第六話 反逆と混迷 後編
「復讐?まあ、それも悪くはないけれど…もう少し、数を減らせてくれないかしら?あんまり疲れたくないの」
そういい、私は、指を天へと掲げる。
そして、‘ティッチェ‘と唱えた。
すると、指先から、閃光が広範囲を包み、そして影の悪魔を消し去った。
周囲は、チリ一つ残らず、まるで何もないかのようになった。
だが、その中で幾つかの影がノエルを襲う。
「フフ、B級悪魔には、ティッチェは効かないっけ?じゃあ、‘イールグ‘」
目の前に、突如として現れた影に、突風が襲う。
彼らは、影をグニャグニャにされて、吹き飛んだ。
形は、崩れてそして跡形もなく、消えた。
そして、最後に強敵と思われる奴が姿を現した。
「へぇ、ゲーデか」
「異界の地の者を引き取りに来た」
「残念だけど、ここには異界人はいないわよ?」
黒い山高帽と燕尾服を着た男の姿がそこにはあった。
私から見ると、長身で、大よそ180cm程度はあろうか、それぐらいはあった。
彼は、ゲーデ
生と死の間の仲介者なんていわれてる。
そんな彼との面識というと、魔力を大幅に出した時に自分が力尽きそうになり、そこへゲーデが来て、魔力供給をする代わりに、死者を送れと言われている。
無論、ここには今死者はいないから、どうにもならないわけだが。
「そうか、ではまた伺うとしよう、してノエルよ」
「なに?」
「私は、こう…ファッションというものはわからないのだが、その姿は、少しどうかと思うぞ」
「なんのことかーしーらー?」
ちょっと頬を膨らまして、怒る私を見て、ゲーデは言葉を選ぼうと少し焦っている。
フフ、かわいい。
「…ごほん。まあ、私はこれで失礼する。ノエル、手をこちらへ」
「魔力供給ね、わかったわ」
私は、両手をパーにして、目を少し閉じる。
ゲーデは、その上に手を置く。
黒い手袋から熱気が伝わり、私の手を段々とあつくする。
「終わった、ノエル…いいか、あまり無理をするなよ」
「あなたに言われちゃうの?あらら、恥ずかしいわ」
まあ、彼にはわかられちゃうんだろう・・・。
私が、彼と魔術回路でつながっているのだから。
魔術回路は、魔術師の魔力の通路。
それが繋がれるということは、魔力を共有するということ。
私とゲーデは、魔力が送受信できる。
魔力連結という。
ただし、できる人数は3人までと決まっている。
魔術回路は、共有者の命にもかかわる…。
一人が死んだら、ほかも死滅する。
それが、魔力連結の怖い所だ。
魔術師の根本である呪文の受け渡しも、魔力連結で、できる。
私の師匠、エドワード=フォートと私は、魔力連結で、魔術師権限の受け渡しをした。
100の呪文と1の呪文。
それが、魔術師という者が持つものだ。
私は、1の呪文、「加護」が、ある。
1の呪文は、魔術師に問わず、持っている呪文。
そして、100の呪文は、魔術師の証明として、最後に自分が作る呪文。
100の呪文は、魔術師権限の受け渡しをした時、魔術師になる方の1の呪文となる。
「私、ノエル=フォートは、ここに血の契約を…」
「私、ゲーデ・アンデリフェン・デ・ビューカディオスは、ここに冠の契約を果たす」
「すなわち、私はゲーデ・アデュエブリフェッ…いいにくっ!」
「なっ、失礼な!君の名前と同じではないかっ!」
「もう…ゲーデでいいでしょ…?」
「却下だ。」
そんな時、ソイルとノブ子が近づいてきた。
ゲーデは、早くしろと言って、契約を急かせ、その契約は成立した。
私は、このゲーデのフルネームをいつになっても覚えられない気がする…。
とりあえず、フォーミルに会う…必要がありそうね。
「フッ、あれが、新人魔術師君候補…」
「さて、どんな味がするんだろぉなぁ!」
「これ、急かしてはいけないぞ、シフォン」
「お前もよだれふけよぉ、エイピロ」
二人の男が、ノエルの家に住む、ロシルを見て、いや狙っていた。