加えている。
逆にシフォンの力がなくなっていくのも見て取れた。
呼吸ができないのだ。
だとすれば・・・
「シフォン、一度死んでしまうが、構わないか?」
シフォンの顔は歪んだままだが、口を緩ませ
「構うもんか・・・どうせ、ない命だ」
「何をする気?シフォンが一度死んでしまうって・・・」
「ロシル、無駄な動きをすれば次はお前が・・・」
俺は構える。
いや、グラムをではない。
身構えると言ってもいいだろう。
「お前より、俺のが早く動ける…!見せてやるよ、"最速の呪文"をな!」
次元蛇穴や次元琥牢は遅い。
どうしても発動から行動を移すまでに、5秒かかる。
そして、"イールグ"でさえ、例外ではない。
…しかし、それよりも早い。
もっともっと早い呪文がある!
"カルティスオゥネ"・・・!
俺は弓を構えるように右手の人差し指と中指を丸め、
親指でそれを抑え、そして引いていく。
すると、そこから電撃の糸のような物が、蛇のように絡み付いて、そしてビリビリという音を激しくたてて、それは動く。
そして、左手には、黄金の弓が握られ、放った。
「ノエルの…呪文!?お前一体、どこまで・・・」
その放った矢は、電光石火の如く、光の速さで直進した。
そして貫く。
ガリッツを。
シフォン共々。
「ぐっ…ロシル…貴様ああああああああああああああ!」
ガリッツが倒れかける。
そこで俺は手をかざしそしてなぞる
「時間閉鎖!」
時間封鎖は俺が歩んだ時間を戻す。
俺は右足を曲げ、そして思いっきり飛び出す。
3秒・・・3秒前に・・・戻る!!!
「うぉおおおおおおおおお!」
「な、なに!?ロシル・・・!?」
「いつの間に!!!」
てを伸ばし、その先にはグラムが。
そして、シフォンの裾を通って、グラムがガリッツに刺さっていた。
「シフォン!離れろ!」
「ロシル・・・きさ・・・ま・・・!!!」
ガリッツの黒い腕が伸びる。
俺は、グラムを抜き、素早く身を引く
「なっ・・・」
が、俺の身が引くよりも早くガリッツの手が俺の頭を掴む。
俺はグラムで黒い腕を切ろうとするが
「嘘・・・だろ・・・?」
グラムは黒い腕をそのまま通って、まるで何もなかったように当たろうとした反対の方からグラムの刃がでてきた。
「どういう事だよ・・・グラムがあたらな・・・まさか・・・」
シフォンは何かわかったようだ
「ロシル、貴様に一ついい事を教えてやろう…そもそも、俺はお前の言うようにお前の”世界線”には存在しない男だ」
こいつ…”パラレルワールド”を知ってやがるのか…!
「お前にしか理解できん話だ…わかっているのだろう?未来で、俺たちがどういう組織か」
「まさか…ニホン国…!?」
「そうだ」
俺は黒い腕に掴まれながら、思考をこじらせた。
ニホン国…こいつらは…許せない…!!!
「シフォン!シェイノ!頼む…こいつを…倒してく…」
グギィ...
鈍い音が鳴った。
俺の首からか…?
感覚が…ない。
…目が…みえない。
目の前がいつの間にか真っ暗だ・・・
俺は・・・死ぬ・・・のか・・・?